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ESMO 2022:術前抗PD-1抗体薬により皮膚がんで高い完全奏効率

抗PD1抗体薬単剤療法の奏効率が固形がんの中で最も高いとの報告

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターが主導した多施設共同国際第2相臨床試験で、病期2~4の皮膚扁平上皮がん患者に対して術前に免疫療法を行ったところ、63.3%で腫瘍がほぼ消失したか完全に消失した。試験結果は、本日(9月12日)、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会2022およびNew England Journal of Medicine誌で発表された。

抗PD1抗体薬であるcemiplimab[セミプリマブ](商品名:LIBTAYO[リブタヨ])は忍容性が良好であり、さらに、本試験の主要評価項目を満たし、病理学的完全奏効(pCR)率、すなわち手術時に腫瘍細胞が認められなかった割合は50.6%であった。その他の12.7%では病理学的奏効、すなわち手術時に認められた生存腫瘍細胞が10%未満であった。奏効は独立中央病理判定によって確定した。

「今回の結果で、抗PD1抗体薬単剤を用いた術前補助療法の奏効率が固形がんの中で現時点では最も高いことが示され、進行した切除不能皮膚扁平上皮がんの治療法に関する医療変革が始まるだろう」と述べたのは、試験責任医師で筆頭著者を務める、頭頸部外科部門教授のNeil Gross医師である。また、「長期的な追跡は継続するが、この新しい治療法が生活の質などの転帰にどのような影響を及ぼすかがわかって嬉しい」と話した。

米国では年間約100万人が皮膚扁平上皮がんと診断されており、最も多いがん種のひとつである。皮膚扁平上皮がんは、たいていは皮膚科医かプライマリケア医による治療が容易であり、高度な治療は必要ない。しかし、頭頸部、すなわち日光曝露が多い領域に生じることが多いため、まれに急速に増殖、浸潤した場合には眼や耳、鼻、口に影響が及ぶことがある。

手術による切除や放射線照射を行う現在の標準治療では、美観や重要機能を損なう場合がある。術前補助免疫療法が奏効したことにより、本試験の評価項目ではないものの、一部の症例では低侵襲で、機能を保持する手術が可能となった。

2018年、米国食品医薬品局(FDA)は根治的手術と放射線照射のいずれにも適応外の転移性皮膚扁平上皮がん患者を対象としてセミプリマブを承認した。本薬が初めて検討された設定は手術可能疾患の術前補助としての使用であり、Gross氏が設計・主導し、MDアンダーソンがんセンターで実施した単施設第2相試験であった。試験結果はESMO年次総会2019で発表され、2021年にはClinical Cancer Research誌で公表された。この試験で患者20人から75%の病理学的奏効率が得られたことにより、有効性を確認するために今回の多施設共同国際試験(NCT04154943)を実施した。

今回の単群試験では、米国、オーストラリア、欧州で病期2~4の手術可能な皮膚扁平上皮がん患者79人を登録し、術前療法としてセミプリマブを4回投与した後に根治的手術を行い、任意で術後放射線療法を行った。手術前には画像検査を行ったが、画像判定による奏効(完全奏効率6.3%)ではpCR(50.6%)が過小評価された。画像判定による奏効率は68.4%であり、奏効例の大半は部分奏効に分類された。

62人が4回の投与をすべて受け、70人が手術を受けた。手術を受けなかった9人について、その理由は3人が画像検査により免疫療法が奏効したため、2人は追跡不能/不遵守、2人は進行、2人は有害事象のためであった。

全体で14人(17.7%)にグレード3以上の有害事象が生じた。グレードを問わず最もよくみられた事象は、疲労(30.4%)、発疹(13.9%)、下痢(13.9%)、悪心(13.9%)であった。4人が死亡し、そのうち1人の心不全の悪化は治療との関連があると考えられた。抗PD1抗体を用いた免疫療法に新たな安全性シグナルは生じなかった。

研究チームは今後継続して試験参加者を追跡し、追跡調査完了時には生存データや他の転帰を報告する。研究者らは将来取り組みたいこととして、術前の最適な投与回数に関する未解決の疑問や、放射線照射や手術を安全に回避することができる患者の特定、免疫療法が奏効する可能性が最も高い患者の予測を挙げている。

「実際に大きな差が生じる部分は生活の質だと考えている」とGross氏は言った。「放射線照射を避けられたり軽い手術で済んだりして眼や耳、鼻を残すことができれば、人々にとっては大きな成功だ。それはこの治療法の喜ばしい部分だ。将来の患者の人生をはるかに改善するチャンスなのだ」。

本試験はRegeneron Pharmaceuticals, Inc.社およびSanofi社から資金提供を受けた。Gross氏はRegeneron社および諮問委員会から医療機関としての研究支援を、Sanofi社からコンサルティング料の支払いを受けていることを報告している。共著者一覧および情報開示は抄録を参照のこと。

 

日本語記事監修:中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

翻訳担当者前田愛美

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