慢性リンパ性白血病患者の生涯を通じてのイブルチニブ服用量を減らせる可能性がある併用療法
試験段階の抗体イアナルマブ(VAY736)をイブルチニブ(販売名:イムブルビカ)に追加投与することで、一部の慢性リンパ性白血病(CLL)患者における連日の治療の中止、および生活の質の向上に期待できることが、Clinical Cancer Research誌(米国がん学会(AACR)の学術誌)に掲載された研究によって示された。
イアナルマブはB細胞活性化因子受容体(BAFR)を標的とし、イブルチニブはブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤(BTKi)と呼ばれる治療薬群に属する。
慢性リンパ性白血病は西半球で最も罹患率が高い成人の白血病であり、米国では約20万人が罹患している。本研究の上席著者であるJohn C. Byrd医学博士(前シンシナティ大学医学部内科部長、現UPMCヒルマンがんセンター所長兼ピッツバーグ大学医学部がん担当副学部長)は、次のように述べた。「ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤は慢性リンパ性白血病治療に革命をもたらしたが、通常、患者は無期限に服用を継続する必要があり、治療は長期的な毒性を引き起こす可能性があります」。さらに、イブルチニブ服用は病気の存在を日々想起させるため多くの患者にとって心理的負担になる、ということも付け加えた。
慢性リンパ性白血病患者にとって長期治療が回避可能となる本治療法については、Byrd医学博士、本研究の筆頭著者でオハイオ州立大学准教授であるKerry A. Rogers医学博士、および他の研究者らが検証した。Byrd医学博士の研究室が実施した前臨床試験において、慢性リンパ性白血病に対するブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤との併用時に優れた活性が示されたことから、イアナルマブが選択された。イアナルマブは、B細胞活性化因子受容体からのシグナルを遮断し、がん化したB細胞の生存と成熟を阻害する。さらに、免疫系のナチュラルキラー細胞ががん化したB細胞を破壊できるよう標識する。Byrd医学博士は、「この抗体が残存病変や耐性クローンさえも除去し、患者に治療終了の機会を提供できるかどうかについて検証しました」と、説明した。
Byrd医学博士らは第1相非盲検多施設共同試験を実施し、イブルチニブで完全寛解に至らなかった、または耐性変異を発現した患者39人を登録した。参加者には標準用量のイブルチニブと、最大8サイクルにわたり2週間ごとにイアナルマブを静脈内投与した。本試験では安全性、忍容性、抗腫瘍活性を評価するとともに、この併用療法がブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤療法の中止を可能とするほど奏効を深められるかどうかも検証した。
Byrd医学博士によれば、併用療法には用量制限毒性は認められなかった。グレード3以上の有害事象は患者の41%に発生し、主に好中球減少であった。全体的な奏効率は約60%、患者の43.6%は血液または骨髄において測定可能残存病変が検出不能(uMRD)となった。
Byrd医学博士は、患者17人がイブルチニブを中止し、12~24カ月間無治療状態を維持できたと指摘した。バイオマーカー解析では、イアナルマブによってNK細胞およびT細胞の活性化を促進することが示され、その作用機序の仮説を支持する結果となった。
患者のうち、13人は血液と骨髄の両方で、4人は骨髄において測定可能残存病変が検出不能となった。Byrd医学博士はこれを「深い奏効」と表現した。Byrd医学博士は次のように述べた。「深い奏効を得た患者は連日の服薬を中止できます。このことは、患者にとってがんの存在を常に意識させる状態から解放されるといった画期的な変化となります」。
「患者が毎日薬を服用するということは、病気の存在を忘れることができないということです。血液がん患者にとって、治療を中止できることは象徴的な価値を持つことなのです」。
本知見は、慢性リンパ性白血病患者にとって重要な意味を持つとByrd医学博士は付け加えた。データからは今回のアプローチによって、生涯にわたるブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤療法に伴う蓄積的な毒性を回避することに役立つ可能性が示された。本試験に参加した患者における感染症の頻度は、単剤ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤療法で従来報告されていたものより低く、イアナルマブ追加が感染リスクを増大させなかったことを示唆している。Byrd医学博士は次のように語っている。「本結果は、寛解達成と継続治療の負担軽減のために、固定期間の併用療法を活用できる可能性を示しています」。
本研究の限界は、サンプルサイズが小さく長期追跡調査が欠如している点である。Byrd医学博士は次のように述べた。「このアプローチがブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤治療期間短縮の標準戦略となり得るかどうかを確認するには、より大規模な試験が必要です」。
本研究は、Novartis Pharmaceuticals Corporationより資金提供を受けた。Byrd医学博士はVincerx Pharma、Eilean Therapeutics、Newave Pharmaceutical、Orange Grove Bioの科学諮問委員会委員長を務める。またAbbVie、AstraZeneca、Kartos Therapeutics、Syndax Pharmaceuticals、Syndax Pharmaceuticalsの諮問委員会委員を歴任し、Vincerx PharmaとEilean Therapeuticsの株式を保有している。
- 監訳 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)
- 記事担当者 平 千鶴
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- 原文掲載日 2025/11/06
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