BRAF-600E/K変異型転移性メラノーマ治療にダブラフェニブが有望

BRAF-600E/K変異型転移性メラノーマ治療にダブラフェニブが有望

キャンサーコンサルタンツ

BRAF-V600Eに変異が見られる転移性メラノーマ(皮膚悪性黒色腫)の患者において、標的治療薬ダブラフェニブ[dabrafenib](Tafinlar)による高い奏効率が認められたという試験結果がJournal of Clinical Oncology誌に発表された。

毎年新たに皮膚癌を診断される人々は100万人を超えるが、そのうち約68,000人にメラノーマが認められる。米国では、毎年8000人を超える人々が、メラノーマが原因で死亡する。メラノーマは、他の皮膚癌よりも、身体の他の部位へ広がり(転移)やすい危険な疾患である。

BRAF遺伝子は細胞増殖に関与することで知られており、BRAF変異は数種の癌で頻繁にみられる。メラノーマの約半数でV600E変異と呼ばれる特異的なBRAF変異を伴う。この変異によってBRAFタンパク質に異常を生じ癌の増殖が促進される。V600K変異と呼ばれる別のBRAF変異を伴うメラノーマも存在する。

標的治療薬とは、癌細胞の増殖または生存に関与する経路を特異的に阻害する抗癌剤である。標的治療薬により、これまで以上に個別化された効果的な癌治療が可能になる。ダブラフェニブはBRAF変異を標的とした、キナーゼ阻害薬と呼ばれる標的治療薬である。

研究者らは、転移性メラノーマ患者のうちBRAF-V600E変異が認められる患者76人およびBRAF-V600K変異が認められる患者16人を対象に、多施設共同単一群臨床試験を実施した。患者全員に、疾患が進行するか、死亡または許容できない毒性が発生するまでダブラフェニブを経口投与(150mgを1日2回)した。主要エンドポイントはBRAF-V600E変異患者の全奏効率とした。また本試験では腫瘍特異的な、血中に循環している無細胞DNA(cfDNA)の予後予測因子としての可能性についても検討した。

BRAF-V600E変異患者の59%で奏効が確認され、7%で著効が認められた。この群の無増悪生存期間の中央値は6.3カ月、全生存期間の中央値は13.1カ月であった。

BRAF-V600K変異患者の13%で部分奏効が確認された。本群の無増悪生存期間の中央値は4.5カ月、全生存期間の中央値は12.9カ月であった。

研究者らは、BRAF-V600E変異患者とBRAF-V600K変異患者の奏効率の違いについて明確な理由を示すことはできなかった。

cfDNAアッセイの活用により、奏効率および無増悪生存率が低下するにつれ、BRAF-V600E変異の割合のベースラインが高くなることが明らかになった。

最も多く見られた有害事象は、関節痛(33%)、角質増殖(27%)、発熱(24%)であった。全体として、患者の27%で重篤な有害事象が発現し、10%に扁平上皮癌が見られた。

研究者らは、BRAF-V600E/K変異型転移性メラノーマ患者におけるダブラフェニブの忍容性および臨床作用は良好であったと結論付けた。さらに、cfDNAは今後の研究において、予後判定、奏効率判定の有用な指標となる可能性があることを指摘した。

参考文献:
Ascierto PA. Minor D. Ribas A. et al. Phase II trial(BREAK-2) of the BRAF inhibitor dabrafenib (GSK2118436) in patients with metastatic melanoma, Journa of clinical Oncology. Published early oneline August 5, 2013. dol: 10.1200/JCO. 2013.49.8691


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翻訳担当者 緒方 登志文

監修 峯野 知子(分子薬化学/高崎健康福祉大学)

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