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前立腺癌に対するホルモン療法

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前立腺癌に対するホルモン療法

NCIファクトシート  原文日付:2013年12月12日

 

キーポイント

  • 前立腺癌に対するホルモン療法は、男性ホルモン(アンドロゲン)の産生を抑制、アンドロゲンの作用を阻害、あるいはその両方を行います。この治療法では、アンドロゲンにより活性化される前立腺癌細胞の増殖を抑制することができます。アンドロゲン抑制療法やアンドロゲン除去療法とも称されます。
  • 前立腺癌に対するホルモン療法には、薬物投与、手術、または女性ホルモン(エストロゲン)投与があります。
  • 前立腺癌に対するホルモン療法は、再発リスクが高い早期前立腺癌患者、または前立腺癌が進行、再発、もしくは転移した患者に対して、放射線治療と併用されます。また、根治的前立腺摘除術の際に切除されたリンパ節に前立腺癌細胞が認められた患者に対しても使用されます。

 

 1.男性ホルモンとはどのようなものでしょうか?

 ホルモンは、体内のによって産生され、化学シグナルとして作用する物質です。しばしば血流を介して体内をめぐり、さまざまな場所の細胞や組織にたどりついて、その活動に作用します。

 アンドロゲン(男性ホルモン)は、男性性徴の発現・維持を制御するホルモンです。テストステロンジヒドロテストステロンDHT)は、男性で最も多いアンドロゲンです。ほとんどのテストステロンは精巣で産生されますが、少量が副腎で産生されます。前立腺癌細胞もテストステロンを産生することができます。

 

2.ホルモンはどのようにして前立腺癌の増殖を促しますか?

 アンドロゲンは、精液の産生を促す男性生殖器系である前立腺の正常な成長と機能に欠かせないものです。アンドロゲンはまた、前立腺癌の増殖にも欠かせません。アンドロゲンは前立腺細胞内で発現されるタンパク質1)であるアンドロゲン受容体に結合し活性化させることで、前立腺の正常細胞と細胞両方の増殖を促します。アンドロゲン受容体は活性化されると、前立腺細胞の増殖を引き起こす特定の遺伝子の発現を促します(2)。

 前立腺癌の発生早期では、比較的高濃度のアンドロゲンが増殖に必要です。このような前立腺癌は、アンドロゲン濃度を低下させる治療やアンドロゲン活性を阻害する治療によってその増殖が抑制されることから、アンドロゲン依存性またはアンドロゲン感受性と称されます。

 ほとんどの前立腺癌は最終的には「去勢抵抗性」になります。それは、体内のアンドロゲン濃度が極度に低いか検出されないレベルであっても、前立腺癌が増殖し続けることを意味します(質問5を参照)。

 

3.どのような種類のホルモン療法が前立腺癌治療に使用されますか?

 前立腺癌に対するホルモン療法アンドロゲン抑制療法アンドロゲン除去療法とも称されます)は、アンドロゲンの産生やその作用を抑制することができます(3)。現在使用されている治療法によって以下のことが可能です。

  • 精巣でのアンドロゲン産生の抑制。
  • 体内でのアンドロゲンの作用の阻害。
  • 体内でのアンドロゲン産生の阻害。

 

 図.男性におけるアンドロゲン産生。テストステロン産生は、黄体形成ホルモン(luteinizing hormoneLH)と黄体形成ホルモン放出ホルモン(luteinizing hormone-releasing hormoneLHRH)により調節されていることを示しています。視床下部はLHRHを分泌し、LHRHは下垂体からのLHの分泌を促します。LHは精巣内の特定の細胞に作用し、体内のテストステロンのほとんどの産生を促します。その他のアンドロゲンのほとんどは、副腎により産生されます。アンドロゲンは前立腺細胞により取り込まれ、そこで直接アンドロゲン受容体に結合するか、テストステロンよりも強いアンドロゲン受容体への親和性をもつジヒドロテストステロン(dihydrotestosteroneDHT)に変換されます。

 

