地中海食は監視療法中の前立腺がんの進行リスクを低下させる可能性

前立腺がんの監視療法(active surveilance)を受けている患者の疾患進行と地中海食の関連を調べた研究がテキサス大学 MD アンダーソンがんセンターの研究者らによって行われた。研究開始時に地中海式食事法の基本原則により近い食生活をしていた限局性前立腺がん患者ほど、病気の過程で良い結果を得たことがわかった。

「前立腺がんの男性は、疾患進行に影響を与え、生活の質を向上させる方法を見つけることに意欲的である」とJustin Gregg医師(泌尿器科助教、1月7日付けのCancer誌に掲載された本研究の筆頭著者)は述べている。「地中海食はからだを傷つけることがなく、健康全般に良く、この研究で示されているように前立腺がんの進行に影響を与える可能性がある」。

年齢、前立腺特異抗原(PSA)、腫瘍体積など、時間の経過とともにがん悪化リスクを高めるとして知られる要因を調整した後の解析によれば、果物、野菜、豆類、穀物、魚をより多く摂る食事をする男性は、積極的治療を検討する段階にまで前立腺がんが増殖または進行するリスクが低下していた。研究者らはまた、糖尿病およびスタチン使用の影響を調べ、これらの患者群で同様のリスク低下を認めた。

本研究では、白人の参加者が最も多かったが、アフリカ系アメリカ人や白人以外の参加者では、地中海食の効果がより顕著であることも明らかになった。アフリカ系アメリカ人男性は前立腺がんの診断率が 50%以上高く、前立腺がんによる死亡と疾患進行のリスクも高いので、これらの調査結果は重要である。

「地中海食は一貫して、がん、心血管疾患、死亡率のリスク低下に関連している。早期前立腺がんの男性を対象とした本研究を通じて、この食事療法の分野に多くの疑問を持つがん患者や家族に対して、最適な結果を得るためのエビデンスに基づいた食事療法を推奨できる段階にまた一歩近付いた」とCarrie Daniel-MacDougall博士(疫学准教授、本研究の統括著者)は述べた。

前立腺がんは、米国男性では皮膚がんに次いで最も一般的ながんである。ほとんどの症例は前立腺に限局した低リスクの疾患であり、予後も良好であるため、多くの男性は即時治療を必要とせず、主治医による監視療法を選択している。前立腺がんに対する治療は、生活の質の変化や排尿機能および性機能の低下を引き起こす可能性があるため、監視療法を受けている男性は、疾患の進行に対して修正可能な因子を見つけることに関心がある。

本研究では、グリーソングレードグループ1または2の限局性前立腺がんで、監視療法プロトコルを実施している410人の男性が対象となった。研究参加者全員が研究開始時に確認用生検を受け、6カ月おきに診察と血清PSAおよびテストステロンの臨床検査による評価を受けた。

試験参加者は82.9%が白人、8.1%が黒人、9%がその他または不明であった。年齢中央値は64歳で、参加者の15%が糖尿病であり、44%がスタチンを使用していた。

参加者は研究開始時に170項目から成る食物頻度質問票に記入し、参加者ごとに9つのエネルギー調整食品群にわたって地中海食スコアが算出された。その後、参加者を地中海食志向の度合によって高度、中度、低度の3つのグループに分けた。

年齢および臨床特性を調整した後、研究者らは、研究開始時の地中海食スコアが高いことと、がんグレードの進行リスクが低いこととの間に有意な関連を認めた。地中海食スコアが1ポイント上昇するごとに、進行のリスクが10%以上低下することが明らかになった。中央値36カ月の追跡調査の後、76人の男性ががんの進行を認めた。

本研究の限界は、対象がMDアンダーソンで監視療法中の主に低リスク疾患の男性であったため、疾患の進行例が少数であったことである。さらに研究を進め、より大規模でより多様な患者群や、より高リスクの前立腺がん男性でも同じ効果がみられるかどうかを確認する必要がある。

「今回の研究結果は、植物性食品や魚を多く含み、一価不飽和脂肪をバランスよく含む食事を一貫して摂ることが、早期前立腺がんと診断された男性にとって有益であることを示唆している」とGregg氏は述べた。さらに同氏は、「これらの結果が、さらなる研究や今後の検証と相まって、患者さんが健康的なライフスタイルを実践する励みとなることを期待している」と付け加えている。

本研究は、国防総省前立腺がん研究プログラム早期キャリア賞(W81XWH-18-1-0193)、MDアンダーソンへの国立がん研究所がんセンター支援補助金(CCSG 5P30 CA016672-37)、テキサス州がん予防研究所からの統合疫学におけるがん予防大学院研修プログラムの研究研修賞(RP160097)によって支援された。全共著者の一覧と開示については、こちらの論文全文を参照のこと。

翻訳担当者 棗田 麻衣子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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