ペムブロリズマブは進行肺がんの初回治療に化学療法単独よりも有効

ASCOの見解 
「ペムブロリズマブ単独免疫療法は、以前考えられていたよりもずっと多くの患者に利益をもたらします。この試験は、肺がん免疫療法においてさらに有望な結果を示し、難病として恐れられているこの疾患の治療に新たな勢いをもたらします」と、ASCO専門委員のJohn Heymach医学博士は述べている。

大規模ランダム化第3相試験が示したのは、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)免疫療法が、最も多いタイプの肺がん患者の大部分に対して化学療法(現在の標準治療)よりも有効な初回治療であるということだ。初回治療でペムブロリズマブ免疫療法を受けたPD-L1発現1%以上を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者は、化学療法を受けた患者よりも中央値が4〜8カ月長かった。また、重度の副作用を認めた患者の割合は、ペムブロリズマブ群が化学療法群より少なかった(18% 対 41%)。

著者らによれば、本試験(KEYNOTE-042)はペムブロリズマブ単独療法の最大規模の臨床試験である。この知見は、ASCOのプレナリー(全員参加)セッションで発表される。このセッションでは、2018年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された5,800を超える抄録の中から、患者ケアへの影響の可能性が最も大きいと考えられる4件の研究が取り上げられる。

「多くの肺がん患者には、現在標準化学療法よりも有効性が高く副作用が少ない新しい治療選択肢があります」と、経営学修士(MBA)でフロリダ州のマイアミ医療システム大学(University of Miami Health System)シルベスター総合がんセンター腫瘍内科医でもある筆頭研究著者のGilberto Lopes医師は述べた。「私たちの研究は、ペムブロリズマブが、最も多くみられるタイプの肺がん患者全体の3分の2に対して化学療法よりも多くの利益をもたらすことを示しています」

米国食品医薬品局(FDA)は、過去のより小規模の臨床試験(KEYNOTE-024)の知見に基づいて、NSCLCの約3分の1に相当するPD-L1高発現(50%以上のスコアを有する)NSCLCの初期治療としてペムブロリズマブを承認した。ペムブロリズマブは現在、肺がんの初期治療として承認された唯一の免疫療法である。単独療法および化学療法との併用での使用が承認されている(監修 者注:2018年6月時点、日本では単独のみ)。

PD-L1は、ペムブロリズマブを含む免疫チェックポイント阻害薬に対する奏効を予測するためによく用いられるバイオマーカーである。一般に、PD-L1が増加した腫瘍(高発現)はこれらの治療に対してより良好に奏効するが、いくつかの研究では、PD-L1がほとんどまたはまったく検出されない腫瘍に対してもこれらの免疫療法が有効であった。過去のNSCLCの二次治療の試験では、ペムブロリズマブはPD-L1発現が1%以上の腫瘍の治療において有効であった。

本試験について
研究者らは、局所進行または転移を有するNSCLC患者1,274人を、化学療法群(パクリタキセル+カルボプラチンまたはペメトレキセド+カルボプラチン)またはペムブロリズマブ療法群にランダムに割り付けた。扁平上皮および非扁平上皮がんの両方が含まれていたが、標的療法(EGFRおよびALK阻害薬)で治療可能な遺伝的変化を有するがんは含まれていなかった。

解析では、腫瘍PD-L1発現スコアに基づいて、50%以上群(599人の患者)、20%以上群(818人の患者)、1%以上群(1,274人の患者)の3つの患者群で治療効果を検討した。各PD-L1発現群の患者の同数がペムブロリズマブ療法および化学療法を受けていた。

主な知見

追跡期間中央値は12.8カ月であった。標準化学療法を受けた患者と比較して、ペムブロリズマブ療法を受けた患者は、腫瘍PD-L1発現スコアにかかわらず、全生存期間中央値が長かった。PD-L1発現レベルが高いほど、ペムブロリズマブは大きな利益をもたらした。

• PD-L1  50%以上:ペムブロリズマブ20カ月対化学療法12.2カ月
• PD-L1  20%以上:ペムブロリズマブ17.7カ月対化学療法13カ月
• PD-L1  1%以上:ペムブロリズマブ16.7カ月対化学療法12.1カ月

次の段階

ペムブロリズマブから利益を得る患者群を同定するには、さらなる研究が必要である。現在の分析で用いているPD-L1発現による3つの大雑把な分類では、特定のPD-L1発現レベルを有する患者におけるペムブロリズマブの利益を研究者らが予測することはできない。

その上、2つのアプローチを直接比較する試験がないため、PD-L1発現を有する患者において、ペムブロリズマブ療法と化学療法との併用がペムブロリズマブ単独療法よりも優れているかどうかがまだ明らかになっていない。

また、進行中の試験では、手術後におけるペムブロリズマブの使用(アジュバント)およびNSCLCの初期治療における免疫療法とベバシズマブを含む併用レジメンとの併用を検討している。

本試験ではメルク社から資金提供を受けた。

試験の概要

疾患名 :進行非小細胞肺がん
試験相と種類:第3相、ランダム化試験
患者数:1,274
検討された介入:ペムブロリズマブ対化学療法
主な知見:進行NSCLC患者の大部分において、ペムブロリズマブによる初期治療は、化学療法と比較して生存を延長する。

アブストラクト全文はこちらを参照。

参考資料(英語):

翻訳担当者 会津麻美

監修 久保田馨(呼吸器内科/日本医科大学付属病院がん診療センター)

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原文掲載日 

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