精巣でのアンドロゲン産生を抑制する治療法は、前立腺癌に対して最も一般的に使用されるホルモン療法です。これらのホルモン療法は以下の通りです。 

  • 精巣摘除術:精巣を1つあるいは両方摘出する外科手術。 精巣を摘出することで、 血中テストステロン濃度を90%~95%減少させることができます(4)。この治療法は外科的去勢術と称されますが、永続的で不可逆的です。被膜下精巣摘除術と称される精巣摘除術では、精巣全体ではなく、アンドロゲンを産生する精巣内の組織のみを摘出します。 
  • 黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト:黄体形成ホルモンの分泌を抑制。LHRHアゴニストLHRHアナログと称されることもありますが、LHRHと構造が類似している合成タンパク質で、下垂体内のLHRH受容体に結合します。(LHRHはゴナドトロピン放出ホルモン(gonadotropin-releasing hormoneGnRH)としても知られているので、LHRHアゴニストはGnRHアゴニストとも称されます。)

 

通常、体内のアンドロゲン濃度が低いときは、LHRHが下垂体を刺激して黄体形成ホルモン産生を促し、次に黄体形成ホルモンが精巣でのアンドロゲン産生を促します。LHRHアゴニストは、体内のLHRHと同様に、最初は黄体形成ホルモン産生を促しますが、そのLHRHアゴニストの高レベル状態が続くと、実際には下垂体の黄体形成ホルモン産生が停止することになります。その結果、テストステロン産生が抑制されます。LHRHアゴニストによる治療は、体内のアンドロゲン濃度を外科的去勢術(精巣摘除術)と同程度に低下させる薬剤が使用されるため、内科的去勢術(化学的去勢術と称されることもあります)と称されます。しかし、精巣摘除術と異なり、アンドロゲン産生に対するこれらの薬剤の効果は可逆的です。治療が中断されると、アンドロゲン産生は通常回復します。 

LHRHアゴニストは皮下に注射あるいは皮下に埋め込まれます。米国で前立腺癌治療薬として承認されているLHRHアゴニストには、リュープロレリン ゴセレリン、およびブセレリンがあります。 

前立腺癌患者が初めてLHRHアゴニストを投与される際、「フレアーアップ(テストステロン・フレア)現象」と称される症状が生じることがあります。このようにテストステロン濃度が一時的に上昇するのは、LHRHアゴニストにより下垂体による黄体形成ホルモンの分泌が抑制される前に、一時的に亢進させるためです。フレアーアップ現象により、特に進行前立腺癌患者に特有の問題である臨床症状(例.骨痛、尿管膀胱出口の閉塞脊髄圧迫)が悪化することがあります。このテストステロン濃度上昇は通常、治療最初の数週間にLHRHアゴニスト投与と共に抗アンドロゲン療法(以下を参照)という別種のホルモン療法を行うことで対処されます。

 

  • LHRHアンタゴニスト:別種の内科的去勢術。LHRHアンタゴニストGnRHアンタゴニストとも称される)は、LHRH下垂体内のLHRH受容体と結合するのを阻害し、さらに、下垂体による黄体形成ホルモンの分泌を抑制し、体内のアンドロゲン濃度を低下させることによって作用します。LHRHアンタゴニストはLHRHアゴニストと異なり、フレアーアップ現象を引き起こしません。 

唯一のLHRHアンタゴニストであるデガレリクスは現在、米国で進行前立腺癌の治療薬として承認されています。なお、デガレリクスは注射剤です。

  

  • エストロゲン(女性の性徴の発現を促すホルモン)。 エストロゲンも精巣でのアンドロゲン産生を抑制することができますが、副作用により現在ではほとんど前立腺癌の治療に使用されません。

 

