低リスク前立腺がんに対する監視療法が急増

かつて低リスク前立腺がん男性患者は、即時の手術または放射線療法を受けることがきわめて多かったが、現在は、より慎重な「監視療法」戦略を選んでいる患者が多いことが、米国ダナファーバーがん研究所の研究者らによる新たな連邦政府データベースの分析から明らかになった。

監視療法を利用した患者の割合は、2010~2015年までに低リスク前立腺がん男性患者の14.5%から42.1%に上昇したと、ダナファーバーがん研究所放射線腫瘍学科/ブリガム・アンド・ウィメンズがんセンターのBrandon Mahal医師率いる研究者らが述べた。本研究リーダーであるMahal医師はJAMA誌で同研究を発表した。

上記期間に、前立腺全摘除術を受けた男性の割合は、47.4%から31.3%に低下した。低リスク疾患に対する放射線治療の利用は、38.0%から26.6%に低下した。

「高水準のエビデンスからわかったことは、低リスク前立腺がんの慎重な管理は、非常に良好な予後と関連があることです」とMahal医師は述べた。「低リスク疾患を有する男性の多くは、治療の毒性を免れることできるため、医師と相談することが重要です」。

手術や放射線治療による早急な「根治的治療」よりも慎重な管理を支持する国の指針は、低リスク前立腺がん男性患者を対象に2010年策定された。低リスク疾患とは、生検によるグリーソンスコア6、早期の病理病期、血液中のPSA(前立腺特異抗原)低値と判定された、前立腺に限局する小腫瘍と定義される。

「今回の有望な知見から、適切に選択された男性への監視療法の導入により過剰治療の割合が低下するため、臨床医が低リスク前立腺がんを有する男性に対する現行の推奨やガイドラインをよく遵守していることがわかります」とProstate Cancer Foundationのexecutive vice president兼chief science officerのHoward Soule医師は述べた。

Mahal医師によれば、低リスクのがんを有する男性は前立腺がんによる「死亡率がことのほか低く」、侵襲的治療は必ずしも生存の可能性を向上させない。今回の研究で、Mahal医師、本研究の統括著者でダナファーバー/ブリガム・アンド・ウィメンズがんセンター放射線医であるPaul Nguyen医師をはじめとする研究チームは、患者が経過観察と監視療法のどちらを利用したかを初めて特定した連邦政府データベースを用いた。(経過観察を選んだ患者は、排尿習慣の変化、疼痛、炎症、骨痛など、遠隔転移を伴う増悪を反映している可能性のある症状を報告するよう指示される。監視療法には、6~12カ月ごとのPSA値の定期的な追跡検査、再生検、医師による診察が含まれる。)

本研究はまた、2010~2015年の期間で高リスク前立腺がん治療においても変化があったことを明らかにした。研究者らはその知見にいささか驚いた。この期間に前立腺全摘除術の利用は38%から42.8%に上昇した一方で、放射線治療は60.1%から55%に低下した。

「このように放射線治療から離れて前立腺全摘除術に向かう管理パターンの推移は、最近のどの高水準の研究でも支持されていません」とMahal医師は述べた。「この知見は挑発的であり、議論の焦点となる可能性があります」。

本研究資金の提供については以下のとおりである。Prostate Cancer Foundation-American Society for Radiation Oncology award to Mahal; Prostate Cancer Foundation funding to Nguyen; and support from the Wood Family Foundation, Baker family, Freedman family, Fitz’s Cancer Warriors, David and Cynthia Chapin, Frashure family, and other donors.

翻訳担当者 太田奈津美

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

前立腺がんに関連する記事

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望の画像

進行前立腺がんにカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「転移を有する去勢抵抗性前立腺がんの予後は非常に不良です。アテゾリズマブ(販売名:テセントリク)とカボザンチニブ(販売名:カボメ...
FDAが転移のない前立腺がんにエンザルタミドを追加承認の画像

FDAが転移のない前立腺がんにエンザルタミドを追加承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ前立腺がんの治療選択肢は過去10年間で爆発的に増えた。その流れは留まる気配がなく、最近では米国食品医薬品局(FDA)がエンザルタミド(販売名...
150回達成: ロボット手術HIFUで変わる前立腺がん治療の画像

150回達成: ロボット手術HIFUで変わる前立腺がん治療

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)リスク少なく回復が早い高密度焦点式超音波療法(HIFU)で世界をリードするカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ヘルス...
FDAがBRCA変異転移性去勢抵抗性前立腺がんにニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン併用を承認の画像

FDAがBRCA変異転移性去勢抵抗性前立腺がんにニラパリブ/アビラテロン+プレドニゾン併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年8月11日、米国食品医薬品局(FDA)は、FDAが承認した検査で判定された、病的変異または病的変異疑いのあるBRCA遺伝子変異去勢抵抗性前立腺がん(...