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前立腺がんの監視療法

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前立腺がんの監視療法

MDアンダーソン 月刊OncoLog誌2017年8月号

MDアンダーソン OncoLog 2017年7月号(Volume 62 / Issue 7)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

前立腺がんの治療を直ちに開始するよりも監視療法(active surveillance)から利益が得られる患者のタイプが臨床試験によって明らかになるかもしれない。前立腺がんは進行が遅いことが多く、治療により生活の質(QoL)が損なわれることもあるため、多くの早期で低リスクの前立腺がん患者にとって、監視療法が疾患管理の魅力的な選択肢となる。しかし、監視療法の最適な選択基準はまだ確立されていない。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターで進行中の臨床試験によって、病勢進行の予後因子が解明され、監視療法から利益を得られる可能性の高い患者のタイプが明らかになるかもしれない。

 

「過去10年の間に、低リスクの前立腺がんで、手術や放射線療法、その他の治療の代わりに監視療法によって疾患を管理する患者の割合は10%から40%になりました」と泌尿生殖器腫瘍学(Genitourinary Medical Oncology)部門教授のJeri Kim医師はいう。「しかし、監視療法の確立された選択基準はありません」。

 

Kim医師と、泌尿器科(Department of Urology)准教授John Davis医師は、監視療法の選択基準を確立する助けとなるようデザインされた現在進行中の試験の共同主導研究者である。この試験では1,100人を上回る患者の登録が先ごろ完了し、研究者らは予備データの解析を開始した。

 

試験デザイン

この試験は2006年に、最近診断された早期の(臨床的に限局性の)前立腺がんで、監視療法を希望している患者の登録を開始した。患者は全員、ベースラインのPSA(前立腺特異抗原)検査を受け、また2007年以降は経直腸的超音波ガイド下に11カ所の生検を受けた。

 

予後良好リスクの前立腺がんは、PSA値4 ng/mL未満、生検コアの (a)腫瘍長3 mm未満かつグリソンスコア6以下、または (b)腫瘍長2 mm未満かつグリソンスコア7で、優勢なグリソングレードに4(低分化)がないことと定義された。

 

予後良好リスクの患者をグループ1に分類した。予後良好リスクの基準に適合しなかった場合、手術または放射線治療の適応がありながら監視療法を選択した患者はグループ2に、併存症があって手術または放射線治療の適応にならない患者はグループ3に分類した。

 

試験の評価項目は、5年および10年無進行生存率と、質問票を用いて評価したQoLである。病勢進行の指標となるバイオマーカーの研究も同時に進行中である。

 

監視療法のプロトコール

「監視療法に標準的なモニタリングスケジュールはありません。世界各国で行われている監視療法の臨床試験は、それぞれスケジュールが異なり、監視のための検査さえ異なっています」とKim医師はいう。この試験の検査とモニタリングのスケジュールは、MDアンダーソンで標準的に行われている監視療法を基礎としている。

 

この試験では、患者に6カ月ごとに直腸診とPSA検査のための採血を行い、同時にQoLに関する質問票に答えてもらう。経直腸的超音波ガイド下の11カ所生検を1年目の終わりと、その後は疾患特性に応じて1~2年ごとに実施する。

 

試験に参加する患者は、この監視スケジュールを病勢進行または「再分類」が生じるまで続ける。再分類の兆候は、PSA値の30%上昇または病勢進行を示す生検所見(グリソンスコアの上昇、陽性検体での腫瘍長や腫瘍量の増大、陽性本数の増加など)である。患者の疾患を再分類する場合、患者に手術または放射線治療を提案する。

 

予備的な知見

リスク再分類の予測因子

予後良好なリスクプロファイルをもつ患者について、リスク再分類に関わる因子を評価するために、Kim医師とDavis医師の研究グループは、グループ1の患者191人を対象に転帰の予備解析を実施した。追跡期間中央値3年の時点で、191人中159人(83%)は病勢安定であったが、32人(17%)は再分類された。32人全員が生検結果に基づく再分類であった。ベースライン特性の多変量解析によって、生検コアの腫瘍長1 mm以上は有意な予測因子であり(P = 0.007)、高年齢は境界的な予測因子(P = 0.05)であるが、PSA値は再分類の予測因子ではないことが明らかになった。

 

その後、グループ1の246人とグループ2の562人の、計808人の転帰を解析した。この試験の結果はまだ発表されていないが、Kim医師によると、登録時とグループ2への割り付け時に行う診断的または検証的な生検において、コア内の腫瘍長1 mm以上は再分類の予測因子となることが多変量解析によって示された。以前の解析と同様に、PSA値は再分類の予測因子ではなかった。登録時の生検で腫瘍長3 mm以上かつグリソンスコア6または7の陽性コアが複数あった患者は、予後良好リスク群患者と比較して、5年間の監視期間中に疾患を再分類する可能性が2倍であった。