体内のアンドロゲンの作用を抑制する薬剤は以下の通りです。

 抗アンドロゲン薬:アンドロゲン受容体との結合の際に、アンドロゲンと拮抗する薬剤。 抗アンドロゲン薬は、アンドロゲン受容体との結合の際にアンドロゲンと拮抗して、前立腺癌の増殖を促すアンドロゲンの作用を抑制します。抗アンドロゲン薬はアンドロゲン産生を阻害しないため、前立腺癌治療において単剤投与は稀ですが、精巣摘除術やLHRHアゴニストと併用されます。精巣摘除術や LHRHアゴニストと併用する抗アンドロゲン薬療法は、複合アンドロゲン阻害療法、完全アンドロゲン遮断療法、または完全アンドロゲン遮断療法と称されます。

 

米国で前立腺癌治療薬として承認されている抗アンドロゲン薬には、フルタミドエンザルタミドビカルタミド、およびニルタミドがあります。いずれも経口錠剤です。

 

体内のアンドロゲン産生を抑制する薬剤は以下のとおりです。

 

副腎、前立腺癌細胞自身、および精巣でのアンドロゲン産生を抑制する薬剤。内科的去勢術も外科的去勢術も副腎や前立腺癌細胞によるアンドロゲン産生を抑制しません。副腎や前立腺癌細胞が産生するアンドロゲンの量は、少量ですが、いくつかの前立腺癌の増殖を支えるには十分な量です。

 

副腎(だけでなく精巣や前立腺癌細胞)によるアンドロゲン産生を抑制する薬剤はアンドロゲン合成阻害剤と称されますが、他の治療法と比べて大幅に体内のテストステロン濃度を低下させることができます。これらの薬剤はCYP17と称される酵素を阻害することでテストステロン産生を抑制します。CYP17精巣副腎、および前立腺癌の組織内に存在し、人体がコレステロールからテストステロンを産生する際に重要な役割を果たします。

 

アンドロゲン合成阻害剤3種は米国で承認されており、いずれも経口錠剤です。その内の2剤、トコナゾールアミノグルテチミドは前立腺癌以外の適応症に対して承認されていますが、去勢抵抗性前立腺癌に対する二次治療として使用されることがあります(質問2を参照)。3番目の薬剤、酢酸ビラテロン転移性去勢抵抗性前立腺癌治療薬として承認されています(質問5を参照)。

  

4.ホルモン療法は、どのように前立腺癌の治療に使用されますか?

 

ホルモン療法は以下に示す方法で、前立腺の治療に使用されることがあります。 

  • アジュバントホルモン療法。他の一次治療の後に、前立腺癌の再発リスクの減少を目的として実施されるホルモン療法は、アジュバントホルモン療法と称されます。中程度または高い再発リスクがある早期前立腺癌患者は、放射線治療前立腺摘除術 前立腺全体または一部を摘除する手術)の後にアジュバント療法を受けることがあります(5)。前立腺癌再発リスクの判断に使用される要因には、腫瘍のグレードグリソン・スコアにより評価)、腫瘍が周囲の組織に浸潤した範囲、および周囲のリンパ節内の腫瘍細胞の存在の有無などがあります。 前立腺摘除術の後にアジュバント療法を受けた患者では、前立腺摘除術のみを受けた患者と比べて、無再発生存率は上昇しますが、全生存率は上昇しません(5)。前立腺癌に対する体外照射の後にアジュバント療法を受けた患者では、体外照射のみを受けた患者と比べて、全生存率と無再発生存率の両者が上昇します(56)。 
  • ネオアジュバントホルモン療法。他の治療の前に実施されるホルモン療法は、ネオアジュバントホルモン療法と称されます。中程度または高い再発リスクがある早期前立腺癌患者は、放射線治療の後にホルモン療法を受けるだけでなく、しばしば放射線治療の前またはその最中にホルモン療法を受けることがあります。ホルモン療法と放射線治療を併用して受けた患者では、放射線治療のみを受けた患者と比べて、全生存率は上昇します(7)。前立腺摘除術の前に(単独または化学療法と併用で)施行されるネオアジュバントホルモン療法は生存期間の延長が示されず、標準的治療法ではありません。
     
  • ホルモン療法のみ。 ホルモン療法は、手術や放射線治療の対象でない限局性前立腺癌患者における局所症状緩和予防の目的で、単独で使用されることもあります(8)。このような前立腺癌患者には、期待余命が短い患者、局所進行性の腫瘍病期患者、他の重篤な健康状態の患者などがいます。  

