45歳時に特定の脱毛症がみられる男性は高悪性度前立腺癌のリスクが増大

ニュースダイジェストの内容:

・45歳の時、特定の脱毛症であった男性は、そうではなかった男性と比べて後に高悪性度前立腺癌を発症するリスクが40%増大するという趣旨の研究報告(2014年9月15日付Journal of Clinical Oncology誌電子版で発表)
・米国臨床腫瘍学会(ASCO)専門医Charles Ryan医師による説明引用
・ASCOの癌情報ウェブサイトCancer. Netの追加情報リンク 

前立腺、肺、大腸および卵巣(PLCO)の前方視的癌検診試験(the prospective Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian (PLCO) Cancer Screening trial)に基づく新たな大規模コホート解析から、45歳時に前頭部および頭頂部に脱毛がみられる中等度の脱毛症の男性は、脱毛のない男性と比較して、その後の人生で高悪性度前立腺癌(通常、非高悪性度前立腺癌より腫瘍増殖速度が速く、予後も不良となると考えられる)を発症するリスクが40%高いことが示唆された。他のパターンの脱毛と前立腺癌の間での有意な関連性はみられなかった。9月15日にJournal of Clinical Oncology誌に発表された今回の研究は、以前の研究で示唆されていた男性型脱毛と前立腺癌の関連性を裏づけるものとなった。

「今回の研究で、45歳の時点で前頭部脱毛および頭頂部の中等度の毛髪菲薄(ひはく)化という非常に特定された脱毛パターンが認められる男性でのみ高悪性度前立腺癌のリスクが増大するということがわかりました。しかし、脱毛のパターンが異なる男性ではどんな病態の前立腺癌のリスクも増大していません」と本研究の上級著者で米国国立癌研究所(メリーランド州ベセスダ)の癌疫学・遺伝学部門の研究員Michael B. Cook博士は述べた。「今回のデータから、脱毛の発現と高悪性度前立腺癌が関連している可能性は極めて高いことが判明しましたが、これらの知見を臨床で応用するにはまだかなりの時間が必要です」。 

前立腺癌は男性で2番目に多くみられる癌である。新たなエビデンスによって、前立腺癌と男性型脱毛(進行性脱毛で独特なパターンのもの)は双方とも男性ホルモン(アンドロゲン)濃度およびアンドロゲン受容体発現レベルの上昇と関係することが示唆され、脱毛症と前立腺癌の発症および進行は生物学的に関連づけられるという考え方が支持されている。

研究者らは、米国のPLCOの癌検診試験登録時55~74歳であった男性39070人のコホートで前立腺癌に関連する男性型脱毛を解析した。対象者に45歳当時の脱毛の状態を思い起こしてもらうため、挿絵入り資料を用いた質問調査を実施した。

追跡調査期間中に1138人が前立腺癌と診断され、その内51%は高悪性度であった(グリーソンスコア7以上、病期3または4、もしくは死亡原因となった前立腺癌)。前立腺癌診断時の平均年齢は72歳であった。

前頭部脱毛および中等度の頭頂部の脱毛パターンがあった男性は、脱毛のなかった男性と比較して高悪性度前立腺癌を発症する確率が40%高かった。男性型脱毛と非高悪性度前立腺癌リスクとの関連性は認められなかった。

Cook博士によれば、これらの知見がこれからの研究で検証されれば、高悪性度前立腺癌リスクの高い男性を特定するのに脱毛症の臨床評価は役に立つ可能性があるという。Cook博士の研究チームは現在、男性型脱毛症と前立腺癌の発症および死亡リスクとの因果関係を検証するため2件の追加コホート解析研究を実施中である。追加研究の内の1件では、男性型脱毛症の試験開始時の時皮膚学的評価を取り入れている。このことにより、今回の研究で採用された思い起こしに基づく方法よりも信頼性は高まる可能性がある。

本研究は米国国立癌研究所、米国国立衛生研究所のintramural program(機構内研究プログラム)の支援を受けた。

ASCOの見解

Charles Ryan医師 ASCO専門医

「脱毛と前立腺癌の関連づけについて、これまでの研究では確定的な結論が出ていませんでしたが、今回の大規模研究で、前立腺癌のリスクが高いことと脱毛症は有意に関連していることが示唆されました。そのため脱毛症の男性に対してはより綿密な経過観察が必要になると考えられます。ただし、脱毛症を前立腺癌検診の推奨項目として検討できるようになるにはもっと多くのエビデンスを必要とします」。

翻訳担当者 緒方登志文

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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