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癌の放射線治療:Q&A

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癌の放射線治療:Q&A

 

癌の放射線治療

原文日付 2010年6月30日

キーポイント・放射線治療は高エネルギーの放射線を使って、癌細胞のDNAを損傷することによって癌細胞を死滅させます(Question 1および2参照)。

・放射線治療では癌細胞とともに正常細胞を損傷することがあります。そのため、副作用を最小限に抑えるために治療計画を慎重に行わなければなりません。(Question 35および10参照)。

・癌の治療に用いられる放射線は、放射線治療装置を用いて体外から照射されることもあれば、腫瘍近傍に留置もしくは血流に注入された放射線物質から放出されることもあります(Question 6参照)。

・放射線治療は治療する癌腫によって、手術前、手術中または手術後に施行されます(Question 8参照)。

・放射線治療を単独で受ける患者もいれば、化学療法と併用して放射線治療を受ける患者もいます(Question 8参照)。

1.放射線治療とは

 

放射線治療は、高エネルギーの放射線を使って癌細胞を死滅させることによって腫瘍を縮小させます(1)。癌の治療に用いられる放射線には、X線、ガンマ線および荷電粒子があります。

放射線は、放射線治療装置を用いて体外から照射される場合(外部照射)と、腫瘍近傍に留置された放射線物質から放出される場合(小線源治療とも呼ばれる内部照射)があります。

全身的放射線治療は、放射性ヨウ素のような放射性物質を血液中に循環させ、癌細胞を死滅させます。

全癌患者のうち、約半数が治療中のある時期に何らかの放射線治療を受けます。

 

2.放射線治療はどのように癌細胞を死滅させるのですか。

 

放射線治療は癌細胞のDNA(遺伝情報をもち、世代から世代へと情報を伝える細胞内の分子)に損傷を与えることによって癌細胞を死滅させます(1)。放射線がDNAを直接損傷することもできれば、放射線によって細胞内に生じた荷電粒子(フリーラジカル)がDNAを損傷することもできます。

DNAが修復できないほど損傷した癌細胞は分裂をやめるか死滅します。損傷した細胞が死滅すると、体の生理作用によって破壊されて排除されます。

 

 

3.放射線治療は癌細胞だけを死滅させるのですか。

 

いいえ。放射線が正常細胞を損傷し副作用を生じることもあります(Question 10参照)。

医師が放射線治療計画を立てるとき、正常細胞が損傷する可能性を考慮に入れます(Question 5参照)。正常組織に対して安全に照射できる放射線量がわかっています。医師はこの情報を基もとに、標的に対してどの方向から放射線を照射するのかを決めます。

 

 

4.患者が放射線治療を受けるのはなぜですか。

 

放射線治療は時に根治を目的として施行されます(言い換えれば、治療によって腫瘍除去、再発防止、または両者をとおして癌を治すことを期待して実施されます)(1)。このような場合、放射線治療を単独で用いることもあれば、手術や化学療法と併用して用いることもあります。

放射線治療は症状緩和を目的として施行されることもあります。姑息的(緩和)治療は治癒を目的としているのではなく、症状を緩和し、癌による苦痛を和らげることを目的としています。

 

姑息的放射線療法の例として次のようなものがあります。

  • 体の別部位から脳に行き渡った癌細胞(転移)から成る腫瘍を縮小させるための脳への放射線治療

 

  • 脊椎を圧迫していたり、骨の内部で成長しているために痛みを引き起こす可能性のある腫瘍を縮小させるための放射線治療

 

  • 食道付近にあり患者の飲食に支障をきたす可能性のある腫瘍を縮小させるための放射線治療

 

5.放射線治療計画はどのように立案されるのですか。

 

シミュレーションから始まる治療計画立案作業を経て、放射線腫瘍医が患者の治療計画を立てます。

シミュレーションでは、画像診断装置を用いて患者の腫瘍の場所とその周辺の正常な領域を詳細に画像化します。通常、画像診断にはコンピュータ断層撮影法(CT)が使われますが、磁気共鳴撮像法(MRI)、陽電子放出型CT(PET)および超音波を用いることもあります。

 