放射線治療や前立腺摘除術による治療の後に前立腺癌の再発がCTMRI、または骨シンチグラフィーにより示された患者に対しては、ホルモン単独療法が標準的治療法になります。ホルモン療法は、「生化学的再発前立腺特異抗原(prostate-specific antigenPSA)濃度の急激な上昇が認められる患者、特に12カ月以内にPSA濃度が倍加する患者に対してしばしば推奨されます。しかし、PSA濃度の急激な上昇は必ずしも、前立腺癌自体の再発を意味するとは限りません。生化学的再発の症例におけるホルモン療法の適用は、幾分議論の余地があります。

 

最後に、前立腺癌と初めて診断された時に転移癌(体の他の部位に転移した癌)であった患者に対しては、ホルモン単独療法が標準的治療法になります(9)。診断時に進行癌と診断されたがまだ症状が現れていない患者が、ホルモン療法により生存期間が延長するかどうかは明らかではありません(1011)。また、ホルモン療法には相応の副作用(質問6を参照)が生じる可能性があるため、症状が出現する前にホルモン療法を受けないことを望む患者もいます。

 

前立腺癌に対するホルモン療法を使用する治療の期間は、臨床病期(体内の癌の大きさや転移)、グリソン・スコア(顕微鏡検査時での形状などに基づく前立腺癌組織の分類法)、ならびにPSA濃度に基づいて規定される患者の再発リスクによって変わります。ホルモン療法は、中程度リスク前立腺癌患者では一般に46カ月間実施されます。一方、高リスク患者では一般に23年間実施されます。

 

最初はLHRHアゴニストLHRHアンタゴニスト、または精巣摘除術を使用するホルモン療法に反応する前立腺癌の多くは、最終的にはホルモン療法に反応しなくなります。この前立腺癌は去勢抵抗性前立腺癌と称されます(質問2を参照)。去勢抵抗性前立腺癌はアンドロゲン感受性前立腺癌と比べて、増殖のために必要なアンドロゲン濃度が非常に低いレベルになっています。

 

いくつかの機序により、アンドロゲン濃度が非常に低い場合でも前立腺癌細胞が増殖できるようになる可能性があります。具体的には、細胞内のアンドロゲン受容体分子産生量の増加(これは、アンドロゲン受容体遺伝子発現量の増加または細胞1個当たりのアンドロゲン受容体遺伝子のコピー数の増加を介する)、より高活性の受容体タンパク質を作るアンドロゲン受容体遺伝子の変化、およびアンドロゲン受容体の機能制御に働くタンパク質の活性の変化などです(1213)。

 

医師は、ホルモン療法がどのくらいの期間、各患者の前立腺癌増殖を有効に抑制するかを予測することはできません。それゆえ、23カ月以上ホルモン療法を受けている患者は定期的に血中PSA 濃度の検査を受けることになります。 PSA濃度上昇は、患者の癌の再増殖が始まったことを示す可能性があります。ホルモン療法が奏効して非常に低いアンドロゲン濃度を維持しているにもかかわらずPSA濃度が上昇し続けていることは、患者の前立腺癌が現在使用されているホルモン療法に対して抵抗性を示しているということを示しています。 

 

 

5.去勢抵抗性前立腺癌に対する治療選択肢はどのようなものでしょうか?


去勢抵抗性前立腺癌に対する治療法は以下の通りです。

 

塩化ラジウム223:骨転移を有し症状を引き起こしているが、その他の臓器転移のない去勢抵抗性前立腺癌患者の治療薬として承認されている放射性医薬品。塩化ラジウム223骨転移など、骨の特定の部位に集積し、放射線を放出して癌細胞を殺傷します。 

これらの治療法を受けている去勢抵抗性前立腺癌患者は、一次ホルモン療法を受け続けて(例.LHRHアゴニスト)、テストステロン濃度上昇(一部の患者では腫瘍進行を引き起こすことがある)を回避することになります(14)。 

酢酸アビラテロンまたはエンザルタミドを投与された去勢抵抗性前立腺癌患者では、プラセボ投与患者と比べて、生存期間が延長することがランダム化臨床試験 により示されています(1517)。

 

 

6.前立腺癌に対するホルモン療法の副作用はどのようなものでしょうか?

