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ダロルタミドは一部の前立腺がんの転移を遅らせる

  • 2019年4月8日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

大規模臨床試験の結果によれば、開発中の薬剤であるダロルタミドは、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者において、体の他の部位への転移を遅らせるのに役立つ。さらに、この種の前立腺がん患者の治療に使用される類似薬で見られる一部の副作用がなさそうであることが臨床試験の結果で示されている。

最近まで、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者には有効な治療選択肢はなかった。これらの患者の前立腺がんは、体内のアンドロゲンを極めて低い、または検知不能なレベルに保つためのアンドロゲン除去療法(ADT)を受けた後でさえ増殖を続ける。

しかしここ2年で、この種のがん治療のために2つの薬剤が米国食品医薬品局(FDA)に承認されており、この新しい臨床試験の結果をもとに、ダロルタミドが次に続くであろうと研究者は期待している。

ARAMIS試験の中間解析からダロルタミドの治療成績がNew England Journal of Medicine誌に掲載され、2月14日にサンフランシスコで開かれた米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム(ASCO GU)で発表された。

副作用の発生頻度は、ダロルタミド群とプラセボ群は概ね同等であったと、共同研究者であり、サンフランシスコで試験結果を発表したパリ大学グスタフ・ルッシー研究所のKarim Fizazi医学博士が述べた。

Fizazi医学博士は、「この薬剤の安全性プロファイルはとても素晴らしい」と述べ、プラセボと比較してダロルタミドは、発作、転倒、骨折、認知機能の変化、高血圧などの副作用の発生率には影響しないことを言及した。

非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象としたARAMIS試験の結果は、「ダロルタミドの使用を強く支持する」ものであったと、NCIがん研究センターの前立腺がん臨床研究部門長のWilliam Dahut医学博士は述べた。

「中枢神経系の副作用はこの種の他の薬よりも少なくなるであろうと、慎重ながらも楽観的にとらえている」と、臨床試験には参加しなかったDahut医師は付け加えた。

アンドロゲン受容体を阻害する

ダロルタミドはアンドロゲン受容体阻害剤と呼ばれる薬剤に分類される。これらの薬剤は、体内でアンドロゲンとアンドロゲン受容体との結合に競合し、アンドロゲンによる前立腺がん細胞の増殖促進能力を抑制する。

2018年に、FDAは非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者に対してアパルタミド(アーリーダ)、エンザルタミド(イクスタンジ)の両薬剤を承認した。

承認の根拠となった臨床試験では、これらの薬剤は非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者のランダム割り付けから腫瘍転移または患者の死亡までの期間(無転移生存期間)の中央値を延長することが示された。

しかしながら、両薬剤の治療には疲労、転倒、認知機能の変化を含む中枢神経系の副作用が関連していた。

両試験とも、それぞれの薬剤の治療は、プラセボ投与群と比較して無転移生存期間を倍以上に延長した。アパルタミドの試験では40カ月対16カ月、エンザルタミドの試験では36.6カ月対14.7カ月であった。

ARAMIS試験

ARAMIS試験は、バイエル社およびオリオンコーポレーション社(ダロルタミドの共同開発者)が出資しており、前立腺特異抗原(PSA)レベルが過去の臨床試験で転移や死亡の増加リスクと関連した速度で上昇している男性患者を対象とした。

無転移生存期間が臨床試験の主要評価項目であり、副次的評価項目は、全生存期間、患者の痛みが増強するまでの期間であった。

本ランダム化比較試験には、体の他の部位に転移するリスクが高い非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者1,500人以上が参加した。

全ての患者は、アンドロゲン除去療法に加えてダロルタミドまたはプラセボの投与を受けた。

追跡期間の中央値は17.9カ月で、無転移生存期間の中央値はダロルタミドとアンドロゲン除去療法群では40.4カ月であったのに対し、プラセボとアンドロゲン除去療法群では18.4カ月であった。

「転移またはあらゆる原因による死亡のリスクを59%減少させ、低リスク患者のサブグループを含む全てのサブグループにおいて利益は一貫していた」と研究者らは記述した。

中間解析では、ダロルタミド群で78人、プラセボ群で58人が死亡した。3年全生存率はダロルタミド群83%、プラセボ群73%と報告された。この試験で、全生存期間中央値にはまだ到達していない。

患者の痛みが増強するまでの期間の中央値は、プラセボ群よりもダロルタミド群の方が長かった(40.3カ月対25.4カ月)。

独特な化学構造

ダロルタミドはアパルタミドおよびエンザルタミドとは異なる化学構造を持っており、このことがダロルタミドの副作用の発現頻度が低い理由の説明となる可能性があると臨床試験の著者らは考えている。

「ダロルタミドは基本的に血液脳関門を通過しないが、アパルタミドとエンザルタミドは通過する」とFizazi医師は述べたが、ダロルタミドと血液脳関門について知られている知見のほとんどはヒトではなく、げっ歯類を用いた研究結果であると付け加えた。

本臨床試験において確認された中枢神経系に関連する副作用の発現頻度の低さはげっ歯類での研究結果と一致していた。Fizazi医師によれば、中枢神経系に達した薬剤に関連しそうな副作用は、疲労、めまい、認知障害、発作である。

ダロルタミド治療を受けた患者群とプラセボ治療を受けた患者群でこれらの副作用の発現率に検出できる違いはなかったと付け加え、発作の既往がある患者は試験から除外されていなかったことを指摘した。

本試験において、疲労はいずれの患者群でも10%以上に発現した唯一の副作用であった。

副作用の発現率が低いことは特に原疾患による症状のない患者では重要だとFizazi医師は述べた。副作用が原因で本剤またはプラセボの服用を中止した患者の割合は同等で、約9%であった。

今後は、研究者と患者がダロルタミド、エンザルタミド、アパルタミドの患者による選択について、より多く学ぶことが期待される。

例えば、現在進行中の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした二つのアンドロゲン受容体阻害薬(ダロルタミドとエンザルタミド)の比較試験は、患者アンケートに基づき、どちらの薬剤を患者が好むかを検証している。患者は先に一つの薬剤を服用し、その後にもう一方の薬剤を服用する。

一方、バイエル社とオリオン社はダロルタミドの新薬承認申請書をFDAに提出した。

翻訳沼田 理

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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