ダブラフェニブ+トラメチニブ併用は切除後ステージ3メラノーマの長期生存率を改善

【ロイター】ダブラフェニブ(販売名:タフィンラー)および トラメチニブ(販売名:メキニスト)の併用療法はプラセボと比較して、切除後のステージ3メラノーマ(悪性黒色腫)患者における長期生存率を改善するとの先行知見が、COMBI-AD試験の最新の長期追跡結果で確認された。

New England Journal of Medicine誌に掲載された今回の知見は、腫瘍にBRAF V600EまたはV600K遺伝子変異を有する患者に適用される。本併用治療薬は12カ月間投与された。

この試験結果は「ダブラフェニブ+トラメチニブによる併用治療が、単に再発を遅らせるだけでなく、長期にわたり無再発状態を維持しうる患者の割合を増加させることを示している」と、チューリッヒ大学病院皮膚がんセンター(スイス)のReinhard Dummer博士らは記している。

2017年の解析では、3年無再発生存率が併用治療群では58%、プラセボ錠の投与を受けたボランティア参加者では39%であった(P<0.001)。

そして今回、最短追跡期間59カ月経過後の5年無再発生存率は、併用治療群で52%、プラセボ群で36%であった(ハザード比、0.51;95%信頼区間0.42~0.61)。

この併用治療では36%の患者が重篤な有害事象を発症したのに対して、プラセボ群では10%であった。研究費用は1年間約245,000ドルであったが、グラクソ・スミスクライン社およびノバルティス社が負担した。

研究チームは、25カ国870人の参加者を、手術から回復した後にプラセボを投与する群、ダブラフェニブ150mgを1日2回およびトラメチニブ2mgを1日1回経口投与する群のいずれかに無作為に割り付けて、追跡調査を行ってきた。プラセボまたはダブラフェニブ+トラメチニブ併用開始前に全身性抗がん剤治療または放射線治療を受けたことがある患者はいなかった。

5年経過時点で遠隔転移を伴わずに生存していた患者は、併用治療群では65%であったのに対して、プラセボ投与群では54%であった。

3年経過時点の解析では、併用治療群435人における生存率は86%であったのに対し、プラセボ群432人の生存率は77%(P=0.0006)であったとCOMBI-AD研究チームは以前報告していた。

死亡者のうちメラノーマを死因とする人は併用治療群で90%、プラセボ群で83%であった。

今回の新たな報告では、「全生存期間の最終解析に着手するのに必要なイベント数に到達しなかったため、全生存期間は解析されなかった」としている。

併用治療を受けた患者の40%、およびプラセボ投与を受けた患者の54%が、その後も治療を必要とした。

グレード3または4の副作用は、併用治療群では36%に発症したのに対し、プラセボ群では10%であった。確認された副作用は、高血圧(併用治療群患者の6%)、発熱(5%)、倦怠感(4%)、ALTおよびAST値上昇(各4%)などである。

副作用の大部分は12カ月間の治療期間中にのみ認められ、薬剤併用に関連した「ほぼすべての」副作用は「一過性のものであり、治療の中止または中断後に消失した」と研究者らは述べている。

本試験は、ノバルティス社が2015年3月2日に2薬剤に対する権利を獲得するまでは、グラクソ・スミスクライン社が支援をしていた。この試験はBRAF V600E遺伝子変異を有していた患者が91%を占めていたため、BRAF遺伝子変異の型が転帰に影響を及ぼすのかどうかを判断するには規模が不十分であった。

出典: https://bit.ly/32Gk40F and
http://bit.ly/2wUDHDu The New England Journal of Medicine, online September 2, 2020.

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター 皮膚腫瘍科・皮膚科)

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