 内科的去勢術外科的去勢術により体内でのアンドロゲン産生量は大幅に減少します。アンドロゲンは前立腺以外の他の多くの臓器により使われますので、内科的去勢術と外科的去勢術により以下の様々な副作用が生じる可能性があります(318)。

 

抗アンドロゲン薬は、下痢、乳房痛、悪心、ホットフラッシュ、性欲減退、および勃起不全を引き起こす可能性があります。抗アンドロゲン薬フルタミド障害を引き起こすことがあります。

 

副腎によるアンドロゲン産生を抑制する薬剤(アンドロゲン合成阻害剤ケトコナゾールアミノグルテチミド、および酢酸アビラテロン)は、下痢、掻痒、発疹、倦怠感、(長期使用による)勃起不全、および潜在的に肝障害を引き起こす可能性があります。

 

エストロゲンにより他の種類のホルモン療法で認められる骨密度低下は回避されますが、心臓発作や脳卒中などの心血管系副作用リスクが増加します。エストロゲンはこれらの副作用により、現在ではほとんど前立腺癌に対するホルモン療法に使用されません。

 

放射線治療の後にアジュバントホルモン療法を受けることで、放射線治療の有害反応の一部、特に性的機能への副作用が強まり、また、体力も低下します(19)。前立腺癌患者がホルモン療法を長期間受けるにつれて、その副作用の多くもまた強まります(18)。

  

7.どのようにすれば、前立腺癌に対するホルモン療法の副作用を軽減できるでしょうか? 

長期にわたるホルモン療法により骨量が減少する患者は、骨量減少を遅らせるまたは骨量を回復させる薬剤が処方されることがあります。ゾレドロン酸製剤とアレンドロン酸製剤(これらはビスホスホネート製剤と称される薬剤に属しています)は、ホルモン療法を受けている患者の密度を増加させます(2021)。新薬デノスマブはビスホスホネート製剤と異なる機序で骨量を増加させますが(22)、前立腺癌に対するホルモン療法を受けている患者の治療薬として2011年に承認されています。しかし、ビスホスホネート製剤とデノスマブは、稀とはいえ重篤な副作用である顎骨壊死を引き起こすことがあります(14)。

 運動により、骨量減少、筋肉量の減少、体重増加、倦怠感、およびインスリン抵抗性などのホルモン療法の副作用の一部が軽減することがあります(1423)。数件の臨床試験で、運動が前立腺癌に対するホルモン療法の副作用からの回復や副作用の予防のための効果的な方法になるか否かが研究されています。

 前立腺癌のホルモン療法による、性的機能に関わる副作用は対処が最も困難なものの1つです。クエン酸シルデナフィル(バイアグラ®)などの勃起不全治療薬は性欲減退に作用しないため、通常ホルモン療法を受けている患者に対して有効ではありません。

 癌治療における性的機能への副作用に関する詳細は、Sexuality and Reproductive Issues(日本語訳:外部リンク 性的能力(セクシャリティー)および生殖の問題(PDQ®)に関するNCIPDQによる概要や小冊子『“前を向いてシリーズ”がん治療後の生活』をご覧下さい。

 

 ホルモン療法における他の副作用に対する支持療法に関する詳細は、以下のPDQによる概要をご覧ください。

 

 ほとんどの患者は可逆的なホルモン療法を中断すると、アンドロゲン濃度の低下が引き起こす性的機能や情緒面への副作用は最終的には消失します。しかし、長期間ホルモン療法を受けていると、これらの副作用は完全に消失しないことがあります。ホルモン療法の中断後でも、骨量減少などの時間と共に生じた一部の身体的変化は、残存することがあります。

 患者は市販のハーブ系薬剤などを含め、どんな薬剤を服用するときも必ず、担当医に確実に伝えてください。一部のハーブ系薬剤は体内の薬物代謝酵素との相互作用を起こし、ホルモン療法に対して有害な影響を与える可能性があります(24)。

  

8.可逆的なホルモン療法が効果を示すためには、それを継続的に受ける必要がありますか?

