CD4タンパク標的のCAR-T細胞をFDAが希少疾病用医薬品に指定

CD4タンパク標的のCAR-T細胞をFDAが希少疾病用医薬品に指定

末梢性T細胞リンパ腫の治療を適応とする

iCell Gene Therapeutics社は、2016年8月11日、米国食品医薬品局(FDA)が、CD4タンパク質を標的とするキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CD4CAR)を末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)治療用のオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)として承認したことを発表した。

希少疾病用医薬品指定プログラムは、希少疾患に対する安全で有効な治療、診断、予防を目的とした医薬品と生物学的製剤を希少疾病用医薬品に指定し、それに関する研究開発に奨励措置を供与する制度である。

キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子改変T細胞とは、患者のT細胞を遺伝子改変し、その細胞表面に別の細胞上の標的タンパク質と結合することができるタンパク質を発現させるようにしたものである。結合によって、CARタンパク質は、細胞膜を通してT細胞内部にシグナルを送り、標的細胞を選択的に死滅させる機序を発動する。

CD19陽性細胞性造血器腫瘍に関して、CAR T細胞の臨床開発プログラムは進行しているが、CD4陽性末梢性T細胞リンパ腫はヒト臨床試験においてCAR療法の対象になっていなかった。末梢性T細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫(NHL)全体の10~15%を占め、B細胞NHLと比較して治療困難である。さらに、わずかな例外があるものの、T細胞NHLはB細胞NHLと比較して、予後が不良であり、寛解率が低く、短期間で進行し、生存期間の中央値が短い。結果として、末梢性T細胞リンパ腫に対する標準治療法は十分に確立されておらず、治癒可能性のあるレジメンは骨髄移植だけである。骨髄移植は忍容性が不良であるだけでなく、多くの薬剤耐性疾患患者に対する有効な選択肢ではない。このため、多数の患者は治癒的選択肢のない状況にある。

いくつかの米国学術機関のがん研究者らがiCell Gene Therapeutics社と提携して、この最前線の免疫療法を、治療が非常に困難なT細胞リンパ腫に苦しむ患者を対象としたfirst-in-human試験(初めてヒトに投与する第1相臨床試験)へと導いた。

CD4CARは、CD4陽性T細胞悪性腫瘍治療用に開発中である。この革新的な、CD4タンパク質を標的とするキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞は、抗CD4scFV抗体領域を発現するように遺伝子改変した、正確に適合する同種異形ヒトT細胞である。初の第1相臨床試験がiCell Gene Therapeutics社、米国国立衛生研究所、Indiana Clinical and Translational Sciences Institute、ストーニー・ブルック大学病院、ルイズビル大学ジェームス・グラハム・ブラウンがんセンターの血液・移植手術部門および臨床試験研究ユニットの協力のもと、計画されている。

翻訳担当者 有田香名美

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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