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CAR-T細胞療法、副作用の対処法ガイドラインを作成

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CAR-T細胞療法、副作用の対処法ガイドラインを作成

MDアンダーソンがんセンター

詳細手順の策定で、有望な治療の毒性から患者を保護

がん治療の新領域を切り開く免疫細胞療法だが致死的となることもある独特な副作用があり、腫瘍医にとって新たな課題となっている。課題への取り組みの一環として、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター臨床医らのチームが、免疫細胞療法剤の毒性に系統的に対処するガイドラインを提案した。

 

本日、Nature Reviews Clinical Oncologyで公表された彼らの報告は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)の2大副作用を対象とする。CAR-T細胞とは、表面上に特定の標的をもつ細胞を攻撃するように遺伝子が組み換えられた白血球である。

 

「CAR-T細胞は、ある種の血液腫瘍患者においてかつてないレベルまで疾患反応を改善し、より広範にわたる使用が期待できます」と、MDアンダーソン幹細胞移植・細胞療法科長代理・教授Elizabeth Shpall医師は話す。

 

「私たちが発表したガイドラインは、細部に渡って慎重に検討し掲載されています。免疫細胞療法は非常に期待される一方で、毒性も強い治療であり、私たちがこの治療を推進するうえでこのガイドラインは医療者が患者の命を救う助けとなるでしょう」と言う。

 

レビューは、数多くの施設で行われたCAR-T療法の広範にわたる研究をまとめたもので、MDアンダーソン、モーフィットがんセンター(タンパ)、マイアミ大学シルベスターがんセンター、メイヨークリニックがんセンター(ミネソタ州ロチェスター)で治療を受けた100人以上の患者を対象とした考察が含まれる。

 

本研究共同著者らが患者に対して行った治療では、白血病およびリンパ腫治療用に製薬会社4社が開発しているCAR-T細胞を用いた。CAR-T細胞は白血球のうちB細胞を攻撃する。CAR-T細胞はCD19タンパク質を標的とする。CD19とは腫瘍性B細胞や正常B細胞の表面に存在するタンパク質である。

 

他のすべての治療が奏効しなかった患者を対象としたCAR-T臨床試験において、奏効割合は50~90%である。

 

本研究主著者のリンパ腫・骨髄腫科教授Sattva Neelapu医師は、次のように話す。「この数字は、画期的な変化を表すものです。初回治療後に再発したB細胞性アグレッシブリンパ腫患者に対して、新規療法は過去30年間承認されておらず、長期生存割合は10%程度に過ぎませんでした。

 

既存の二次療法は、併用化学療法と、可能な場合にはその後に実施する自家幹細胞移植ですが、3~6カ月かかります。一方、CAR-T細胞療法は数週間ですみます。

 

これまで臨床試験で治療してきた患者をさらに長期間にわたり経過観察する必要がありますが、これらが治癒的治療法となる可能性があります。その毒性は独特のものですから、医療チーム全員が、それらを認識し、対処できるように訓練されている必要があります」。

 

サイトカインストーム、脳ストレッサー、安全性

臨床試験で、従来のがん治療ではみられなかった2つの副作用がみられた。

  • サイトカイン放出症候群(CRS、サイトカインストームともいう)は、インフルエンザウイルス感染症に似た症状を引き起こし、致命的となる可能性がある過剰な免疫応答である。
  • 研究者らがCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)と名付けた神経毒性では、致命的な脳浮腫を引き起こすこともある。

 

サイトカイン放出症候群(CRS)とCAR-T細胞関連脳症症候群(CRES)は両方ともに早期に見つかれば治療可能であり、迅速な改善にも早期発見が重要である。今回のレビューでは、治療前の準備、CAR-T注入中および注入後の患者モニタリング、サイトカイン放出症候群およびCAR-T細胞関連脳症症候群発症の覚知とステージング、重症度に応じた副作用の適切な治療に関して、具体的な推奨事項を挙げている。

 

神経毒性評価のための新しい検査法

研究者らは、神経毒性の発症を簡単かつ迅速に抑止する方法も開発した。患者に現在の暦年、暦月、現在地の都市名、病院名、自国の大統領/首相名(計5点)、近くにある物の名前3つ(計3点)、簡単な文章一つの作文、100から10ずつの引き算という10点満点テストである。

