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一次治療にエンザルタミド追加で転移性前立腺がんの生存が改善

ASCOの見解
「エンザルタミドの早期投与により、特に一部の男性患者集団に対して効果が得られることがここで示されています。この治療法は男性の全生存率を上昇させるだけでなく、ステロイド薬や化学療法薬を投与せずとも、男性患者の生存率を上昇させる可能性もあります」とASCO専門家であるNeeraj Agarwal医師は述べた。

国際ランダム化第3相ENZAMET 試験(以下、ENZAMET試験)の中間解析によると、非ステロイド性抗アンドロゲン薬エンザルタミド(イクスタンジ)+標準治療を行った転移性ホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)男性患者の3年生存率は80%である一方、他の非ステロイド性抗アンドロゲン薬+標準治療を行った男性患者の3年生存率は72%であった。ENZAMET試験はオーストラリア・ニュージーランド泌尿生殖器・前立腺(ANZUP)がん臨床試験グループによって行われた。

ENZAMET試験の結果は、第55回米国臨床腫瘍学会(ASCO2019)に受理された5,600件のアブストラクトの中から患者のケアにとって非常に重要な4つの研究取り上げるプレナリーセッションにて発表予定である。

「医師と前立腺がん患者には、エンザルタミドを用いる新規治療選択肢が増えました。特に化学療法に対する忍容性がなく、CT検査などで認められた腫瘍量が少ない男性患者に対して妥当です」とENZAMET試験の研究代表者のひとりであるChristopher Sweeney医学博士(腫瘍内科医、ダナ・ファーバーがん研究所泌尿生殖器腫瘍学ランクセンター、マサチューセッツ州ボストン市)は述べた。

「テストステロン抑制療法を開始した転移性前立腺がん男性患者にとって、エンザルタミドとドセタキセルはいずれも有効で、適切な治療選択肢ですが、副作用、費用、リスク、および効果は異なります」とENZAMET試験の研究代表者のひとりであるIan D. Davis士(モナシュ大学東部衛生臨床学校、オーストラリア連邦メルボルン市)は述べた。

転移性ホルモン感受性前立腺がんの初回治療は、血中男性ホルモン(アンドロゲン)濃度の低下を目的とする、手術による精巣の摘出またはホルモンアナログの注射である。状況に応じて、アビラテロン(非精巣男性ホルモンを減少させる他のホルモン療法薬)やドセタキセル療法などの他の治療法も追加されることがある。がんが増悪し続けると、別のホルモン療法薬と化学療法薬が追加使用されるが、これらの薬剤も生存率を上昇させることができる。

エンザルタミドは、低テストステロンでも増殖する前立腺がんに対するドセタキセルによる治療歴がある男性の生存期間を延長したことを示すデータに基づいて、米国食品医薬品局(FDA)により 2012年に承認された。2014年、エンザルタミドはドセタキセルによる治療歴がない上記の前立腺がんの男性患者に対しても承認された。

ENZAMET試験から、エンザルタミドはビカルタミド、ニルタミド、またはフルタミド(ENZAMET試験で使用された比較用標準非ステロイド性抗アンドロゲン薬)と比較して、効果が高いアンドロゲン受容体拮抗薬であるが、別の副作用を引き起こすことがわかった。

ENZAMET試験について

転移性ホルモン感受性前立腺がん男性患者は2014年3月~2017年3月に、テストステロン抑制薬(例.ゴセレリン、リュープロレリン、またはデガレリクス)皮下注射+エンザルタミド錠160 mg/日併用患者とテストステロン抑制薬皮下注射+3種類の非ステロイド性抗アンドロゲン薬(ビカルタミド、ニルタミド、またはフルタミド)中の1剤併用患者にランダムに割り付けられた。ENZAMET試験登録男性患者1,125人中、503人はドセタキセルの初期投与を受けたが、602人は受けなかった。参加男性患者は中央値で34カ月間追跡調査を受けた。

