HPVワクチンで子宮頸がんリスクが低下

待望の研究結果で、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは浸潤性子宮頸がんリスクを大幅に低下させることが確認された。

本研究は、New England Journal of Medicine誌(外部リンク)に掲載された。スウェーデンの150万人以上の女児および女性を11年追跡した調査で、30歳までの子宮頸がんリスクは、ワクチンを接種した女性では、ワクチンを接種していない女性と比較して63%低いことがわかった。

これまでの研究では、HPVワクチン接種は、子宮頸部のHPV感染、生殖器疣、および高悪性の前がん細胞の変化を防ぐのに有効であることが確認されていた。しかし、このワクチンは、2000年代に導入されたばかりで、HPVワクチン接種プログラムの最終的な目標である子宮頸がん自体の症例数を減らすことについては今まで明言することができなかった。

キャンサーリサーチUKからの資金提供を受けているロンドン大学クイーン・メアリーのがん予防専門家Jack Cuzick教授は、「これは非常に重要な論文であり、HPVワクチン接種の子宮頸がんリスクへの影響を初めて文書化したもので、HPVワクチン接種はHPV感染や前がん病変に対して有効なだけではなかったということです」とコメントした。

がんを予防するワクチン

HPVは、皮膚や体内細胞に感染するウイルスである。これは非常に一般的な感染であり、ほとんどの人々ではまったく問題を引き起こすことがない。しかし、子宮頸がんのほぼすべての症例は、HPVによって引き起こされる。HPVには何百ものさまざまなタイプがあるが、がんとの関連性が知られているのは約13株だけである。

HPVワクチンのさまざまな形態

HPVワクチンにはさまざまな形態があり、異なるHPV株を防ぐ。

・4価ワクチン(ガーダシル):4種類のHPVを防ぐ。HPV16型および18型は、英国では子宮頸がん患者10人あたり7人の原因となり、HPV6型および11型は、ほとんどの生殖器疣(いぼ)の原因となる。これは、英国では11歳から13歳までの全小児に接種されているワクチンで、本研究で使用されたワクチンである。
・2価ワクチン(サーバリックス):HPV16型および18型を防ぐ。4価ワクチンと同等のがん予防効果がある。
・9価ワクチン:(ガーダシル9):31型、33型、45型、52型および58型を含む9種類のHPVと上記のHPV型を防ぐ。

「HPVワクチン接種はこれまでに、ウイルス感染および前がんの発生を防ぐことが明らかになっています。研究者らは、HPVワクチン接種が子宮頸がんを予防することを確信していましたが、それが直接的に明らかになったのは今回が初めてです」-キャンサーリサーチUKからの資金提供を受けているロンドン大学キングス・カレッジの子宮頸がん検診専門家Peter Sasieni教授

本研究でわかった点

研究者らは、スウェーデンの全国人口統計および保健登録から得たデータを用いて、ワクチン接種を受けた女性と受けていない女性の子宮頸がん発生率の違いを調べた。

167万2,983人の10~30歳の女児および女性を対象に、子宮頸がんと診断されるまで、スウェーデンから移住するまで、死亡するまで、登録簿から抹消されるまで、2価HPVワクチン接種を受けるまで、または31歳になるまでの記録を追跡調査した。

2006年から2017年の間に、52万7,871人の女性が4価HPVワクチンを少なくとも1回接種しており、ワクチン接種を受けたとみなされた。

研究終了時に、4価HPVワクチンを接種していた女性19人と、接種していなかった女性538人が、子宮頸がんと診断されていた。これは、ワクチンを接種した女性の10万人あたりの症例数が47例であったのに対し、ワクチンを接種していない女性の10万人あたりの症例数は94例であったと言い換えられる。本研究は31歳までの女性を対象としているため、この数字は30歳までの女性にのみ適用される。

危険因子を調整後、HPVワクチン接種は子宮頸がん発生率を63%減少させた。

さらに、子宮頸がん発生率は、17歳になる前にワクチンを接種した人々で最も低かった。Sasieni教授は、「17歳未満でワクチン接種を受けた女性の子宮頸がんの劇的な減少は、学校でのHPV予防接種プログラムの有用性を明確に示しています」と付け加えている。

この結果はワクチン接種を受けた人々にとって素晴らしいニュースであるが、このワクチンはすべてのタイプのHPVを予防できるわけではなく、全年齢層がこのワクチンを受ける機会を得られたわけではなかった。

「性交渉を行う年齢になる前にワクチンを接種していなかった女性の子宮頸がん予防には、依然として子宮頸がん検診が鍵を握っています」とSasieni教授は述べた。子宮頸がん検診では、HPVによる初期の細胞変化をがんになる前に発見することができるからである。

また、ワクチンがすべてのHPV株を予防できるわけではないので、ワクチンを接種している女性にとっても、子宮頸がん検診はいまだ重要な意味を持っている。英国では、25歳から64歳までの女性および子宮頸部を有する人々を対象に、定期的な子宮頸がん検診を実施している。

本研究で足りない点

本研究では、ワクチンを接種された時期などの因子を説明する一方で、比較されていないさまざまな因子があった。たとえば、本研究では、子宮頸がんと喫煙状況、性行為、経口避妊具の使用などの環境因子との関係については説明していなかった。

本研究ではまた、人々が子宮頸がん検診を受けたかどうかを見ておらず、検診の有無は、子宮頸がんと診断される症例数に影響を与える可能性がある。子宮頸がん検診は、スウェーデンでは年齢に応じて3年から7年ごとに女性に提供されている。

これらの不足があるにもかかわらず、今回の研究は「HPVワクチンの有効性を確定する上できわめて重要なマイルストーン」と呼ばれている。

「子宮頸がん発生率の低下に大きな影響を与えていることがわかり始めていることは非常に興味深く、これらの結果はきわめて有望です」と、キャンサーリサーチUKの診療情報管理士であるSophia Lowes氏は述べた。「HPVワクチンを接種するかどうかは個人の意思決定ですが、われわれはワクチン接種を提案されたすべての人々がそれを受けることをお勧めします」。

参考文献
Lei, J. et al (2020) HPV vaccination and the risk of invasive cervical cancer. New England Journal of Medicine. DOI:10.1056/NEJMoa1917338

翻訳担当者 会津麻美

監修 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院) 

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原文掲載日 

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