コンピュータ断層撮影装置 放射線治療計画の立案にはCTスキャンがよく用いられます。CTスキャン中、 X線装置につながれたコンピュータで体の内部が画像化されます。

 

シミュレーションでも日々の治療でも、治療装置または画像撮影装置に対して、患者を毎日同じ位置に合わせる必要があります。患者が少しでも楽に静止していられるように、患者に合わせた体幹部用成形型や頭部用マスクなどの固定具を作ることもあります。一時的に皮膚表面に印をつけたり、刺青でさえも患者の正確な位置決めに役立てるために用います。

 

放射線治療用頭部マスク 頭部に放射線治療を受ける患者はマスクが必要になることがあります。患者が毎回の治療で同じ位置にくるように、マスクによって頭部がなるべく動かないようにします。

 

シミュレーション終了後、放射線腫瘍医が正確な治療領域、腫瘍に照射する総放射線量、腫瘍のまわりにある正常組織が許容できる放射線量、放射線照射時の最も安全な角度(経路)を決定します。

放射線腫瘍医とともに治療にあたる(医学物理士および線量測定士などの)担当者は精巧なコンピュータを用いて、放射線治療計画の詳細を決定します。放射線腫瘍医は治療計画を承認した後、治療の開始を許可します。治療初日と通常少なくとも週に1回、多くの検査を実施して、治療が計画通り正確に施行されるようにします。

癌治療のための放射線量はグレイ(Gy)と呼ばれる単位で表されます。これはヒトの組織1kgが吸収する放射線エネルギー量の測定単位のことです。癌細胞には様々な種類があり,それを死滅させるための線量は癌細胞によって異なります。

正常組織の中には、放射線によって容易に損傷を受ける組織があります。たとえば、生殖器(精巣および卵巣)の放射線に対する感受性は骨組織より高いことが知られています。治療計画を立案する際、放射線腫瘍医はこのような情報も考慮します。

患者が以前、体の一部に放射線治療を受けたことがある場合、初回治療時に照射された放射線量によって、同じ領域に2度目の放射線治療を受けることはできないかもしれません。生涯に受けても安全な放射線最大量を体の一部に受けてしまっている場合でも、距離が十分離れていれば、別の領域に放射線治療を受けられる可能性は依然残っています。

 

治療する領域は通常、腫瘍全体とその周辺のわずかな正常組織です。正常組織は、次の2つの理由から照射されます。

  • 呼吸による体動や臓器の生理運動を考慮するため。このような運動により、治療間の腫瘍位置が変わる可能性があります。

 

  • 腫瘍に隣接する正常組織に広がった癌細胞(顕微鏡的な局所拡大)から腫瘍が再発する可能性を抑えるため 。

 

6.放射線治療は患者にどのように施行されるのですか。

 

放射線治療には、体外にある装置から照射される方法(外部照射)と、体内の腫瘍近傍に置かれる放射性物質から放出される方法(小線源治療とよく呼ばれる内部照射)があります。全身的放射線治療には、経口投与または経静脈投与される放射性物質を使用します。放射性物質は血液中を循環して全身の組織に運ばれます。

 

放射線腫瘍医が処方する放射線治療の種類は、次のような多くの要因によって異なります。

  • 癌の種類
  • 癌の大きさ
  • 癌の場所
  • 癌が放射線感受性の高い正常組織にどの程度近接しているか
  • 放射線がどの程度体の奥深くまで届く必要があるのか
  • 患者の全身状態および治療歴
  • 放射線治療以外の癌治療を受けるかどうか
  • 年齢や併存疾患など、ほかの要因

 

外部照射

 

外部照射法では光子線(X線またはガンマ線のいずれか)を照射するのが最も一般的です(1)。光子は光や電磁放射線の他の形態の基本構成単位です。エネルギーのかたまりと考えることもできます。光子1個のエネルギー量はさまざまです。たとえば、ガンマ線の光子エネルギーは最大であり、X線の光子エネルギーは2番の大きさです。

外部照射に用いられる直線加速器 外部照射の多くが直線加速器(リニアック)とよばれる装置を用いて照射されます。リニアックが電力を利用して高速で動く亜原子粒子の流れを形成します。これが高エネルギーの放射線を発生させて、癌の治療に用いられます。

