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詳細な生検により、事前に薬剤併用療法に抵抗性を示す遺伝子変異の存在が明らかに

まれな既存の遺伝子変異の発見により治療と生検に対する新たなアプローチが示される

MDアンダーソンがんセンター

メラノーマ(悪性黒色腫)における薬剤への強力な耐性獲得に関わる遺伝子変異は、患者が分子標的薬の併用療法を受けた後になって発生する、というよりもむしろ最初からずっと腫瘍内に存在しており、治療が開始される前から治療が効かないように刷り込まれているのだ、との報告をテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者がCancer Discovery誌オンライン版で発表した。

 

研究者は、治療前と治療中に採取された生検検体を解析し、治療前から存在する遺伝子変異を見つけ出した。また、治療の耐性獲得を標的とする有望な治療を発見した。

トランスレーショナル分子病理学部准教授であるLawrence Kwong博士が率いるこの研究チームは、NRAS遺伝子変異陽性メラノーマの治療に用いられる、MEK阻害剤およびCDK4阻害剤の併用療法に対して抵抗性を獲得する機構を発見する取り組みを開始した。

 

この変異は、PIK3CAと呼ばれる遺伝子における変異であり、当初は治療後に生じる獲得耐性変異と考えられていた。  Kwong博士らのチームは、治療前生検サンプルを再び検討し、この変異はほとんど認められないものの最初から存在しており、腫瘍の片隅に潜んでいる、ということを立証した。

 

PIK3CA変異は、当初ほとんど認められないが、急速に拡大

「この研究は、治療前の腫瘍生検サンプル内の複数の領域を高い解析力を持つ方法で測定し、数年にわたる治療期間を通じ6回の生検を行って抵抗性変異を追跡した研究としては、初めての研究となります」、とKwong博士は述べた。「この変異は、当初ほとんど認められないものの、MEK/CDK4阻害剤が抵抗性を持たない細胞の多くを死滅させるため急速に拡大する、ということが言えます。」

 

この知見は、このような既存の変異が、患者の腫瘍内に以前に考えられていたより10倍の確率で潜んでおり、依然として急激な薬剤耐性を引き起こす可能性があり、この可能性を現行技術で検出することが難しいことについての立証に役立った。これにより、他の患者にもさらにまれな変異が存在するという可能性を高めた。

 

「今のところ、治療後に耐性遺伝子変異を検出した場合、新たな変異としていきなり現れたのか、既存の変異であって、原発腫瘍で検出されていなかったのかが分からないことがしばしばあります」、とKwong博士は述べた。

 

この違いを理解することで、治療をより効果的に、早くすることが出来る可能性があり、そして腫瘍内で孤立しているまれな変異を特定するには生検検体を解析する手法を改善させる必要があるとKwong博士は述べた。

 

NRASはメラノーマの15~20%で発生し、MEK/CDK4併用療法がこれらの腫瘍に対して当初有効である場合が多い。しかし、抵抗性が生じる。

 

初期奏功、次いで速やかな増悪

ステージ3悪性黒色腫女性患者(59歳)の腫瘍内にNRAS変異が認められた。  当該女性患者をMEK阻害剤およびCDK4阻害剤の併用療法に関する臨床試験に組み入れた。  初回部分奏効として腫瘍量が39%減量した後、治療に対する抵抗性が速やかに生じ疾患が進行・転移した。

 

治療後に耐性腫瘍について全エクソーム解析を行ったところ、腫瘍増大を促進することが明らかになっているPIK3CAに対する変異が判明した。  治療開始後わずか16日の時点で当該変異が検出されたため、Kwong博士らのチームは治療前の生検検体を再検討することにした。生検検体の一つの領域から採取された試料を用いた解析では、PI3KCA変異は認められなかった。

 

共著者であるライス大学生体工学部助教のDavid Zhang博士が開発した増幅法を用いて生検検体の7領域を検討したところ、研究チームは3領域においてPIK3CA変異を確認した。この既存の変異は腫瘍内でほとんど認められず、かつ腫瘍内で分散していた。このため、一つの領域での検体採取では検出が困難であった。

 

この知見から、複数領域からサンプル採取をすることで既存の抵抗性細胞が発見できることが示された。このアプローチは現在のところ費用対効果が低いが、技術発展に伴いより実用的になる可能性がある、とKwong博士は述べた。

 

また、このPIK3CA変異は抵抗性が生じた後に血中循環細胞遊離を分離することで検出できる。これにより開発中のリキッドバイオプシーの対象になり得る。

 

S6により共通の標的が得られる

MEK/CDK4併用療法にPIK3CA阻害薬を単に追加すると毒性が高すぎる可能性がある。このため、Kwong博士らのチームは3つの経路のうち1つ以上に存在する可能性のある標的を検出する目的で300種類のタンパク質を分析した。

 

S6と呼ばれるたんぱく質が、唯一、これら3つのがん促進経路全てにおいて認められたことを確認した。S6阻害剤でマウスを治療することにより、マウスがMEK/CDK4併用療法による治療に再び感受性となり、再びMEK阻害剤とCDK4阻害剤の併用でPIK3CA変異を有するメラノーマを縮小出来るようになった。

 

Kwon博士は、マウスにおけるS6阻害剤をヒト向けに最適化した薬剤はまだ開発されていないものの、研究チームの知見からヒト用の薬剤開発のための標的候補が示されている。

 

「がんの薬剤耐性における主な疑問点の1つは、耐性は既存の変異から生じたものなのか、それとも完全に新しい変異なのか、というものです」、と当該研究の筆頭著者でトランスレーショナル分子病理学の博士研究員であるGabriele Romano博士は述べた。  「当該研究は、この困難な課題の解答を得るのに必要となる要因および手段をいくらか特定する一助となりました。」

 

本研究の共著者らは以下の通り:Roger Liang, Mingguang Liu, M.D., Dzifa Duose, Ph.D., Fernando Carapeto, Ph.D., and Alexander Lazar, M.D., Ph.D., of Translational Molecular Pathology; Pei-Ling Chen, M.D., Ph.D., Whijae Roh, Ph.D., Jun Li, Ph.D., Jianhua Zhang, Ph.D., Andrew Futreal, Ph.D., and Jennifer Wargo, M.D., of Genomic Medicine; Jennifer McQuade, M.D., Michael Davies, M.D., Ph.D., and Rodabe Amaria, M.D., of Melanoma Medical Oncology; Merry Chen, M.D., of Neuro-Oncology: Ping Song, Ph.D., of Bioengineering at Rice University; and Jessica Teh, Ph.D., and Andrew Aplin, Ph.D., of Thomas Jefferson University, Philadelphia.

 

本研究は以下より助成を受けた:MDアンダーソンのメラノーマ・ムーン・ショットプログラム™(MDアンダーソンのムーン・ショットプログラム™の一部)、MD Anderson’s Cancer Center Support Grant from the National Cancer Institute (CA-16672)、 the Cancer Prevention and Research Institute of Texas、the Dr. Miriam and Sheldon G Adelson Medical Research Foundation、および米国国立がん研究所の助成金 ((RO1CA203964、 RO1CA182635、および4PO1CA163222-04)、Rising STARS Award 、およびMelanoma Research Alliance Young Investigator Award

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