 研究者らは、間欠的アンドロゲン除去療法と称される治療法が前立腺癌に対するホルモン療法の効果を改善するか、即ち、ホルモン抵抗性の発生を遅延できるかを研究しています。間欠的アンドロゲン除去療法では、ホルモン療法用薬剤は投与期間の間に休薬期間が設けられ、連続投与されずに周期的に投与されます。間欠的アンドロゲン除去療法の更なる利益の可能性は、ホルモン療法の副作用から一時的に回復することで患者の生活の質が改善する可能性があることです。

 

間欠的アンドロゲン除去療法と連続的アンドロゲン除去療法を比較する2件の臨床試験から、間欠的アンドロゲン除去療法により、性的機能への副作用などのホルモン療法の副作用の一部が軽減されることがわかりました。しかし、これらの臨床試験からは、間欠的アンドロゲン除去療法による全生存期間の延長は示されませんでした(2526

  

9.現在臨床試験では、前立腺癌に対するホルモン療法がどのように研究されていますか?

 臨床試験の対象になっている治療法は、どの病期前立腺癌患者に対しても治療選択肢になりえます。ホルモン療法の最適な使用法に関しては、なお多くの疑問が解明されなければいけません。これには、ホルモン療法を小線源療法照射治療の一種)に追加することが早期前立腺癌患者の生存期間を延長するかどうかが含まれます。他の疑問として、新規強化ホルモン療法が、手術放射線治療を受けた高リスク前立腺癌患者の転帰を改善するかが含まれます。研究者らは、去勢抵抗性前立腺癌に対する新規ホルモン療法も研究しています。これにはTAK-700VT-464が含まれますが(27)、いずれも作用機序は酢酸アビラテロンと同様です。

 

もう1つの疑問は、ホルモン感受性転移性前立腺癌患者に対する初期治療として、ホルモン療法に化学療法を併用することの潜在的な有用性です。現在は、前立腺癌がホルモン療法を受けている状態で進行する(すなわち、ホルモン療法抵抗性になる)まで、化学療法は使用されません。標準ホルモン療法開始時に化学療法剤ドセタキセル投与を受けたホルモン感受性転移性前立腺癌患者は、ホルモン療法のみを受けた患者と比べて、全生存期間が延長することが2つの癌研究共同グループ―米国東部協同腫瘍学グループ(ECOG)と米国放射線学会画像診断ネットワーク(the American College of Radiology Imaging NetworkACRIN)―が実施した米国国立衛生研究所(NIH)助成の臨床試験の初期報告により示唆されています。転移範囲が最大の患者はドセタキセルの早期追加投与により最大の利益を得ることがこの報告により示唆されました。転移範囲が狭い患者におけるこの治療法の効果を解明するため追跡解析が行われる予定です。

 

臨床試験に関する情報はNCIのサイトをご覧下さい。NCIがん情報サービスCIS)は、臨床試験に関する情報も提供しています。また、臨床試験の検索にも有用です

  

10.前立腺癌に対して使用される薬剤に関する詳細はどこで見つけることができますか?

 NCI薬剤情報概要は、前立腺癌などのや癌関連疾患の治療薬としてFDAに承認されている一部の薬剤に関する消費者向けの情報を提供しています。各薬剤に関して取り上げられている話題には、基本情報、研究結果、副作用の可能性、FDA 承認情報、および現行の 臨床試験が含まれます。

 

 

 主要参考文献

 

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[PubMed Abstract]

 関連情報 

 

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渡邊岳 翻訳
榎本裕 (泌尿器科/三井記念病院)監修
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翻訳渡邊岳

監修榎本裕 (泌尿器科/三井記念病院)

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