 

患者は通常、数週間にわたって毎日、外部放射線治療を受けます(Question 7参照)。治療回数は、総放射線量をはじめ多くの要因によって決まります。

外部照射に最もよくみられるのが三次元原体照射(3D-CRTとよばれる照射法です。3D-CRTは高性能なコンピュータソフトウェアと最新の治療装置を用いて、標的領域に対して非常に正確な形状で放射線を投与します。

現在、このほかにも多くの外部照射法が試験されており、実臨床に用いられています。以下に示す照射法があります。

 

  • 強度変調放射線治療(IMRT IMRTは、コリメータとよばれる小さな放射線ビーム形成器を数百個使って1回分の放射線量を照射します(2)。コリメータは放射線照射中に止まったり動いたりしながら、治療中に放射線ビームの強度を変えることができます。このように線量を調節することによって、さまざまな領域の腫瘍または近傍の正常組織に異なる放射線量を投与することが可能です。

 

IMRTはほかの放射線治療法と異なり、逆方向から治療計画を立案します(逆方向治療計画)。逆方向治療計画立案時に、放射線腫瘍医が腫瘍のさまざまな領域や周囲の組織に対する放射線量を選び、高性能のコンピュータプログラムによって治療に必要なビーム数と角度を計算します(3)。これに対して従来の(前向き)治療計画の立案では、放射線腫瘍医が治療に必要なビーム数と角度を先に決めて、コンピュータによって計画した各方向から投射される放射線量を計算します。

 

IMRTの目的は、多くの放射線量が必要な領域に対して線量を増大し、放射線感受性が高い周辺正常組織への照射を減らすことです。3D-CRTに比べて、頭頸部の放射線治療時にみられる(口渇または口内乾燥の原因になる)唾液腺損傷をはじめ、一部の副作用へのリスクを抑えることができます(4)。しかし、IMRTによって正常組織の照射体積は増大します。IMRTが腫瘍制御の改善につながるか、3D-CRTに比べて生存期間を改善するのかはまだわかっていません(4)。

 

  • 画像誘導放射線治療(IGRT IGRTでは、治療中に(CT、MRIまたはPETによる)複数回の画像を取得します。得られた画像をコンピュータ処理し、治療による腫瘍の大きさや場所の変位を計測します。それをもとに、必要に応じて治療中に患者の位置を調整したり、計画で決定した放射線量を変えることもあります。複数回撮影することによって、放射線治療の精度を高めることができ、計画で決定した治療対象の組織量を減らすことが可能になります。その結果、正常組織に対する全放射線量が減少します(5)。

 

  • トモセラピー トモセラピー法は画像誘導IMRTの一種です。トモセラピー装置はCT装置と外部放射線治療装置を組み合わせたような装置です。トモセラピー装置は体内の画像化と治療の両方を目的として放射線を放出しながら、通常のCT装置と同じように患者の周りを360度回転できるようになっています。

 

トモセラピー装置によって治療の直前に体内のCT画像を撮像できるため、標的となる腫瘍をきわめて正確にとらえ、正常組織への照射を避けることが可能です。

 

トモセラピー法は、標準のIMRTと同じように、 正常組織を高線量から守るという点で3D-CRTよりも優れているようです(7)。ただ、トモセラピー法を3D-CRTと比較した臨床試験は実施されていません。

 

  • 定位的放射線治療 定位的放射線治療(SRS)は、小腫瘍に対して大線量を1回ないし複数回照射する治療法です(8)。SRSでは、きわめて精度の高い画像誘導によって標的腫瘍の設定と患者の位置決めをします。このため、正常組織を過度に損傷することなく大線量の放射線を投与することができます。

 

SRSは腫瘍の輪郭が明瞭な小腫瘍の治療に限定して用いられます。脳腫瘍、脊髄腫瘍または別部位の癌からの脳転移の治療に最もよく用いられます。一部の脳転移の治療では、患者がSRSに加えて脳全体に対する放射線治療(全脳照射)を受けることもあります。

 

SRSでは、大線量が正確に投与されるようにするために、頭部用のフレームなどの器具を使って治療中に患者を固定する必要があります。

 

