イブルチニブが辺縁帯リンパ腫治療薬としてFDA承認

イブルチニブは、全身療法を必要としCD20抗体療法の治療歴を有する患者に適応とされる。

2017年1月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法を必要とし、1回以上のCD20抗体療法の治療歴を有する辺縁帯リンパ腫(MZL)患者の治療に、イブルチニブ(IMBRUVICA)を承認した。辺縁帯リンパ腫についての承認は全奏効率(ORR)を基づく。辺縁帯リンパ腫に対してイブルチニブの承認が継続されるかは、検証的試験での確認と臨床的有益性の内容にかかっている。イブルチニブは、Janssen Biotech, Inc.社と、AbbVie社のPharmacyclics LLC社が共同で開発、商品化している。

辺縁帯リンパ腫は、リンパ節や胃、唾液腺、甲状腺、眼、肺および脾臓など様々な組織の辺縁部に存在するリンパ球に発生する緩徐進行型B細胞性リンパ腫である。辺縁帯リンパ腫は、成人における非ホジキンリンパ腫の全症例のうちおよそ12%を占めている。診断の年齢中央値は65歳である。イブルチニブの承認以前は、辺縁帯リンパ腫に特化したFDA承認の治療薬は存在しなかった。

今回の承認は、1回以上の治療歴を有する辺縁帯リンパ腫患者63 人に対する、イブルチニブの安全性と有効性を評価する多施設非盲検単一群第2相PCYC-1121試験の結果に基づいており、辺縁帯リンパ腫には、粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫、(MALT; n = 32)、節性辺縁帯リンパ腫(NMZL; n = 17)、および脾辺縁帯リンパ腫(SMZL; n = 14)の全3分類が含まれる。

治療効果の評価は、独立審査委員会が国際ワーキンググループの悪性リンパ腫基準から採用した基準によって同委員会により評価され、完全奏効(CR)を達成した患者が3.2%、部分奏効(PR)を達成した患者が42.9%であり、全奏効率は46%(95% CI: 33.4-59.1)であった。有効性は、3つの辺縁帯リンパ腫分類すべてにおいて観察された(全奏効率は粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫で46.9%、節性辺縁帯リンパ腫で41.2%、脾辺縁帯リンパ腫での50.0%)。奏効期間中央値(DOR)には達しておらず(range, 16.7-NR)、追跡期間中央値は19.4カ月であった。初期反応までの期間の中央値は4.5カ月(range, 2.3-16.4)であった。これらのデータは、2016年12月に第58回米国血液学会(ASH)会議で発表された。

イブルチニブに関する警告および注意には、出血、感染症、血球減少症、心房細動、高血圧症、二次性悪性腫瘍、腫瘍崩壊症候群および胚・胎児毒性が挙げられる。すべてのグレードを含めて多く認められた(>20%)有害事象には、血小板減少症(49%)、倦怠感(44%)、貧血(43%)、下痢(43%)、あざ(41%)、筋骨格痛(40%)、出血(30%)、発疹(29%)、悪心(25%)、末梢浮腫および関節痛(各24%)、好中球減少(22%)、咳(22%)、呼吸困難(21%)および上気道感染症(21%)が挙げられた。グレード3または4の有害事象で多く(>10%)認められたものは、ヘモグロビンの減少(13%)と好中球減少(13%)、肺炎(10%)であった。

この承認によって、イブルチニブへの適応症は再発性/難治性辺縁帯リンパ腫を含むようになる。これは、米国においてイブルチニブの5番目の適応症ということになる。

Janssen社とPharmacyclics社は、複数の疾患領域における第3相試験をはじめ、イブルチニブに関する広範な臨床開発プログラムを継続している。

イブルチニブは、FDAの画期的治療薬指定を受けた後に米国で承認された最初の治療薬の1つであった。イブルチニブは、ブルトン型チロシンキナーゼを標的とし阻害する。

翻訳担当者 田辺奈子

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

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