FDAがCAR-T細胞療法Yescartaを成人大細胞型B細胞リンパ腫に承認

Yescartaは、米国で承認された二つ目の遺伝子治療製品である。

米国食品医薬品局(FDA)は本日、Yescarta(axicabtagene ciloleucel)を、別の治療を少なくとも2つ受けたが奏効しなかった、もしくは治療後に再燃した、特定の型の成人大細胞型B細胞リンパ腫に承認した。Yescartaはキメラ抗原受容体発現T細胞療法薬で、FDAに承認された2番目の遺伝子治療であり、非ホジキンリンパ腫に対しては初の承認である。

「今日は、難病治療の新しい科学的パラダイム全体の発展において画期的な日になりました。わずか数十年の間に、遺伝子治療は、致死性が高いがんや治療がほぼ不可能ながんに対する有望な治療コンセプトから、現実的な解決策になりました」とFDA長官のScott Gottlieb医師は話した。「今回の承認はこの有望な新しい医学領域の勢いが続いていることを示しており、私たちはこれらの製品の開発を支援し、また開発が早急に行われるよう尽力します。間もなく、私たちは細胞ベースの再生医療の発展に対する支援をどのように計画していくかについて、包括的な方針を発表する予定です。この方針において、私たちの迅速プログラムを、CAR-T細胞やその他の遺伝子治療を利用した画期的な製品に、どのように適用するかについても明確にします。これらの新しい科学的基盤を活用した安全で効果的な治療法の効率的な開発を私たちはこれからも支援します」。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、成人において最も頻度の高い型の非ホジキンリンパ腫である。非ホジキンリンパ腫は免疫系の特定の細胞が起源となる血液悪性腫瘍で、進行は早いことも遅いこともある。米国では毎年新たに約72,000例が非ホジキンリンパ腫と診断されており、そのうち約3例に1例はDLBCLである。Yescartaの使用が認められたのは、DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、および濾胞性リンパ腫から転化したDLBCLを含む大細胞型B細胞リンパ腫の成人患者で、少なくとも2種類の他の治療が奏効しなかった症例である。Yescartaは原発性中枢神経系リンパ腫の患者の治療には適用されない。

投与されるYescartaは、患者自身の免疫系を利用してそれぞれカスタマイズされ、リンパ腫と闘う手助けをする。T細胞というある種の白血球を患者から採取し、遺伝子操作によってリンパ腫細胞を狙って死滅させる新たな遺伝子を持たせる。操作した細胞を患者に注入して戻す。

「Yescartaの承認によって、この革新的なCAR-T細胞療法を他の選択肢がほとんどないがん患者の一部にも届けることができます。過去の治療に反応しなかった特定の型のリンパ腫を患う成人の方々です」とFDA生物製剤評価研究センター長のPeter Marks医師は述べている。

Yescartaの安全性と有効性は、100人を超える再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の成人が参加した多施設臨床試験で確立された。Yescartaによる治療後の完全寛解率は51%であった。

Yescartaによる治療は重度の副作用を引き起こす可能性がある。黒枠警告で注意喚起されているのは、サイトカイン放出症候群と神経毒性である。CRSは、CAR-T細胞の活性化と増殖に対する全身応答で、高熱およびインフルエンザ様症状を引き起こす。サイトカイン放出症候群と神経毒性はどちらも致死的または生命を脅かす可能性がある。他の副作用には、重度の感染症、血球数の減少、免疫不全などがある。 Yescarta治療による副作用は最初の1〜2週間で現れるのが普通だが、後になって現れる可能性のある副作用もある。

Yescartaはサイトカイン放出症候群と神経毒性のリスクがあるため、承認には安全な使用を確保するための要件(ETASU)を含むリスク評価・リスク緩和戦略(REMS)が適用されている。FDAはYescartaを投与する病院と関連診療所に特別な認定を受けるよう求めている。認定の一環として、Yescartaの処方、調剤または投与に携わるスタッフは、サイトカイン放出症候群と神経毒性を認識し管理できるよう訓練を受けることが求められる。また、患者には重篤な副作用の可能性と、副作用が現れた場合に治療施設を迅速に受診することの重要性を知らせなければならない。

長期的な安全性のさらなる評価を行うために、FDAは製薬会社に対して、Yescarta治療患者に関する市販後の観察研究を実施することも要求している。

YescartaはFDAより優先審査と画期的治療薬の指定を受けた。また、希少疾患の医薬品開発を支援・促進するためのインセンティブが提供される希少疾病用医薬品の指定も受けた。Yescartaの申請は、複数のセンターの連携によって検討された。FDAのOncology Center of Excellenceが臨床レビューを担当し、生物製剤評価センターがその他のすべてのレビューと最終的な製品の承認決定をおこなった。

FDAはKite Pharma社に対してYescartaを承認した。

翻訳担当者 甲斐久美子

監修 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善の画像

【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験が、無増憎悪生存率と寛解率の有意な改善を示すアブストラクト:LBA-2

イブルチニブ(販売名:イムブルビカ )とベネト...
リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状の画像

リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状

ダナファーバーがん研究所研究概要表題
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の二次治療、キメラ抗原受容体 T 細胞療法:費用対効果の分析出版物Annals o...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...