CAR-T細胞免疫療法、難治性リンパ腫に完全寛解

Zuma-1試験の中間解析にて、歴史的対照データと比較して完全寛解率がおよそ6倍高くなることが示された

米国、サンディエゴで開催された第58回米国血液学会(ASH)年次総会(2016年12月3~6日)にて、最新演題として、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法が難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治療における有望な選択肢となることが示された。実践的観点から、CAR-T細胞免疫療法はさまざまな実際の臨床現場で施行できる可能性が見込まれる。22施設にて、抗CD19 CAR-T細胞を用いた本試験は、細胞免疫療法をベースとしたリンパ腫に対する治療アプローチの初の多施設試験である。

本試験は、化学療法に反応しない、または自家造血幹細胞移植後に再発したDLBCL患者を対象としている。このような化学療法抵抗性の患者は予後不良であり、全生存期間中央値はちょうど6カ月で、既存の治療法で完全寛解に至るのは8%しかいない。20年以上もこうした患者への新しい治療法は生まれなかった。

4施設で実施された第1期ZUMA-1試験では、患者のうち43%が12カ月時点で完全寛解を維持している。実際の臨床現場における本治療法の実行可能性を検証する目的で、第2期ZUMA-1試験では参加施設を22まで拡大した。そのほとんどはこれまでCAR-T細胞免疫療法を実施したことはない。

DLBCL患者51人の予め指定された中間解析から、良好な結果が新しく報告されている。抗CD19 CAR-T細胞免疫療法後の全奏効率は76%(47%が完全寛解、29%が部分寛解)で、ほとんどの奏効ははじめの1カ月以内に記録された。3カ月目終了までの全寛解率は39%であった(33%が完全寛解、6%が部分寛解)。

ヒューストンにあるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター所属のSattva Neelapu氏が主導する研究チームによると、この結果は有効性の観点から有望であるほか、CAR-T細胞の製造、治療ロジスティクス、有害事象の管理が複数の施設にまたがって問題なく実行されうることも示している。

DLBCL患者73人のコホートにおいて報告された抗CD19 CAR-T細胞関連の重篤な有害事象は、神経学的有害事象(患者の25%で報告され、典型的事象は一過性の錯乱または失見当識であった)およびグレード3以上のサイトカイン放出症候群(14%)などである。サイトカイン放出症候群で最もよくみられた症状は発熱、低血圧、呼吸困難であった。患者1人が免疫システムの過剰活性化により死亡したという報告がなされた。

CAR-T細胞免疫療法に関する最近の研究にて、副作用の管理能力が改善されてきた。現在こうした副作用の認識およびランク付けの方法および症状の管理方法について新しいガイドラインが提供されている。

研究者チームはまた、DLBCLよりまれなタイプの原発性縦隔B細胞性リンパ腫患者および形質転換型濾胞性リンパ腫患者を含めたZUMA-1試験の第2コホート20人の結果を別個に分析した。この第2コホートの全奏効率は80%で、うち完全寛解率は55%であった。

研究者チームは、今後15年にわたり本コホートの患者の転帰を追跡する予定である。

参考文献

LBA-6. Neelapu SS, Locke FL, Bartlett NL, et al. Kte-C19 (anti-CD19 CAR T Cells) Induces Complete Remissions in Patients with Refractory Diffuse Large B-Cell Lymphoma (DLBCL): Results from the Pivotal Phase 2 ZUMA-1.  Presented at the 58th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition, San Diego, US (3-6 December 2016).

998. Locke FL, Neelapu SS, Bartlett NL, et al. A Phase 2 Multicenter Trial of KTE-C19 (anti-CD19 CAR T Cells) in Patients With Chemorefractory Primary Mediastinal B-Cell Lymphoma (PMBCL) and Transformed Follicular Lymphoma (TFL):  Interim Results From ZUMA-1. Presented at the 58th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting and Exposition, San Diego, US (3-6 December 2016). 

翻訳担当者 柏崎 末久

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善の画像

【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験が、無増憎悪生存率と寛解率の有意な改善を示すアブストラクト:LBA-2

イブルチニブ(販売名:イムブルビカ )とベネト...
リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状の画像

リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状

ダナファーバーがん研究所研究概要表題
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の二次治療、キメラ抗原受容体 T 細胞療法:費用対効果の分析出版物Annals o...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...