主な知見

ENZAMET試験での3年生存率は、ドセタキセルの早期投与の有無に関わらず、エンザルタミド併用の転移性ホルモン感受性前立腺がん男性患者では80%、他の3種類中1種類の非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用男性患者では72%であった。全体的には、エンザルタミド併用患者の死亡リスクは、非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用患者と比較して、33%減少した。

  • Sweeney氏らはさらにデータを解析し、この3年間で主なサブグループにおける以下のエンザルタミドの効果を分析した。
    画像評価で腫瘍量が多い男性患者596人中、3年生存率はエンザルタミド併用患者では71%、非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用患者では64%であった。
  • 画像評価で疾病負荷が少ない男性患者529人中、3年生存率はエンザルタミド併用患者では90%、非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用患者では82%であった。
  • エンザルタミド併用患者の生存率の改善は、ドセタキセル非投与男性患者で最も顕著であった。3年生存率は、ドセタキセル非投与エンザルタミド併用患者では83%、ドセタキセル非投与非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用患者では70%であった。
  • 初回のデータ解析時において、エンザルタミド併用群の64%はエンザルタミド治療を継続していた一方で、非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用群では36%が非ステロイド性抗アンドロゲン薬治療を継続していた。重篤な有害事象はエンザルタミド併用患者の42%で、非ステロイド性抗アンドロゲン薬併用患者の34%で発生した。

ドセタキセルによる生存率改善は腫瘍量が少ない男性患者では認められなかったが、エンザルタミドではこうした患者でも生存率の改善が認められるとSweeney氏は指摘した。エンザルタミドは転移性ホルモン感受性前立腺がん男性患者にとっての新規治療選択肢で、現行の標準治療よりも優れている。

次のステップ

ENZAMET試験の結果は他の同種の臨床試験の結果と統合して、男性患者10,000人超を含むデータセットになる予定である。手元にあるこの大規模データセットを使用して、薬剤間の大規模比較を行い、特定の男性患者に最大の利益をもたらす薬剤を決定できることを研究者らは望んでいるとSweeney氏は述べた。

ENZAMET(ANZUP 1304、NCT02446405)試験はオーストラリア・ニュージーランド泌尿生殖器・前立腺がん臨床試験グループが主導する国際共同医師主導臨床試験であり、試験依頼者はシドニー大学で、カナダがん臨床試験グループ、ダナ・ファーバーがん研究所、およびCancer Trials Irelandと共同して行われた(アイルランドと英国の患者を登録)。

アステラス ファーマは薬剤と資金を提供したが、 臨床試験の実施やデータ解析に関与しなかった。オーストラリア・ニュージーランド泌尿生殖器・前立腺グループはCancer Australiaを介してオーストラリア連邦政府からインフラ資金を提供された。

臨床試験の焦点:転移性前立腺がんの生存率上昇における、ドセタキセルの有無を問わない、エンザルタミド対ビカルタミド、ニルタミド、フルタミドの比較

臨床試験の種類:第3相ランダム化臨床試験

参加患者数:1,125人

試験薬剤:エンザルタミド

主な結果:3年生存率はエンザルタミド±ドセタキセル投与転移性ホルモン感受性前立腺がん男性患者で80%、他の非ステロイド性抗アンドロゲン薬±ドセタキセル投与転移性前立腺がん男性患者で72%であった

副次的結果:3年時点での治療継続率は、エンザルタミド服用患者で64%、他の非ステロイド性抗アンドロゲン薬服用患者で36%であった

臨床のまとめ

2019年度がんコミュニケーション委員会に関する開示を参照してください:https://www.asco.org/sites/new-www.asco.org/files/content-files/2019-am-CCC-Disclosures.pdf

米国臨床腫瘍学会本会議への帰属は全範囲で要請されます

アブストラクト全文はこちらを参照してください。

 

翻訳渡邊岳

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

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原文掲載日

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