 

この2つの予備解析から得られた結果が、5年生存および10年生存データを含めた解析で検証されれば、再分類の予測因子のない患者にはより厳格でなく、より低侵襲のモニタリングが可能かもしれない。「予備解析のデータは、ある種の腫瘍特性をもつ患者では生検の頻度を下げられることを示唆しています」とKim医師はいう。安全性を確保しながら、どのようにして侵襲的な手技を減らすかなど、多くのことをこの試験から学んでいます」。

 

生活の質(QoL)

試験のもう1つの目標は、前立腺がんに対する監視療法を行う患者のQoLの変化を記録することである。Kim医師とDavis医師の研究グループは、グループ1の患者180人が2年半の間に回答したQoL質問票のスコアを解析した。この質問票は、不安や病状の不確実性とともに、疾患特有のQoLと一般的なQoLについて評価するものであった。

 

疾患特有のQoLと一般的なQoLの全体的な平均スコアには変化がなかったが、性機能に関するスコアのみ低下していた。Kim医師は、この低下が統計学的に有意であるが、臨床的に重大ではないことに注目した。不安や病状の不確実性のスコアは時間の経過とともに改善していた。「これらの結果から、監視療法中に患者のQoLが概ね維持されていることが示唆されます。しかし、より長期のフォローアップのデータが必要です」とKim医師は述べている。

 

Kim医師とDavis医師は、異なる前立腺がん治療を受ける患者と監視療法を受ける患者のQoLを比較するもう1つの研究を計画している。

 

バイオマーカー研究

グループ1とグループ2の患者542人の血液試料でバイオマーカーの分析を行ったところ、ベースライン時のカベオリン1の高値は、監視療法中の再分類に関連していた。カベオリン1は細胞膜やカベオラを構成する成分であり、前立腺がん細胞から分泌される。Kim医師とDavis医師の研究グループが2016年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で報告したこの知見が検証されれば、監視療法に適した患者を選択する目的で、ベースラインの臨床的および病理学的パラメータとを組み合わせて、カベオリン1濃度を使用できるかもしれない。

 

将来の診断および監視ツール

この試験の予備解析から、候補となった予後因子や再分類バイオマーカーは、妥当性を検証して臨床に応用されるまでにまだ数年を要するが、監視療法を行う患者の選択に既存の技術が利用できるかもしれない。例えば、機能的MRIと解剖学的T1強調およびT2強調MRI画像を組み合わせるマルチパラメトリックMRIに加えて、MRIおよび超音波融合画像に基づく前立腺針生検法を使用すると、臨床的に重要な前立腺がんの検出率が向上するとKim医師はいう。

 

同医師によると、現在市販されている遺伝子検査によって患者の疾患の活動性や10年間の死亡リスクの情報が得られ、また、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のリスク層別化と組み合わせると、前立腺切除術から好ましい病理学的結果が得られる可能性が推測できるという。このような手法は、いずれ前立腺がんの標準的なリスク評価ツールになる可能性がある。

 

「新たな技術のおかげで、積極的治療が必要な患者を除外するための最初のリスク層別化が改善されるでしょう」とKim医師は述べた。「しかし、現在の技術でも、監視療法を受けている患者はほとんどの場合うまくいっています。低リスクの前立腺がんの患者は、疾患管理の選択肢として監視療法を検討すべきです」。

 

【写真キャプション】

前立腺前部の大きな腫瘍(矢印)をT2強調画像(左)、拡散強調画像(中央)、ダイナミック造影画像(右)を組み合わせたマルチパラメトリックMRI画像で示す。これらの画像は、監視療法と即時の治療開始のどちらが適切か判断する補助として超音波ガイド下生検とともに使用できる。(画像はJeri Kim医師提供)。

 

【図キャプション】

超音波ガイド下11カ所前立腺コア生検では、図に示した各部位から1または2カ所の生検を実施する。

略語:LB(左底部)、LM(左中部)、LA(左尖部)、LAH(左外側部)、RB(右底部)、RM(右中部)、RA(右尖部)、RAH(右外側部)、ML(正中)、×2(2カ所)

 

For more information, contact Dr. Jeri Kim at 713-563-7237 or jekim@mdanderson.org.

FURTHER READING

Parker PA, Davis JW, Latini DM, et al. Relationship between illness uncertainty, anxiety, fear of progression and quality of life in men with favourable-risk prostate cancer undergoing active surveillance. BJU Int. 2016;117:469–477.

Davis JW, Ward JF III, Pettaway CA, et al. Disease reclassification risk
 with stringent criteria and frequent monitoring in men with favourable-risk prostate cancer undergoing active surveillance. BJU Int. 2016;118:68–76.

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳佐復 純子

監修 榎本 裕 (泌尿器科/三井記念病院)

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