  • 体幹部定位放射線治療 体幹部定位放射線治療(SBRT)は、多くの場合、3D-CRTよりも小さな照射野に大線量が照射され、照射回数が少ない放射線治療です。SBRTは本質的に脳と脊髄以外にある腫瘍の治療に用いられます。このような腫瘍は体の正常な運動によって移動する可能性が高いので、脳腫瘍や脊髄腫瘍のように正確に標的を定めることができません。このため、SBRTは通常、複数回に分けて施行されます(8)。SBRTは、肺癌や肝臓癌をはじめとする小さな孤立性腫瘍に限定して治療することができます(8)。

 

多くの医師がSBRT装置のことを、サイバーナイフ(CyberKnife®)のようなブランド名で呼んでいます。

 

  • 陽子線治療 外部照射には、上記で説明したように光子以外に、陽子線を用いることもできます。陽子は荷電粒子の一種です。

 

陽子線は、主に組織にエネルギーを付与する方法が光子線と異なります。光子が組織を通過する通り路全体に小さなエネルギーを付与するのに対して、陽子は行路の終端(ブラッグピーク)にエネルギーの多くを付与し、通り路には少量のエネルギーを付与します。

 

理論的には、陽子を使用することによって正常組織に対する照射が減少し、腫瘍に高線量の放射線を投与することができます(9)。陽子線治療は未だ臨床試験段階にあり、標準的な外部照射と比較されていません(10, 11)。

 

  • そのほかの荷電粒子ビーム 皮膚癌や体表近くにある腫瘍など表在性の腫瘍への照射には電子ビームが用いられますが、組織の深部までは届きません(1)。このため、体内の深部にある腫瘍の治療には用いられません。

 

患者はこのようなさまざまな放射線治療の手技について、自分の癌に適した照射法があるかどうか、自分の地域または臨床試験をとおして治療を受けられるかどうかを医師に相談することができます(Question 11参照)。

 

 

内部照射

 

内部照射(小線源治療)は体内または体表面に置いた線源(放射性物質)から放射線を照射する方法です(12)。小線源治療法がいくつか癌の治療に用いられています。組織内小線源治療は、前立腺癌の内側など、腫瘍組織の中に線源を留置して照射します。腔内小線源治療は、腫瘍の近くにある体腔、胸腔などや手術によってできた腔内に線源を挿入します。小線源強膜縫着療法は眼内の悪性黒色腫の治療に用いられ、眼球に線源を縫着します。

 

小線源治療では、放射性同位元素が小さな粒または「シード(種子)」に密閉されています。このシードを針やカテーテルなどの器具や装置を用いて患者の体内に留置します。放射性同位元素は自然崩壊するにしたがって、近傍の癌細胞を損傷する放射線量を減少します。

数週間または数カ月間と放置しておくと、放射性同位元素は完全に崩壊して放射線を放出しなくなります。シードを体内に残しておいても害はありません(下記の永久刺入密閉小線源治療を参照)。

小線源治療は一部の癌に対して、外部照射よりも正常組織への損傷を抑えながら、さらに高線量を投与することができます(1,12)。

 

小線源治療は低線量率でも高線量率でも投与することができます。

 

  • 低線量率小線源治療では、癌細胞は数日間にわたって連続的に線源から低線量の放射線を受けます(1,12)。

 

  • 高線量率小線源治療では、体内に留置した中空管につながれたロボット装置によって腫瘍の中または近傍に線源を1個以上装填し、毎回治療の終わりに線源を取り除きます。

 

高線量率小線源治療の例として、マンモサイト(MammoSite®)がありますが、乳房温存手術を受けた乳癌患者を治療するための試験が進行中です。

 

小線源治療に用いる線源は、一時装着または永久刺入されます(1,12)。

 

  • 永久刺入法では、線源は外科手術によって体内に刺入され、放射線が残らず放射されてしまったあとでも留置されます。放射性同位元素が密封されていた残留素材は患者に不快感や害を与えるものではありません。永久刺入密封小線源治療は低線量率小線源治療の一種です。

 

  • 一時装着法では、中空管(カテーテル)をはじめとする器具を用いて線源を装着し、治療後に容器と線源を取り除きます。一時装着法は低線量率治療にも高線量率治療にも用いることができます。

