前立腺癌に対する外科手術および放射線療法は同様の機能的転帰をもたらす

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New England Journal of Medicine誌に掲載された試験の結果によると、限局性前立腺癌の男性患者は、外科手術または放射線療法のいずれを選択したかにかかわらず、長期的には性機能、排尿および排便機能が低下することが分かった。

米国において、毎年192,000人以上の男性が新たに前立腺癌の診断を受けており、毎年27,000人以上が前立腺癌により死亡している。前立腺癌は典型的に加齢による疾患である。前立腺癌は徴候が認められないまま、長期間にわたり検出できないままである可能性がある。実際、前立腺癌の男性患者のほとんどが、前立腺癌以外の原因で死亡している。男性の約2割が生涯の間に前立腺癌を発症するとされるが、実際に前立腺癌が原因で死亡する者はわずか3%とされる。

積極的な治療が治療を延期することに比べて生存期間を延長させることが明確に立証されていないことから、早期前立腺癌の治療については賛否両論がある。さらに、治療によって、勃起不全や尿失禁といった持続的な副作用をもたらす可能性がある。一部の男性患者は、監視療法または経過観察と呼ばれる、より保存的なアプローチを選択する。これは、症状の発現または癌の増悪の徴候、あるいはその両方がみられるまで治療を控えるというものである。このようなアプローチをとることにより、一部の男性患者は必要性の無い治療と長期間に及ぶ副作用のリスクを避けることができる。

これまでの研究によって、短期および中期的には、外科手術と放射線療法との間で機能的転帰に違いがあることが明らかにされている。一方、長期の時点での機能的転帰については、限局性前立腺癌の治療法として最も一般的とされる外科手術と放射線療法との間で違いがあるかどうかあまり明らかにされていない。

前立腺癌転帰試験(PCOS)は、1994年および1995年に新たに前立腺癌の診断を受けた男性を対象とする集団ベースのコホート研究である。本試験の対象男性の診断時の年齢は55~74歳であり、15年間追跡調査を行った。最終解析時には、前立腺癌の診断を受けてから12カ月以内に外科手術を受けた患者(1,164人)と、放射線療法を受けた患者(491人)の計1,655人の男性患者が含まれていた。機能の状態は、ベースライン、診断後2年、5年、15年の時点で評価した。

試験結果によると、外科手術を受けた患者は、放射線療法を受けた患者に比べて、2年および5年の時点において、尿失禁および勃起不全が起こりやすいことが分かった。一方、15年の時点では、排尿および性機能のいずれについても両方の治療群間に有意差がみられないことが分かった。同様に、放射線療法を受けた患者は、外科手術を受けた患者に比べて、2年後および5年後の時点において、排便障害が起こりやすいことが分かった。一方、15年の時点では、両方の治療群間に有意差がみられないことが分かった。

研究者らは、前立腺癌の外科手術を受けた男性患者と、放射線療法を受けた男性患者とで、15年の時点で、疾患特異的な機能的転帰に有意な相対差はみられなかったと結論付けた。一方、限局性前立腺癌の治療を受けた男性患者は一般的に、15年の追跡期間中に、すべての機能評価項目において低下がみられた。このような低下が加齢によるものか、前立腺癌に対する治療によるものか、または前立腺癌自体と関係があるのかどうかについては明らかになっていない。限局性前立腺癌治療後に機能低下がみられたことで、監視療法を有効な「治療」選択肢として考えることが重要であることが示唆された。

参考文献:
Resnick MJ, Koyama T, Fan KH, et al. Long-term functional outcomes after treatment for localized prostate cancer. New England Journal of Medicine. 2013; 368:436-445.


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翻訳担当者 谷口 淳

監修 榎本 裕(泌尿器科/東京大学医学部付属病院)

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