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オラパリブがBRCA変異陽性の転移乳がんの増殖を遅延

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オラパリブがBRCA変異陽性の転移乳がんの増殖を遅延

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

PARP阻害剤が、乳がん治療において重要な役割を担う可能性を示唆

 

ASCOの見解

「待望された本研究結果は、この新たな治療法がBRCA遺伝子変異陽性乳がん女性の治療成績を向上させる可能性があることを示しています」「注目すべきことは、われわれは今や、がん細胞内の遺伝子変異のみならず、病勢進行を促す遺伝的要因に合わせた乳がん治療を行うことができるということです」と、米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)会長であり米国内科学会名誉上級会員(Fellow of American College of Physicians:FACP)および米国臨床腫瘍学会上級会員(Fellow of the American Society of Clinical Oncology:FASCO)であるDaniel F. Hayes医師は述べた。

 

女性約300人を対象とした第3相臨床試験の結果により、PARP阻害剤が乳がんの新たな治療法として導入される可能性がある。経口分子標的薬オラパリブ(Lynparza)は、標準的な化学療法よりもBRCA遺伝子変異性進行乳がんの病勢進行リスクを42%減少させ、進行までの期間を約3カ月遅らせた。

 

本データはASCOの総会で発表されることとなっており、2017年ASCO年次集会の5,000本以上のアブストラクトの中から患者ケアに最も大きな影響を及ぼすと思われる注目すべき4演題の一つである。

 

「本結果は、BRCA遺伝子変異性乳がん女性において、標準治療よりもPARP阻害剤の治療成績が上回ることを初めて示したものです」と筆頭研究著者であるMark E. Robson医師(ニューヨークにあるスローンケタリング記念がんセンターの腫瘍内科医であり臨床遺伝性部門部長)は述べた。「オラパリブが遺伝性の生殖細胞系BRCA遺伝子変異陽性の女性に生じるトリプルネガティブ乳がんに対し有効だとわかったことが特に励みとなります。このタイプの乳がんはとりわけ治療が困難で、しばしば若い女性に影響を与えます」。

 

全ての乳がんのうち最大3%が、BRCA1およびBRCA2遺伝子に遺伝性変異がみられる人で起こる。この遺伝子変異により、細胞がDNAの損傷を修復する能力が低下する。オラパリブは、BRCA以外に細胞のDNA修復機序で重要な役割を持つPARP1とPARP2を遮断する。BRCA遺伝子変異陽性のがん細胞は、そもそも根本的にDNA修復能力に欠陥があるため、PARPを標的とする治療に対して特に脆弱である。オラパリブは、BRCA遺伝子変異性卵巣がんの女性への使用に対しすでにFDAの承認を受けている。

 

「本研究は、特定のDNA損傷修復経路に欠陥がみられる乳がんは、その欠陥を標的にするようデザインされた分子標的療法に感受性が高いという原理を証明しました」とRobson博士は述べた。

 

研究について

本研究には、遺伝性BRCA変異陽性かつホルモン受容体陽性、あるいはトリプルネガティブ(エストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性およびHER2陰性)の転移性乳がん患者が登録された。HER2陽性乳がん女性は、すでに非常に効果的な分子標的療法が存在するため本研究には含まれなかった。すべての患者が転移性乳がんに対する最大2回までの化学療法を受けており、ホルモン受容体陽性がん患者はホルモン療法を受けていた。

 

研究者らは、患者302人をオラパリブ錠投与群あるいは標準化学療法群(カペシタビン、ビノレルビンまたはエリブリンのいずれか)に無作為に割り付け、がんが増悪あるいは重篤な副作用が発現するまで治療を行った。

 

主な知見

腫瘍縮小がみられたのは、化学療法投与群で29%だったのに対し、オラパリブ投与群では約60%だった。追跡期間中央値約14カ月の時点で、化学療法群と比べ、オラパリブ投与群では病勢進行のリスクが42%低かった。病勢進行までの期間の中央値は、オラパリブ群で7カ月、化学療法群で4.2カ月であった。

 

がんの進行後、研究者は病勢が再び増悪するまでどれほど時間を要するかを調べるため患者の追跡調査を続けた。オラパリブ投与群では病勢が再び進行するまでの時間も延長され、一旦オラパリブが作用しなくなってもがんの悪性度はぶり返さないことが示された。現時点では、オラパリブによる有益性が全生存期間の延長に結び付くと判断するには本試験は時期尚早である。

 

オラパリブ投与群で最も頻度の高い副作用は悪心や貧血であったのに対し、化学療法群では白血球数減少、貧血、倦怠感、手足の発疹の頻度が最も高かった。重篤な副作用は、オラパリブ投与群では頻度が低く、化学療法群での発生率が50%だったのに対しオラパリブ群では37%だった。副作用によりオラパリブ投与の中止が必要となった患者はわずか5%だった。 健康面に関する生活の質はオラパリブ群の方が有意に良好であった。

 

「おそらく、オラパリブは転移性乳がん治療の早期で最もよく使用されるようになるでしょう。患者の生活の質を維持し、点滴による化学療法が必要となることを遅らせ、脱毛や白血球減少といった副作用の回避に役立ちます」とRobson医師は述べた。

 

次の段階

研究の規模が比較的小さいことから、オラパリブがどのような患者集団に対し最も有益性が高いか判断するのは難しい。

 

乳がんにおけるPARP阻害剤について現在進行中の第III相臨床試験4件のうち、結果が発表されたのは本試験が初となる。
今回の試験では含まれなかった標準療法である白金製剤をベースとする化学療法によって増悪した患者でオラパリブがどのように効果を示すかオラパリブ投与後に増悪した際に白金製剤をベースとする化学療法が有益かを判定するためには、さらなる調査が必要である。

 

この研究はAstraZenecaにより資金提供を受けた。

 

全要約はこちらを参照

 

読者の方々へ
•化学療法への理解
•分子標的療法への理解
•乳がんへのガイド

 

 

原文掲載日

翻訳佐々木 亜衣子

監修田原 梨絵 (乳腺科、乳腺腫瘍内科)

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