 

医師は小線源治療を単独で用いることもできますし、周辺正常組織を避けながら腫瘍に対する放射線を「もう一押し」するために、外部照射に加えることもできます(12)。

 

全身的放射線治療

 

全身的放射線治療では、患者が放射性ヨウ素またはモノクローナル抗体に結合した放射性物質などの放射性物質を経口または注射によって摂取します。

 

放射性ヨード(131I)内用療法は全身的放射線治療の一種であり、一部の甲状腺癌の治療によく用いられます。甲状腺細胞は放射性ヨードを自然に取り込みます。

 

このほかの癌種に対する全身的放射線治療では、モノクローナル抗体が放射性物質を正しく照準するのに役立ちます。放射性物質に結合したモノクローナル抗体は血液中を循環して腫瘍細胞をみつけ、死滅させます。次のような例があります。

 

  • イブリツモマブチウキセタン(Zevaline® [ゼヴァリン])が特定のB細胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療に対してFDA承認を受けています。この薬剤の抗体部分はBリンパ球表面にみられるタンパク質を認識して、これに結合します。

 

  • トシツモマブとヨードの併用療法であるヨード131トシツモマブ(Bexxar® [ベクサール])は特定のNHLの治療に対して承認を受けています。この治療方法では、最初に非放射性のトシツモマブを患者に投与し、次いでヨード131を付与したトシツモマブ抗体で治療します。トシツモマブは、Bリンパ球上にあり、イブリツモマブが認識するのと同じタンパク質を認識して、これに結合します。非放射性の抗体が、ヨード131の放射線による損傷から正常なBリンパ球を保護するのに役立ちます。

 

このほか、さまざまな癌に関して全身的放射線治療薬の多くが臨床試験で評価されているところです。

 

全身的放射線治療の一部には骨に広がった癌(骨転移)による痛みを緩和するものもあります。これは姑息的放射線治療の一種です。骨転移による疼痛の治療に用いられている放射性医薬品には、放射線治療薬であるサマリウム153レキシドロナム(クアドラメット®)や塩化ストロンチウム89(メタストロン®)が挙げられます(13)。

 

7.放射線治療に低線量で何回も施行する治療があるのはなぜですか。

 

外部照射法のほとんどで、治療を受ける患者は通常、最大週5回数週間にわたり通院するか、外来施設まで足を運ばなければなりません。総計画線量の1回線量(1回照射)が治療日に投与されます。1日に2回治療することもあります。

外部照射法のほとんどが1日1回照射です。1日1回照射する理由は主に次の2点です。

  • 正常組織の損傷を最小限に抑える。

 

  • 癌細胞のDNAが細胞周期内の最も損傷を受けやすい時点で放射線に曝露される可能性を高める。

 

ここ数十年来、医師諸氏が1日1回照射以外の分割スケジュールが有用かどうかを試験しており、それには次のようなものがあります(1)。

 

  • 加速分割照射 治療週数を短縮するために毎日または週に1回、通常より多い線量を投与する治療法

 

  • 過分割照射 毎日1回以上、小線量を投与

 

  • 寡分割照射 治療回数を減らすために1日1回またはさらに間隔をあけて通常よりも多い線量を投与

 

研究者らは、さまざまな分割照射法が従来の分割照射法よりも効果的であるか、効果は同等であってもさらに利便性に優れていることを期待しています。

 

8.患者が放射線治療を受けるのはいつですか。

 

手術前、手術中、手術後に放射線治療を受けることができます。手術やほかの治療を受けることなく、放射線治療を単独で受ける患者もいます。放射線治療と化学療法を同時に受ける患者もいます。放射線治療のタイミングは治療を受ける癌種および治療目標(治癒または緩和)によります。

 

手術の前に施行される放射線治療を術前照射またはネオアジュバント放射線療法と呼びます。ネオアジュバント放射線療法は、腫瘍を縮小して手術による除去を可能にし、手術後に再発しにくくなるように実施します(1)。

 