 

10点満点であれば、認知機能は正常と判定する。満点でなかった場合は、できなかった点数に応じて、軽度から重度の認知障害と判定する。

 

本レビューの引用例では、B細胞リンパ腫治療を受けたある患者の場合、神経障害の最初の徴候として、文を書く能力の低下がみられたため、迅速な介入が行われ、数時間以内に毒性から回復した。

 

上記の見識に基づいて、共同主著者である神経腫瘍科教授Sudhakar Tummala医師は、神経学的評価法を開発し、CAR-TOX-10と名付けた。従来の一般的方法では、CAR-T細胞療法による神経学的作用を十分には数値化できなかった。

 

彼らは、CAR-T細胞療法について公表された先行研究も利用している。例えば、CAR-T細胞研究のパイオニアであるペンシルバニア大学Carl June医師らは、インターロイキン-6の大量発現がサイトカイン放出症候群の原因であることを突きとめている。彼らは、IL-6阻害薬による小児サイトカイン放出症候群の患者の治療に初めて成功した。

 

本レビューには、サイトカイン放出症候群およびCAR-T細胞関連脳症症候群に対する上記薬剤や他の療法の使用方法と使用時期に関する詳細な指針が記載されている。

 

ムーンショットプログラムのサポート

上述した副作用の正確な原因は、いまだ不明で調査中である。研究者たちは、一部の患者では治療に強い反応を起こす一方で、他の患者では治療に対する耐性や再発を起こす要因の解明にも取り組んでいる。

 

MDアンダーソンCancer ResearchのHoward and Lee Smith Chairを務めるShpall氏は次のように述べる。「私たち全員がいろいろな課題に取り組み、CAR-T細胞療法の管理・活用方法の改善に努めるなか、CAR-TOX手順は患者の安全保持のための基本ルールとなっています。

 

この手順は、CARナチュラルキラー細胞、T細胞レセプター(TCR)を改変したT細胞、抗体を使ってがん細胞上の標的にT細胞を接合させる併用薬剤など、他の細胞ベース免疫療法にも適用可能になる見通しです」。

 

本研究のために結成された多施設・学際的研究チームは、CAR-TOXワーキンググループと呼ばれる。同グループの研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立がん研究所(NCI)からのMDアンダーソンがんセンター支援助成金(P30 CAO16672)、MDアンダーソンの「ムーンショットプログラム」慈善助成金による資金提供を受けた。「ムーンショットプログラム」は、科学的発見に基づく救命医療の迅速な発展を目的としており、その一環である「B細胞リンパ腫ムーンショット」によりNeelapu氏へ資金が提供された。

 

Shpall氏は、「ムーンショットプログラム養子細胞療法プラットフォーム」の共同リーダーである。同プラットフォームは、このような治療法の研究支援を目的として専門知識と技術を提供している。

 

MDアンダーソンおよび他の共同研究者は、CAR-T細胞療法の開発にあたっている製薬会社から臨床試験用資金の提供を受けている。Neelapu氏は、Kite Pharma社とNovartis社の顧問を務めていた。そうした手配はすべて、MDアンダーソンの利益相反方針に基づいて管理されている。

 

Neelapu氏、Shpall氏、Tummala氏以外の共著者は以下のとおりである。Partow Kebriaei, M.D., and Katy Rezvani, M.D., Ph.D., of Stem Cell Transplantation and Cellular Biology; William Wierda, M.D., Nitin Jain, M.B.B.S., and Naval Daver, M.D., of Leukemia; Jason Westin, M.D., and Sherry Adkins, of Lymphoma and Multiple Myeloma; Monica Loghin, M.D., and John de Groot, M.D., of Neuro-Oncology; Cristina Gutierrez, M.D., of Critical Care and Respiratory Care; Frederick Locke, M.D., Moffitt Cancer Center, Tampa, FL; Krishna Komanduri, M.D., of Sylvester Comprehensive Cancer Center, University of Miami, Miami, FL; Yi Lin, M.D., Ph.D., Mayo Clinic, Rochester, Minn; Alison Gulbis, Division of Pharmacy at MD Anderson; Suzanne Davis and Patrick Hwu, M.D., Division of Cancer Medicine, MD Anderson.

 

 

原文掲載日

翻訳山田 登志子

監修佐々木 裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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