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血液検査で前立腺がんホルモン治療の効果を予測できる可能性

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血液検査で前立腺がんホルモン治療の効果を予測できる可能性

英国医療サービス(NHS)

 

「ある血液検査により、前立腺がん患者の薬剤への反応のしやすさがわかるかもしれない」と、英国放送協会(BBC)ニュースが報告している。

 

その検査では、腫瘍増殖を刺激するテストステロンの作用を遮断するホルモン治療薬であるアビラテロンという薬剤に対して、前立腺がん男性が良好な反応を示すかどうかを評価する。

 

多くのがんはアビラテロンに対して抵抗性が生じるためその作用は無効となりうるが、それでも一定の好ましくない副作用を引き起こす。

 

この新規検査は、がんがアビラテロンに対して抵抗性となりやすいかどうかを評価するため設計された。

 

本試験では、血清中に検出される前立腺がんの腫瘍由来のDNAから異常遺伝子を検索した。その検査では新規技術を利用したが、これは侵襲的な生検は不要であったことを意味している。

 

この試験において、体内のアンドロゲン受容体に関係する遺伝子異常のある男性は、遺伝子異常のない男性に比べ、アビラテロン反応性がかなり低いとみられることがわかった。また、そのような患者は生存期間が短く、がんの進行が速かった。

 

この検査は、患者がアビラテロンによる治療で利益を受けるのか、または化学療法のような別の治療法を受けるべきかの治療決定の支援のために使用できるかもしれない、と研究者らは言う。しかしながら、これは97人のみの小規模試験であったため、検査の信頼性を確認するためにさらなる研究が必要とされる。

 

研究の出典

本試験はイタリア のトレント大学、ロンドンの英国がん研究所、イタリア のIstituto Scientifico Romagnolo per lo Studio e la Cura dei Tumori、ロンドンのロイヤル・マースデン病院、そして米国のWeill Cornell Medicineの研究者により行われた。

 

また、英国の Cancer Research UK、Prostate Cancer UK、イタリアの トレント大学、米国国立がん研究所(NCI)、Movember Global Action Planおよび英国がん研究所より資金援助を受けた。

 

本試験は、論文審査のあるScience Translational Medicine誌で公表された。

 

本試験に関わった研究者のうち何人かが所属し、資金援助を行った英国がん研究所がアビラテロンを製剤化した。これは薬剤研究において珍しいことではない。

 

この試験はBBCと英国新聞インディペンデント紙で詳細に報道されたが、両社とも、本検査が広く使用できるようになる前にさらなる検討が必要であることを明確にしている。

 

英国国民健康保健制度(NHS)におけるアビラテロン

英国国立医療技術評価機構(NICE)からの推奨では、アビラテロンはほかの治療に反応しなかった進行性の前立腺がんに限りNHSより入手可とすべきであると述べている。

 

NICEが費用対効果の面を懸念していることから、現在、早期の前立腺がんでは本薬剤は使用できない。

 

運動家たちは、この最新の試験結果がほかの施設で再現されれば、NICEの決定の見直しにつながるかもしれないと期待している。この薬剤によって利益を受ける患者とそうでない患者についてのより良い情報が得られれば、さらに優れた費用対効果が得られるはずである。

 

研究の種類

本研究は腫瘍DNAにおける特異的な遺伝子変異とホルモン治療薬アビラテロンの有効性との関連を探索したコホート研究であった。テストステロンが前立腺がん細胞の増殖に必要とされることから、この治療はテストステロン産生を抑制することを目的としている。

 

アビラテロンが有効であるのは一部の患者のみである。このため、別の治療が使用できるよう、アビラテロンが有効でない可能性がある患者群を予測する検査が開発できるかどうかを、研究者たちは知ろうとしていた。

 

研究内容

研究者たちは、一次治療に反応しなくなった進行性前立腺がん患者で、アビラテロン投与を開始していない男性から血液サンプルを収集した。そして97例の患者からサンプルの解析ができた。

 

