パゾパニブにより進行腎臓癌患者のQOLが改善

ダナファーバーがん研究所

転移性腎臓癌において承認されている2つの経口分子標的薬は、同等に良好な効果を示しているが、今回、ダナファーバー癌研究所の研究者による国際的な臨床試験の結果により、一方の薬剤のほうがより忍容性が優れていることが示された。

パゾパニブ(ヴォトリエント)およびスニチニブ(スーテント)は、両薬剤とも進行腎細胞癌のファーストライン治療として最近承認され、癌の進行を遅らせるという点で同等の利益をもたらした。しかしながら、安全性プロフィールと多数のQOL評価結果によりパゾパニブは優れていると考えられ、転移性腎臓癌の標準治療として確立されてきている。

試験結果は8月22日のNew England Journal of Medicine誌に掲載されている。

「効果が同等な薬剤の場合、忍容性が非常に重要な要素となります。」とダナファーバー/ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(DF/BWCC)腎臓癌研究所の理事長であるToni Choueiri医師は述べている。「もしも患者が同じ生存期間を生きるのであれば、当然認容性がよりよい薬剤を選ぶでしょう。」

Choueiri医師はハーバード大学医学大学院の内科准教授でもあり、14カ国の多施設行われた1,100人の転移性腎臓癌治療の第3相試験の上席著者である。筆頭著者はメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターのRobert Motzer医師である。

試験はパゾパニブの製造会社であるグラクソスミスクライン株式会社の主催で行われ、いくつかの生物学的経路を阻害することにより癌細胞の増殖を妨げる、2つのチロシンキナーゼ阻害薬、パゾパニブとスニチニブの有効性、安全性および忍容性を比較した。両薬剤とも多数の細胞表面のチロシンキナーゼ受容体を標的としており、それには癌細胞が腫瘍の成長を促すための新生血管を作るために利用する蛋白である、血管内皮増殖因子(VEGF)の受容体も含まれている。

米国食品医薬品局は、従来の化学療法に抵抗性を示し、難治である進行腎臓癌治療薬として、スニチニブを2006年に、パゾパニブを2009年に承認している。これらの薬剤はすでにインターフェロンおよびプラセボに比較して、無増悪生存期間(PFS)を改善することが報告されている。今回の試験は薬剤同士を直接比較させる試験である。

癌が進行する前の期間の中央値は両群とも同等であった(パゾパニブ8.4カ月、スニチニブ9.5カ月)。全生存期間の中央値も同等でありパゾパニブ服用患者は28.4カ月であり、スニチニブは29.3カ月であった。

パゾパニブ投与患者は肝酵素の異常値発現率が高く、何人かは薬剤の投与を中止した。しかし、パゾパニブ投与患者は、血液毒性、手や足の痛み、口内炎、甲状腺機能低下、悪心、疲労の頻度が低かった。

一番重要な点は、パゾパニブはQOL14項目中11項目においてスニチニブより優れていた。さらに、パゾパニブ患者はプロバイダーが提供している電話相談にかける件数が少なく、緊急治療室を訪れる件数も少なかった–コストベネフィット的に影響をあたえるため、このことは重要であると研究者はいっている。

この試験はグラクソスミスクライン株式会社から研究助成を受けた。

その他の共著者は以下の通りである。

Baylor Sammons Cancer Center/Texas Oncology, Dallas; Robert H. Lurie Comprehensive Cancer Center, Chicago; Florida Cancer Specialists, Fort Myers, Fla.; University of Manchester and The Christie Hospital, NHS Foundation Trust, Manchester, UK; Peking University Cancer Hospital, Beijing; Mount Vernon Hospital, Middlesex, UK; University of Munich; University of Western Sydney School of Medicine, Australia; Sylvester Cancer Center, Miami; The Royal Free Hospital Clinical Oncology, London; Addenbrooke’s Hospital, Cambridge, UK; Peking University First Hospital, Beijing; Institute of Cancer Sciences University of Glasgow; Kinki University Faculty of Medicine, Osaka, Japan; IRCCS Istituto Scientifico Romagnolo per lo Studio e la Cura dei Tumori, Meldola, Italy; Karolinska Institutet, Karolinska University Hospital, Stockholm; Cancer Hospital, CAMS & PUMC, Beijing; San Camillo and Forlanini Hospitals, Rome; グラクソスミスクライン株式会社

翻訳担当者 古屋千恵

監修 野長瀬祥兼 (腫瘍内科/近畿大学付属病院)

原文掲載日 

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