郵送による自己採取HPV検査で子宮頸がん検診率上昇

郵送による自己採取HPV検査で子宮頸がん検診率上昇

MDアンダーソンニュースリリース 2025年6月5日

  • リアルワールド研究により、自己採取検査は、十分な医療サービスを受けられない米国の集団で子宮頸がん検診の受診増加に効果的であることが明らかになった。
  • 自己採取キットを受け取った女性は、電話による検診への督促のみを受けた女性と比較して、検診に参加する可能性が2倍を超えて高かった。
  • これらの結果は、子宮頸がん検診の保健政策に役立つ可能性がある。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の郵送の自己採取検査により、検診を受けたことの無い又は十分に検診を受けていない米国女性の子宮頸がん検診受診率が2倍を超えて上昇したことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らによるこの種では初の試験で明らかになった。

JAMA Internal Medicine誌に本日発表されたリアルワールド、ランダム化PRETIS試験では、自己採取検査と電話による検診の督促(リマインド)を受けた人の41%が子宮頸がん検診を受診したのに対し、電話によるリマインドのみを受けた人ではわずか17%であった。自己採取検査と電話によるリマインドに患者ナビゲーションのサポートを加えると、受診率はさらに47%に増加した。

「特に無保険の女性、地方在住の女性、社会的に疎外された地域や十分な医療サービスを受けていない地域出身の女性など、あまりに多くの女性が子宮頸がん検診を受けていません」と筆頭著者のJane Montealegre博士(行動科学准教授)は述べる。「今回の結果は、自己採取検査が検診へのアクセスを増加させ、ひいては米国における子宮頸がんの負担を軽減するための解決策となり得ることを示しています」。

 2025年5月、米国食品医薬品局(FDA)は、年間13,000人近くの女性が罹患する疾患である子宮頸がんの初の自宅スクリーニング検査を承認した。HPVワクチン接種と院内検診が子宮頸がん罹患率の大幅な減少をもたらした一方で、特に有色人種の女性、地方や低所得州の女性に対して治療成績の格差は続いている。

2020年2月から2023年8月にかけて、PRETIS試験にはヒューストン地域の30〜65歳の女性約2,500人が登録された。大部分(94%)は少数民族/人種的マイノリティ集団の出身であり、56%は公的資金による財政支援プログラムの対象であった。患者は次の3つの検診介入アプローチ、1)診療所での検診のための電話によるリマインド、2)郵送による自己採取検査を伴う電話によるリマインド、3)郵送による自己採取検査と患者ナビゲーションを伴う電話によるリマインドのうちの1つを受けた。検診の受診に関する結果は6カ月後に収集された。

研究者らは自己採取群の80%を超える女性がキットを返送したことも見出し、対象となった患者集団でこのアプローチが好まれ、適合性が改善されたことを示すさらなる証拠となった。

「自己採取検査が米国で利用可能になるにつれ、その導入方法の指針となるデータを収集することが不可欠です。われわれは、医療を受けるのが時間的に最も困難な人々に対して診療所や保健センターで検査が確実に受けられるようにしたいと考えています」とMontealegre氏は言う。「障壁を取り除くことで、エビデンスに基づく検診の受診率を改善し、この予防可能な疾患に対して大きな前進を遂げることができると期待しています」。

研究者にとっての次のステップは、さまざまなプライマリ・ケア環境における自己採取HPV検査の統合方法を検討することである。

この試験の限界には、COVID-19パンデミックによる影響、検診拒否理由の不明確さ及びキットの自宅への郵送に関する障壁などがある。また、この試験では、HPV陽性と判定された場合に患者が必要とするフォローアップ予約の種類の違いについては評価していない。

本試験は、National Institute for Minority Healthおよび米国国立がん研究所を含む米国国立衛生研究所からの助成金(R01MD30175、P30CA016672、P30CA125123、P30CA138313)を受けた。共同研究著者の全リストおよび開示情報はJAMA Internal Medicine誌原文へ

  • 監修 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 記事担当者 坂下美保子
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  • 原文掲載日 2025/06/05

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