研究者たちは試験開始時、あるいは試験進行中に、異なるタイプの血中遺伝子変異を探した。そして患者の薬剤反応性を評価し、遺伝子変異と薬剤の有効性との関連を探索した。

 

研究者らは、がんのアンドロゲン受容体に影響する遺伝子変異の探索に焦点を絞った。アビラテロンはこれらの受容体を遮断することで効果を示すが、受容体に影響する遺伝子変異によって薬剤が作用しなくなる可能性がある。研究者らは前立腺がんで最もよくみられる腫瘍からDNAを採取し、体の細胞に由来するDNAは無視した。

 

薬剤反応性は、患者の前立腺特異抗原(PSA)レベルの変化を見ることによって評価された。PSAもまた血液検査で測定されるが、前立腺から産生される化学物質である。PSAは通常血中に低いレベルで存在するが、加齢とともに、また前立腺がんを有する患者で上昇する。

 

PSAレベルが50%(部分奏効)または90%低下すればその患者はその薬剤に反応性があると判定された。しかし、PSAレベルが必ずしもがんの状態を反映するとは限らないので、研究者らはがんが再び増殖し始めるまでの期間と患者の生存期間についても評価した。

 

結果

アンドロゲン受容体遺伝子に変異を有する男性はアビラテロン反応性がきわめて低かった。変異を有する患者では、部分奏効の可能性が5倍、完全奏効の可能性が8倍低かった。また、これらの患者は、試験終了時まで生存する可能性が低く[ハザード比(HR)7.33、95%信頼区間(CI)3.51~15.34]、または腫瘍が再増悪せず試験終了に達する可能性が低い(HR3.73、95%CI2.17~6.41)ことが示された。

 

結果の解釈

今回の結果は、腫瘍DNAにおける遺伝子異常は治療結果と密接に関連しており、血漿中でみつかった腫瘍DNAは、治療抵抗性となった腫瘍における変異の優れた指標となりうることを示した、と研究者たちは述べている。

 

彼らは、「血漿アンドロゲン受容体異常を有する患者さんは化学療法や放射性医薬品治療などを受けるよう選別されるべきであることが示唆されました」と話す。

 

さらに彼らは、この戦略が前立腺がん患者のアウトカムを改善するかを確認するために、この仮説はランダム化対照試験で検討されるべきであると加えた。

 

結論

アビラテロンは、一部の患者には有効であるが、一部の患者にはそうではない、高額な薬剤である。NICEは費用の懸念から、本剤をNHSで広く使用できるようにするかの決断をまだ行っていない。

 

前もってアビラテロン反応性を有する患者がわかるようになれば、費用面はより好ましいものになるだろう。

 

これは、血液検査で検出可能なある遺伝子変異と、一次治療に反応しなくなった進行性前立腺がん患者がアビラテロンにより利益を受ける可能性との明白な関係を確立した初期段階の試験である。

 

この結果は大規模試験において確認する必要がある。この戦略により患者が自分の腫瘍に最も適した治療を受けられるようになるかを検討するため、研究者たちは検査結果に基づいて治療ごとに患者が選別される前向きの臨床試験を提案している。これは、前立腺がんの「個別化治療」への大きな一歩となり、そうなれば治療は有効性を得られそうな患者群に標的を絞ったものになるだろう。

 

しかしながら、注意が必要である。アビラテロンに完全奏効を示した患者は97人中17人のみであり、アンドロゲン受容体に関連する遺伝子変異を有さない多くの患者においても、治療への反応はごくわずかまたは全く反応性を示さなかったのである。

 

本試験は、治療反応性が低いとみられる集団を同定したようにみえるが、その集団に含まれない患者すべてが治療反応性を有することを意味するものではない。また、遺伝子変異を有していた患者がほかの治療を受けた場合の効果についても不明である。そうした患者群はほかの治療法に反応しない可能性もある。

 

本試験は、前立腺がん治療はより標的を絞ったものになるという希望を与えたが、この検査が実用化されるにはまだ時間が必要だろう。

 

画像キャプション】その検査は血中DNAの変化を検出できる

原文掲載日

翻訳大澤朋子

監修榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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