スタチン系薬剤はアンドロゲン除去療法中の前立腺がん患者のがん進行を遅らせる可能性

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前立腺がん治療のためアンドロゲン除去療法を開始した場合、コレステロールを低下させるスタチンを服用している男性は服用していない男性よりも疾患が制御されている期間が長いことが、ダナファーバーがん研究所研究者が実施した臨床試験によって示された。

JAMA Oncology誌電子版に掲載された試験で、研究者らは、アンドロゲン除去療法(ADT)開始時にスタチンを服用している男性の疾患悪化までの中央値は27.5カ月、スタチンを服用していなかった男性の中央値は17.4カ月であったと報告した。本試験には926人の患者が参加し、6年間で70%の患者に疾患の進行がみられた。

ダナファーバーがん研究所、Lank Center for Genitourinary Oncology腫瘍内科医である論文筆頭著者Lauren Harshman医師は以下のように述べた。「疾患進行までの期間が中央値で10カ月長くなったことから、スタチンは前立腺がんに対する現行治療法への有益な追加治療であると示唆されます。今回の結果は、スタチンの使用が前立腺がんの転帰改善に関わることを示す複数の従前の疫学的研究によって裏づけられますが、検証が必要です」。

本試験は、スタチンがアンドロゲン除去療法を受けている患者の前立腺がんの成長を遅延することを示唆する実験室研究から展開されたものである。アンドロゲン除去療法は体内のアンドロゲンを減少させ、同ホルモンによる前立腺がん細胞の成長促進を阻害する。長年、同治療は前立腺から転移したホルモン感受性前立腺がん患者への初回治療となっている。

実験室段階では、さまざまな薬剤とホルモンを細胞に取り込むSLCO2B1というタンパク質に注目した。細胞に取り込まれるもののひとつがデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)である。DHEASは前立腺がん細胞の成長を刺激するホルモンであるテストステロンの前駆体である。スタチンもまたSLCO2B1によって細胞に取り込まれる。

研究者らは、実験室で培養した前立腺がん細胞株へのDHEAS取り込みをスタチンが阻害することを一連の実験で示した。スタチンは前立腺腫瘍内部で使えるSLCO2B1を独占することによって、DHEASのがん細胞への侵入を実質的に遮断する。本臨床試験の結果は、この方法が患者においても有効である可能性を示唆する。

Lank Center for Genitourinary Oncologyセンター長であり、ダナファーバーがん研究所固形腫瘍学チーフである論文統括著者Philip Kantoff医師は以下のように述べた。「われわれは、腫瘍が利用できるアンドロゲンの量を減らし、前立腺がん患者の転帰を改善することによって、スタチンが前立腺がんに作用する妥当なメカニズムを提示しました。今回の所見を検証するため、さらなる研究が必要です」。

本論文の共著者は以下のとおりである。
Xiaodong Wang, PhD, Mari Nakabayashi, MD, Wanling Xie, MS, Loana Valenca, MD, Lillian Werner, MS, Aaron Kantoff, Christopher Sweeney, MBBS, Mark Pomerantz, MD, and Gwo-Shu Mary Lee, PhD, of Dana-Farber;

Yongjiang Yu, PhD, of Dana-Farber and Xinhua Hospital, Shanghai, China; and Lorelei Mucci, ScD, of Harvard School of Public Health.

本研究はダナファーバーがん研究所の前立腺がん優秀研究特別プログラム(SPORE)と米国防省の資金援助を受けている(W81XWH-14-1-0515)。


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翻訳担当者 松木宏樹

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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