手術中に施行される放射線治療を術中照射(IORT)と呼びます。IORTは(光子または電子による)外部照射でも小線源治療でも可能です。手術中に照射する際、近傍の正常組織を放射線曝露から物理的に保護することができます(15)。IORTは時に正常組織が腫瘍に近すぎて外部照射を使用することができないときに用いられます。

手術後に施行される放射線治療を術後照射またはアジュバント放射線療法と呼びます。

複雑な手術後(特に腹部や骨盤)の放射線療法では、多くの副作用が生じる場合があります。このため、そのような場合は術前に施行すると安全です(1)。

化学療法と放射線治療を同時に実施する併用療法を化学放射線療法または放射線化学療法と呼ぶことがあります。癌の種類によっては、化学療法と放射線治療の併用療法によってさらに多くの癌細胞を死滅させること(治癒の可能性を高めること)ができます。一方、副作用も多くなる可能性があります(1,14)。

癌の治療後、患者は健康管理と癌再発の有無の確認のために定期的に放射線腫瘍医に受診して経過観察のための検診をしてもらいます。経過観察に関する詳細な情報は国立癌研究所(NCI)のファクトシート Follow-up Care After Treatment『癌治療後のフォローアップケア(日本語訳)』(https://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_factsheet/index.php?page=article&storyid=349)をご覧ください。

 

 

9.放射線治療によって患者から放射線が放出される(放射化する)ことはありますか

 

外部照射によって患者が放射化することはありません。

小線源治療の一時装着法を受けていて放射性物質が体内にある間、患者から放射線が放出されます。しかし、放射性物質を取り除くと、患者から放射線が放出されなくなります。一時装着の小線源治療では、通常患者は入院して、ほかの人が放射線に曝露されないように特別な部屋に入ります。

小線源治療の永久刺入法を受けている間、放射線源が体内に留置されている数日間、数週間または数カ月間、埋め込まれた物質から放射線が放出されます。この期間は患者から放射線が放出されます。しかし、体表に届く放射線の量はごくわずかです。とはいえ、放射線モニターで検出できますので、妊婦および小児との接触を数日間から数週間は控えるようにするとよいでしょう。

全身的放射線治療では、一時的に患者の体液(唾液、尿、汗または便など)から低レベルの放射線が放出されることがあります。全身的放射線治療を受けている患者は治療期間中、ほかの人との接触を制限する必要があり、特に18歳未満の小児および妊婦との接触を避けましょう。

上記のような特別な注意が必要な場合には、医師や看護師から患者の家族および介護人に説明があるでしょう。時間が経てば(ふつう数日または数週)、体内にある放射性物質が崩壊して、患者の体外でも放射線を測定できなくなります。

 

10.放射線治療の副作用にはどのようなものがありますか。

 

放射線治療は、早期(急性)と晩期(慢性)のいずれでも副作用を起こす場合があります。急性副作用は治療中に発現し、慢性副作用は治療終了後数カ月または数年後でも発現します(1)。発現する副作用は、治療を受けた部位、1日あたりの線量、総線量、患者の一般全身状態、同時に受けているほかの治療によります。

 

放射線による急性副作用は、照射されている領域にあって細胞分裂が盛んな正常細胞が損傷を受けることによって生じます。副作用には放射線ビームに曝露した部分での皮膚刺激や皮膚損傷があります。たとえば、頭頚部治療時の唾液腺の損傷や脱毛、下腹部治療時の泌尿器の障害があります。

 

ほとんどの急性副作用は治療終了後には解消しますが、(唾液腺の損傷など)解消しないものもあります。アミフォスチン(Ethyol®)という薬剤は、治療中に投与すれば、放射線による損傷から唾液腺を保護するのに役立ちます。アミフォスチンは、治療中に放射線から正常組織を守るための薬剤としてFDAから承認されている唯一の薬剤です。この種の薬剤を放射線防護剤と呼びます。このほかに、放射線防護剤の候補薬が臨床試験で検討されています(Question 11参照)。

倦怠感は照射部位に関係なく、放射線治療によくある副作用です。腹部照射では悪心・嘔吐が多く、頭部照射でも時折あります 。治療中の悪心・嘔吐の予防および治療には薬剤があります。

 

放射線治療の晩期副作用は起こることもあれば起こらないこともあります。照射部位によっては次のような晩期副作用が起こる可能性があります(1)。

 

