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セツキシマブが最も有効な大腸がん患者を特定する新たなバイオマーカー(FCGR2A H/H)

支持療法に加え、セツキシマブ(アービタックス)による治療を加えた場合、KRAS遺伝子に変異がない転移性大腸がん患者のうち、特定のFCGR2A遺伝子型が2コピー存在する患者(FCGR2A H/H)に限り、全生存期間(OS)中央値が有意に長くなることが、米国がん学会のClinical Cancer Research誌に発表された第3相臨床試験の後ろ向き解析から明らかになった。

 

KRAS遺伝子に変異がなく(KRAS野生型)、FCGR2Aの遺伝子型がH/Hの転移性大腸がん患者では、支持療法にセツキシマブを追加すると、全生存期間中央値が5.5カ月長くなることがわかった(4.83カ月に対して10.35カ月)。この全生存期間中央値の延長は統計学的に有意であった。KRAS野生型患者のうち、FCGR2A遺伝子の変異型が1コピー(FCGR2A H/R)または欠失(FCGR2A R/R)している患者では、全生存期間中央値の延びがそれぞれ3.9カ月および1.7カ月であったが、いずれも統計学的に有意なものではなかった。

 

トロントのプリンセス・マーガレット病院がん研究センターのAlan B. Brown分子遺伝学講座を担当するGeoffrey Liu医師は、以下のように語った。「米国食品医薬品局(FDA)は、KRAS変異型の転移性大腸がん患者にセツキシマブを用いても効果が得られないことが明らかになったのを受けて、同薬剤の使用をKRASに変異のない野生型の患者に限定しました。それでもなお、セツキシマブによる治療を受けた大腸がん患者の半数近くには、同治療による顕著な効果はありません。セツキシマブ治療の個別化を向上することができるバイオマーカーを新たに発見することを望んでいました」。

 

同医師は続ける。「われわれは、 FCGR2Aの遺伝子型がH/Hの患者がセツキシマブから最大の効果を得ることができ、H/Rの患者では効果がわずかであり、 R/Rの患者では効果が認められないことを明らかにしました。われわれの解析結果が前向き試験で検証されれば、25%に及ぶFCGR2A R/Rの患者にセツキシマブ以外を用いて治療を実施するよう示唆され、患者は、効果を示す可能性がきわめて低い抗がん剤の有害な毒性を被ることがなくなると考えられます」。

 

Canadian Cancer Trials GroupおよびAustralasian Gastro-Intestinal Trials Groupに参加するLiu医師らは、NCIC-CTG CO.17第3相臨床試験に登録された患者の保存された腫瘍組織検体および正常組織検体を分析した。転移性大腸がん患者を対象に、支持療法にセツキシマブを追加することを評価したこの試験では、2003年12月から2005年8月にかけて転移性大腸がん患者572人を登録した。

 

以前に発表されたこの試験の結果では、支持療法にセツキシマブを追加すると全生存期間中央値が長くなるが、セツキシマブの効果を得ることができるのはKRAS野生型患者にかぎることが報告されている。

 

この試験で研究者らは、286人のFCGR2Aの遺伝子型を特定し、そのうち148人がKRAS野生型であった。

 

Liu医師によれば、この試験の大きな制約となっているのは、解析が後ろ向きであることのほか、臨床現場の判断の指針として利用するにあたり、複数の試験で結果を裏づける必要があることにある。同医師は、結果を検証するために、Canadian Cancer Trials GroupとAustralasian Gastro-Intestinal Trials Groupの指揮のもとに、CO.20と呼ばれる試験がすでに進行中であることを付け加えた。

 

本試験は、オンタリオがん研究所、カナダがん協会、Transgenomic Inc.社、カナダ保健研究機構、Peter MacCallum Cancer Foundationから支援を受けた。Liu医師は、利益相反がないことを宣言している。

 

翻訳尾川 愛

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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