パルボシクリブがより広い適用性を有する可能性 | 海外がん医療情報リファレンス

パルボシクリブがより広い適用性を有する可能性

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

パルボシクリブがより広い適用性を有する可能性

ダナファーバーがん研究所

がん細胞の増殖を阻害する能力について注目されている薬剤は、特定のタンパク質を高く発現するがんを死滅させる能力という第2の側面を有する可能性があることをダナファーバーがん研究所の研究者らが発見した。

 

新たな研究では、研究者らは、薬剤パルボシクリブがどのようにしてがんの細胞分裂を妨げるかだけでなく、D3-CDK6と呼ばれるタンパク質複合体を多量に含む腫瘍における、がん細胞を死滅させる代謝変化のメカニズムについても説明している。本日Nature誌の電子版に掲載された知見では、D3-CDK6を高く発現する腫瘍を有する患者でパルボシクリブが特異的に有効であることを示唆している。

 

著者らは、実験系細胞株およびヒト腫瘍が移植されたマウスモデルで行われた研究を、さらなるがん種および組織サンプルを含めて拡大する必要があるが、結果が同様に陽性であれば、パルボシクリブおよび類似の薬剤の可能性が開かれ始めたことを意味するだろう。

 

「パルボシクリブは、多くのがん種で上昇がみられる酵素CDK4およびCDK6を阻害する3つの薬剤のうちの1つです」と研究の統括著者であるダナファーバーのPeter Sicinski医学博士は述べている。「それらは臨床試験で有望な結果を示したが限界があります。CDK4およびCDK6は細胞分裂の過程を促進します。つまり、それらを阻害することは、腫瘍細胞分裂を抑制することはあっても、がんを排除するものではないので、患者はこれらの薬を一生服用する必要があるかもしれないのです」。

 

以前の研究では、ダナファーバーなどの研究者らは、ある種のタイプのがん、T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)では、パルボシクリブに2つの作用があることを見出した。すなわち、腫瘍細胞の分裂を停止させ、プログラム化された細胞死の過程であるアポトーシスを引き起こすという作用である。Sicinskiらのチームは、この違いの原因を探っている。

 

一連の実験で、Sicinski研究室のHaizhen Wang博士は、T-ALLにおいて、CDK6とD3と呼ばれる“サイクリン”タンパク質で構成される複合体が、細胞の代謝(細胞が生き続ける化学過程)を助けることを発見した。彼女が発見したD3-CDK6複合体は、細胞がアポトーシスに入るのを防ぐ物質の産生を制御する。パルボシクリブでD3-CDK6を阻害すると、T-ALL細胞はその保護が奪われ、細胞は死滅する。

 

「例えば、乳がん細胞では、パルボシクリブはD1-CDK4と呼ばれる異なる複合体を阻害します」とSicinskiは指摘する。「これは細胞分裂を止めますが、死滅させることはありません」。

 

その後、Wang氏は1,000以上の腫瘍細胞株のライブラリーを分析し、D3-CDK6の最高値および最低値の細胞株を同定した。彼女が後者(最低値)群をパルボシクリブで処置したとき、腫瘍細胞の細胞周期は停止したが、死滅しなかった。対照的に、高D3-CDK6値を有する細胞は死滅した。

 

D3-CDK6の量が多いがんの割合は分かっていないが、Wang氏はがんの5〜15%であると推定しており、幅広い種類のがんを網羅している。

 

彼女は、CDK4とCDK6の別の阻害剤であるリボシクリブを開発したノバルティス生物医学研究所と共同してさらに研究を進め、ヒト腫瘍組織が移植されたマウスにおいて薬剤の有効性を研究した。腫瘍細胞株を用いた実験と同様、D3-CDK6を高発現するヒト腫瘍は、マウスにリボシクリブを投与することによりほぼ消失した。

 

「われわれの結果がさらなる研究によって検証されれば、患者の腫瘍におけるD3-CDK6の発現レベルを検査することにより、パルボシクリブまたは他のCDK4またはCDK6阻害剤による治療の利益を受ける可能性が最も高い患者を決定できる公算が高まります」とSicinski氏は語る。

 

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH) (grants R01 CA083688, R01 CA202634, P01 CA080111, R01 CA163698, F32 CA165856, P50 CA090381-14, and post-doc training grant T32CA009361); a James and Shirley Curvey MGH Research Scholarship; and a Mobilność Plus fellowship.により支援を受けた。

原文掲載日

翻訳橋本奈美

監修吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学) 、

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1診療時の腫瘍マーカー検査は不要な可能性
  2. 2ペムブロリズマブが治療歴ある進行再発胃がんに有望
  3. 3リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  4. 4非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  5. 5BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  6. 6DNAシーケンシング試験により希少がんに既存薬の適用...
  7. 7若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  8. 8EGFR陽性非小細胞肺がん一次治療にオシメルチニブが...
  9. 9FDAがベバシズマブ-awwbをバイオシミラーとして...
  10. 10コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他