  • 線維症(正常組織が瘢痕組織に入れ替わり、病変部の運動が制限されるようになる)

 

  • 腸の損傷に伴う下痢、出血

 

  • 記憶喪失

 

  • 不妊症(妊娠不能)

 

  • まれに放射線曝露による二次発癌

 

放射線治療後にできる二次癌は治療を受けた部位によります(16)。たとえば、ホジキンリンパ腫のため胸部に放射線照射を受けた女児は後年、乳癌を発症するリスクが高くなります。一般に、二次癌の生涯リスクは青少年期に癌の治療を受けた人が最も高いです(16)。

 

患者が晩期副作用を発症するかどうかは、個人の危険因子とともに放射線治療のほか、別の癌治療にもよります。晩期副作用のリスクは一部の化学療法、遺伝性危険因子や(喫煙など)生活習慣因子によっても増大することがあります。

 

放射線腫瘍医が患者の癌治療の一貫として放射線治療を提案するとき、各患者に期待できる効果(症状緩和、腫瘍縮小、治癒の可能性など)と治療による既知のリスクを慎重に比較検討します。数百件におよぶ臨床試験の結果と医師個人の経験は、放射線腫瘍医がどの患者が放射線治療から恩恵を受けやすいかを判断するのに役立ちます。

 

放射線治療による急性副作用および晩期副作用に関するさらに総合的な考察や副作用の対処方法などがNCI 小冊子『放射線治療とあなた(日本語訳)』
(https://www.cancerit.jp/xoops/modules/nci_pamphlet/index.php/09radiation_therapy/page01.html)およびRadiation Therapy Side Effects Fact Sheets(放射線治療の副作用ファクトシート)(http://www.cancer.gov/cancertopics/wtk/index)にあります。

 

11.放射線治療を改善するためにどのような研究が進められていますか。

 

癌をさらに安全で効率的に治療するには放射線治療をどのように利用すればよいのかを知るために、医師や研究者らが臨床試験と呼ばれる調査研究を実施しています。研究者らは臨床試験のおかげで新しい治療の有効性を標準の治療と比較検討したり、両者の副作用を比較することもできます。

 

研究者らは、画像誘導放射線装置が治療中に標的腫瘍の画像をリアルタイムで映し出せるようにその向上にも取り組んでいます。リアルタイムで画像化できれば、治療中の呼吸による内臓の正常な運動や腫瘍の大きさの変化を補正するのに役立ちます。

 

さらに、細胞の放射線に対する反応を変える化学物質、放射線増感剤および放射線防護剤の研究も進められています。

 

  • 放射線増感剤とは、放射線治療の作用に対して癌細胞をさらに敏感にさせる薬剤です。放射線増感剤としていくつかの薬剤が研究されています。また、5-フルオロウラシルやシスプラチンをはじめ一部の抗癌剤が放射線治療に対する癌細胞の感受性を高くします。

 

  • 放射線防護剤とは、放射線治療によって生じる損傷から正常細胞を守る薬剤です。この薬剤は放射線に曝露した正常細胞の修復を促します。放射線防護剤の候補薬として多くの薬剤が現在研究されています。

 

放射線治療での炭素イオンビームの利用が研究者らによって研究されていますが、 現時点ではまだ実験段階です。炭素イオンビームが使えるのは世界でも数カ所の医療センターしかありません。アメリカでは現在利用できません。研究者らは、炭素イオンビームが従来の放射線治療に抵抗性のある腫瘍の治療に効果があることを期待しています。

 

臨床試験への参加に興味のある 癌患者は医師に相談してください。現在実施されている臨床試験を網羅したリストが、インターネット上のNCIウェブサイト(http://www.cancer.gov/clinicaltrials)でご覧いただけます。

 

NCIの癌情報サービス(CIS)も臨床試験に関する情報を提供しており、臨床試験を探すお手伝いをしています。CISまでお電話ください(電話番号1-800-4-CANCER(1-800-422-6237))。

 

 

参考文献

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ギボンズ京子 訳
中村 光宏 (医学物理士) 監修

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翻訳ギボンズ京子

監修中村 光宏 (医学物理士)

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