ニボルマブによる初回治療がメラノーマの進行を止めることが第3相試験において明らかに

ASCOの見解
ASCO専門家Steven O’Day医師
「メラノーマ(黒色腫)治療は、免疫療法薬によってすでに大きな変革を遂げており、われわれは現在、免疫療法薬の併用によって効果がどれほど増大するかについて目の当たりにしています。しかし、試験結果からは注意すべき点も喚起されています。すなわち、この試験では、ニボルマブとイピリムマブ[ipilimumab]を併用した際に副作用がより強くなりました。この副作用は、患者によってはベネフィットが相殺されるほど強いものでした。今後、医師と患者はこうした点を慎重に考慮する必要があるでしょう」。

第3相ランダム化試験によって、初回治療では、イピリムマブ単独療法に比べ、ニボルマブ単独療法またはニボルマブ/イピリムマブ併用療法は、有意に有効であることが示された。無増悪生存期間中央値は、ニボルマブ群では、イピリムマブ群と比べて2倍以上になり(ニボルマブ群6.9カ月に対し、イピリムマブ群2.9カ月)、併用群ではさらに長くなった(11.5カ月)。奏効率についても、イピリムマブ群(19%)よりも、併用群(57.6%)、ニボルマブ群(43.7%)の方が顕著に高かった。

主著者でスローンケタリング記念がんセンター(ニューヨーク州ニューヨーク)メラノーマ・免疫療法学部門長のJedd Wolchok医学博士は、「この2剤併用で当初観察された有効性が、この大規模第3相試験でも支持され、大変勇気づけられました。さらに、われわれの試験では、併用療法は、ある特定の腫瘍マーカーをもつ患者で最大となりましたが、そうでない患者では、ニボルマブ単独療法と同程度であることが示されました。これは、どの治療が患者にとって正しいのか、医師に重要な判断材料を与える一助となるでしょう」と述べている。

ニボルマブおよびイピリムマブは、いずれもモノクローナル抗体だが、それぞれ異なる免疫チェックポイント(ニボルマブはPD-1、イピリムマブはCTLA-4)を阻害する。両剤とも、一般的に免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれ、がんを攻撃するために必要な免疫機能を高める性質をもつ。

先行研究では、免疫チェックポイント阻害薬によって、メラノーマ患者および肺がん患者の生存が改善される可能性が示唆されている。イピリムマブとニボルマブはいずれも、切除不能(外科的な切除が不可能)あるいは転移性(進行性)で他の薬剤に反応しなくなったメラノーマを対象とした単剤療法の適用でFDAの承認を受けている。

この試験では、治療歴のない進行性メラノーマ患者945人をイピリムマブ単独療法群、ニボルマブ単独療法群、イピリムマブ/ニボルマブ併用療法群のいずれかに無作為に割り付けた。少なくとも9カ月間の追跡調査後の無増悪生存期間中央値は、イピリムマブ群で2.9カ月、ニボルマブ群で6.9カ月、併用群で11.5カ月となった。併用群とイピリムマブ群、ニボルマブ群とイピリムマブ群の間には、それぞれ統計的な有意差がみられた。

奏効率は、併用群で57.6%、ニボルマブ群で43.7%、イピリムマブ群で19%であった。腫瘍量減少率(奏効の深さ)の平均は、併用群で52%、ニボルマブ群で34%であったのに対し、イピリムマブ群では腫瘍量は5%増加した。

事前の予想どおり、薬剤による重篤な副作用の発現率は、併用群が最も高く(55%)、併用群の36%が副作用のため治療を中止した。Wolchok医師によれば、先行研究では、早期に免疫療法を中止した多くの患者がなおも順調であることが示されているという。

こうした長期にわたるベネフィットについては、腫瘍を直接標的とするのではなく、免疫系の活性化によって作用するという免疫療法の機序によって説明される。免疫系を完全に活性化するために必要な治療期間については、まだ明らかにされておらず、また、最短治療期間はおそらく患者によって異なるであろう。

この試験では、生活の質(QOL)に関するデータも収集されており、分析結果は今後報告される予定である。


PD-L1発現レベルが最適治療の定義に有用な可能性

免疫細胞上にあるタンパク質PD-1は、PD-L1と呼ばれる他のタンパク質と結合する。このPD-L1は、ときおり腫瘍細胞の表面上にみられる。先行研究において、PD-L1が検出可能なレベルまで腫瘍上に発現している患者(PD-L1陽性腫瘍)では、一般的にPD-1療法の奏効率が高いことが示されている。

この試験では、PD-L1陽性腫瘍に対する有効性について、ニボルマブ単独療法とニボルマブ/イピリムマブ併用療法とで同程度だと見受けられる。しかし、PD-L1陰性腫瘍に対しては、併用療法のほうが、ニボルマブ単独療法よりも有意に有益であった。

本試験は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社から助成を受けた。

翻訳担当者 前田 愛美

監修 廣田 裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。