ポナチニブ+ブリナツモマブ併用はPh陽性急性リンパ性白血病で高い寛解率を達成

化学療法を含まないレジメンにより新規診断患者で完全寛解率が100%、分子学的寛解率が85%

アブストラクト #7001

ポナチニブ(販売名:アイクルシグ)とブリナツモマブ(販売名:ビーリンサイト)の併用療法が、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(ALL)の新規診断患者または再発・難治性患者に安全であり高い有効性を示すことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が行った試験により明らかになった。本試験によって、全身化学療法や幹細胞移植に伴うリスクなく、一次治療で完全寛解を得るためのレジメンについての裏付けが得られる可能性がある。

新規診断患者にポナチニブとブリナツモマブを併用投与したとき、完全寛解率は100%、分子学的寛解率は85%であった。また、再発・難治性の患者では、完全寛解率は89%、分子学的寛解率は88%であった。

6月4日に開催される2021年米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で、白血病学助教であるNicholas Short医師は、単群で実施した第2相試験の結果を発表する予定である。本試験は、白血病学教授であるElias Jabbour医師が主導して実施した。

「フィラデルフィア染色体陽性ALL患者では、分子学的寛解は優れた予後と関連する」とShort医師は述べた。「本試験では、ポナチニブとブリナツモマブの併用療法により高い分子学的寛解率が得られた。高い分子学的寛解率により、再発率が低下し、無病生存率も上昇すると考えられる」。

フィラデルフィア染色体陽性ALLに対する次世代の治療薬

ALLの標準的な治療法は全身化学療法であるが、全身化学療法には感染症、血球数低下、死亡などのリスクが伴う。また、化学療法による寛解後には、再発リスクを軽減するために通常は幹細胞移植を実施する。

「全身化学療法および幹細胞移植のいずれも重大な副作用を引き起こすことがある」とShort医師は述べた。「ポナチニブとブリナツモマブの併用療法は、特に合併症を有しており一般的に予後不良な高齢患者に対して、治療に関連する合併症リスクを最小にできるため、非常に魅力的な治療法である」。

BCR-ABLはフィラデルフィア染色体陽性ALLの原因となる遺伝子異常である。ポナチニブは、標的型チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であり、白血病細胞のチロシンキナーゼと呼ばれるタンパク質、特にフィラデルフィア染色体陽性ALLの原因となるBCR-ABLの異常タンパク質を阻害し、効果を発揮する。ポナチニブは、再発の主な原因であるT3151変異を克服するよう設計されている点で、従来のTKIよりも優れている。

ブリナツモマブなどのモノクローナル抗体を用いた免疫療法は、全身の免疫系の変化を誘導し、腫瘍細胞の成長と伸展を阻害する。ブリナツモマブには2つの部位があり、1つはT細胞のCD3を標的とし、もう1つはALL細胞のCD19を標的とする。ブリナツモマブは、白血病細胞の表面にあるCD19タンパク質をT細胞が標的とし、CD19タンパク質に結合するよう誘導することにより作用を発揮する。

MDアンダーソンの研究者が主導した以前の試験では、ブリナツモマブおよびポナチニブが白血病患者の全生存率の改善に有効であることが示された。TKIの併用療法に関してはいくつかの試験で検討されているが、ブリナツモマブとポナチニブの併用療法に関する報告は本報告が初めてである。本試験は、これらの強力な薬剤を一次治療として併用投与した場合の安全性および有効性を評価するために実施した。

試験デザインおよび抗腫瘍効果

本報告には、フィラデルフィア染色体陽性ALLまたは急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML-LBC)患者35人のデータが含まれた。本試験では、新規診断患者20人、再発・難治性患者10人、CML-LBC患者5人を評価した。被験者の内訳は、ヒスパニック系51.4%、白人40%、黒人2.9%、アジア系2.9%、その他2.9%であった。

主要評価項目は、新規診断患者の分子学的寛解率および再発・難治性患者の寛解率であった。寛解率は全体で95%であり、内訳は新規診断患者で100%、再発・難治性患者で88%であった。

追跡期間(中央値:12か月間)後、新規診断患者の2年無イベント生存率および2年全生存率は93%と推定された。新規診断患者では、幹細胞移植が行われた患者はおらず、再発例もなかった。再発・難治性患者の2年無イベント生存率は41%、2年全生存率は53%であった。再発・難治性患者4人が同種造血幹細胞移植を受けた。

本治療の忍容性は良好であり、両薬剤の毒性プロファイルは他試験と同程度であった。また併用投与による新たな毒性は認められなかった。本試験は実施中であり、現在も患者の組入れを継続している。

「本治療によって、大部分の患者で寛解が得られたこと、また、新規診断患者で再発が認められた患者または幹細胞移植を必要とした患者がいなかったことは意義ある結果である」とShort医師は述べた。「これらのデータは、一次治療で寛解が得られたフィラデルフィア染色体陽性ALL患者、特に深い分子学的寛解が得られた患者における幹細胞移植の必要性を再評価すべきことを示唆している」と述べた。

本試験は、Nation Cancer Institute (P30CA016672)、Amgen、Takeda の協力を得て実施された。

Short医師は、Takeda Oncology、AstraZeneca、Jazz Pharmaceuticals、NGM Biopharmaceuticalsからコンサルティング費用の提供を受け、Takeda OncologyおよびAstellas Pharma Inc.から研究費の提供を受けた。また、AmgenおよびNovartisから謝礼を受け取ったことを開示している。共著者の全リストとその開示情報はこちらを参照のこと。

翻訳担当者 伊藤友美

監修 吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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