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転移性前立腺がんに対するオラパリブーDNA修復機構を標的

乳がん、卵巣がん以外の治療においてPARP阻害剤の有用性を確認

(以下、前立腺がん関連部分のみ抜粋)

第2相TOPARP-B試験

英国がん研究所、Royal Marsden(ともに英国ロンドン)、および現在はVall d’Hebronがん研究所(スペインバルセロナ)所属のJoaquin Mateo氏は、TOPARP試験研究者を代表して、研究者主導型試験の結果を報告した。TOPARP-B試験は、DNA損傷修復能(DDR)変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対するPARP阻害剤オラパリブの第2相ランダム化比較試験である。概して、mCRPC患者の20~25%において、DDR遺伝子の異常は生殖細胞系列あるいは体細胞系列のいずかにみられる。このうち、最もよくみられるDDR遺伝子の変異はBRCA2(10%)である。PARP阻害剤は、BRCA2、BRCA1、PALB2、ATMおよびCDK12を含む多くのDDR遺伝子異常とともに合成致死をおこす。

本試験チームは以前、New England Journal of Medicine誌でTOPARP-A試験の結果を報告しており(Mateo et al. 2015)、そこでは分子レベルで選定していないmCRPC患者を対象としてオラパリブ400 mgを1日2回投与したときの抗腫瘍効果が示された。同チームはASCO 2019年次総会において、推定される病原DDR変異により予め選定したmCRPC患者を対象とした第2相試験TOPARP-B試験の結果を発表した。

1種類以上のタキサン系化学療法後に進行がみられたmCRPC患者に対して腫瘍生検での標的遺伝子のシーケンシング解析を行い、何らかのDDR遺伝子に生殖細胞系列または体細胞系列(単一対立遺伝子または二対立遺伝子)の変異が検出された場合に、本試験の試験対象とした。

「pick-the-winner(投与後の結果が好ましい方を選択)」方式で、奏効率(RR)30%以下の除外を目指し、オラパリブを400 mg1日2回(TOPARP-A試験で用いた用量)投与する群、または300 mg1日2回(卵巣がん、乳がん患者登録第3相試験で用いた用量)投与する群のいずれかに1:1の割合で患者を無作為に割付けた。主要評価項目である奏効率は、4週間後に確定した、RECIST v1.1に基づく放射線画像上での奏効、PSAの50%低下、血中循環腫瘍細胞(CTC)数の低下(CellSearch法:5以上→5未満)のうちすべてあるいは一部として定義付けた。遺伝子変異グループごとの奏効率の解析は事前に計画されていた。副次的評価項目には無増悪生存期間(PFS)および忍容性であった。

計98人の患者(年齢中央値は67.6歳)を割り付けたが、治療を受けて主要評価項目が評価可能であったのは92人であった。このうち70人はRECISTに基づき評価可能であり、89人はPSA50%が評価可能、55人はCTCが評価可能であった。すべての患者はアンドロゲン除去療法中に進行しており、99%はドセタキセル、90%はアビラテロン/エンザルタミド、38%はカバジタキセルの治療歴があった。

全奏効率は400 mg投与群で54%、300 mg投与群で37%であった。

中央値17.6カ月の追跡期間において、全体のPFS中央値(mPFS)は5.4カ月であった。

検出された遺伝子変異ごとのグループ解析で示された奏効率(およびmPFS)は、BRCA1/2で80%(8.1カ月)、PALB2で57%(5.3カ月)、ATMで37%(6.1カ月)、CDK12で25%(2.9カ月)、その他(ATRX、CHEK1、CHEK2、FANCA、FANCF、FANCG、FANCI、FANCM、RAD50、WRN)で20%(2.8カ月)であった。

PSA奏効(50%以上低下)率が最も高かったサブグループはBRCA1/2(73%)、次いでPALB2(67%)であった。

著者は遺伝子異常の種類が重要であると結論付けた。特に、奏効率および放射線画像で確認する無増悪生存期間(rPFS)は遺伝子サブグループ間で異なっていた。BRCA1/2欠損のあるmCRPC患者の奏効率は約80%であり、そのrPFS中央値は、ドセタキセルおよびアビラテロン/エンザルタミドの治療歴のある場合で8カ月以上であった。PALB2変異のあるmCRPC患者の抗腫瘍効果は、BRCA2変異のある患者と同様であった。ATM変異のあるmCRPCでもわずかであるが抗腫瘍効果が認められたが、残りのサブグループよりrPFSが長かった。とはいえ、生物学的背景の意義を解明するにはより多くのデータが必要であった。また、用量も重要であるが、CDK12異常のある患者は群間で均等でなかった。400 mg投与群の複合奏効率は、予め規定したTOPARP-A試験結果を確認するための判定基準を満たしたが、300 mg投与群の奏効率は満たさなかった。400 mgを1日2回投与することで奏効率の増加およびベネフィットの長期化が認められたが、37%の患者で300 mgへの用量減量があった。研究者らは、単一対立遺伝子と二対立遺伝子の比較、生殖細胞系列と体細胞系列の比較、およびサブクローン性の研究を進めていると発表した。

PARP阻害剤治療の登録試験はTOPARP試験に基づき、mCRPCを対象に進行中である。

翻訳瀧井希純

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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