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薬効ないとわかっていても、プラセボ服用でがんに伴う倦怠感が軽減

非盲検、すなわち「隠し立てしない」プラセボから利益を得ることが示す最新研究

治療における心と身体とのつながりの役割を強調

がん関連の倦怠感に対してプラセボを服用した患者は、そのプラセボが不活性で、薬理作用の成分を含まないと事前に言われていても症状が軽減した。この新たな試験1件についてダナ・ファーバーがん研究所の研究者が報告している。

Supportive Care in Cancer誌で発表された本論文は、さまざまな病状を有する患者における非盲検、すなわち「隠し立てしない」プラセボの潜在的利益を示した一連の試験の最新報告である。これらの試験結果は、プラセボの利益がまったくの心理現象であるとする従来の見解に反して、プラセボ効果は精神過程と身体過程との間にある複雑なつながりに根差している可能性があることを示唆する。

「がんに伴う倦怠感は治療でもっとも多い副作用の一つで、治療中または治療終了後のある時点で75%にのぼる患者に影響を及ぼしています。この倦怠感に対する現在の治療法には限界があり、治療法自体が副作用を引き起こす可能性があります。非盲検下でのプラセボは、悪心、疼痛、炎症性腸症候群および片頭痛を有する患者に効果的であることがわかっています。そのようなプラセボの利点は、副作用がなく、非常に少ない費用で利益だけをもたらすことです」と、本試験論文の筆頭著者であるダナファーバー研究所員Eric Zhou氏(医学博士)は語った。

医学研究におけるプラセボ使用は通常、臨床試験の参加者に、彼らが受けている治療内容がわからないようにしておくことを意味している。一般的には、参加者をランダムに治験薬群、またはプラセボ群のいずれかに割り付けるとともに、参加者、研究者のいずれも、試験が終了し結果が分析されるまでどちらが投与されていたか知らされない。治験薬が本当に効果的であるかどうかを判断するために、研究者は治験薬を服用した患者がプラセボを服用した患者よりも好調であるかどうかを検討する。

今回の新たな試験で、がんサバイバー40人をプラセボ群と、何も投与しない対照群とにランダムに割り付けた。その際、プラセボ群の参加者にはプラセボが投与されることを明確に説明した。試験開始後8日目および22日目に、参加者はがん関連の倦怠感のレベルを評価するために作成された質問票に回答した。

「8日目および22日目のいずれにおいても、プラセボ群が、がん関連の倦怠感が著しく軽減したことを報告した一方、対照群の倦怠感はそのまま持続したことが明らかになりました」と、Zhou氏は語った。

また、研究者らは、ドーパミンを分解する身体機構において特定の人格特性または遺伝的変異がプラセボへの反応に影響を及ぼすかどうかを検討し、そのような関連性が遺伝的変異にはあり、人格特性にはないことを見出した。

プラセボ反応と特異的な遺伝的変異との間につながりがあるという発見は、プラセボの効果は「心理的なものとしばしば説明されてきたが、完全にそういうわけではなく、実在の身体的要素があることを示唆しています。疼痛に関する試験から、人体がオピエート(鎮痛薬)の作用と類似した生理学的変化を伴ってプラセボに反応することが分かっています。われわれはプラセボが患者の倦怠感を改善する仕組みをまだ把握していませんが、今回の遺伝的結果は、なんらかの生理学的変化が関与していることを示唆しています」と、本試験論文の統括著者であるダナファーバー研究所員、Christopher Recklitis氏(医学博士、公衆衛生学修士)は語った。

患者は生物学的効果がないとわかっていても、なぜプラセボに対して肯定的に反応することが多いのかは不明である。それは薬を飲み込むという身体的行動に対する後天的な生理学的反応から生じると推測する研究者もいる。「ある人に薬の服用歴があり、その薬による効果があった場合、身体と心はその過程そのものを意味のあることとして学ぶ可能性があります」とRecklitis氏は言う。同氏はそれを、疼痛のためにアスピリンを服用したときに、アスピリンが効き始めるまでに時間がかかることがわかっていても服用から数分で疼痛が軽減したと感じる経験に例える。

本試験の知見は、身体の疾患に対する認識を変える心の能力に関する見解を裏づける。「心と身体とのつながり、および治療におけるその潜在的な役割を過小評価すると患者を救う機会を逃すことになります」と、Recklitis 氏は意見を述べた。

本試験の共著者は次のとおりである。Alexis Michaud、Jamie Blackman(RN、BSN、OCN)、Ann Partridge(MD、MPH、ダナ・ファーバーがん研究所)、 および Kathryn Hall(PhD、 MPH、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院)。

本研究はFoundation for the Science of the Therapeutic Encounterから資金援助を受けた。

翻訳有田香名美

監修太田真弓(精神科・児童精神科/クリニックおおた 院長)

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