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陽子線治療は前立腺癌患者のQOLを下げない/MDアンダーソンがんセンター

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陽子線治療は前立腺癌患者のQOLを下げない/MDアンダーソンがんセンター

MDアンダーソン主導の2件の研究結果から患者の排尿および排便機能は保護されると結論
MDアンダーソンがんセンター
2012年10月29日

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の2件の研究結果から、陽子線治療は前立腺癌患者のQOL(生活の質)、とりわけ排尿や排便の機能には影響を与えないことがわかった。

両研究はともにMDアンダーソン放射線腫瘍科准教授のAndrew K. Lee医師/公衆衛生学修士が主導したもので、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)第54回年次集会のポスターセッションで発表される。

「腫瘍医として、うまく癌を制圧するという結果を求めるのも当然のことですが、患者が治療後も継続して生活の質を維持していると強く感じられるようにすることも追求します。非常に私的かつ患者個人の主観に関わる可能性はありますが」。Lee氏はこのように述べた。

「研究にあたって、前立腺癌患者の治療後の福利に注目しました。これらの情報を医療機関側からでなく実際に治療を受けた患者本人から得たというところが重要です」とLee氏は続けた。「われわれの治療現場では、患者の疾病管理およびQOLの指標値測定結果は非常に良好でした。広い視点から多施設共同で実施した研究、およびMDアンダーソン単独で実施した研究はともにわれわれが治療現場で観察したことを実証してくれました」。

一つ目の多施設共同研究は、同様の患者群で行われたものとしては最大級のQOL研究で、前立腺癌の各ステージで陽子線治療を受けた患者1,000人以上を登録して行われた。患者は全米の陽子線治療が可能な5施設から選ばれた1施設において全員陽子線治療を受けており、ホルモン療法の有無は問わなかった。患者は治療後1年~10年以上経過していた。患者は全員Expanded Prostate Cancer Index Composite(EPIC)による検査を受けた。EPICは患者の健康関連QOLについて、前立腺癌治療後の機能や悩みなども含めて評価できるよう設計された総合的かつ検証済みのツールである。(本調査ではいくつかの生活分野における質を1~100点にスコア化するシステムを採用している。EPICスコアが高いほど機能が良好でQOLも高い。)スコアの自己申告は患者がそれぞれの医療機関の助けを借りずに自身で行った。

この前立腺患者群と、前立腺癌に罹患したことのない健康な男性112人を比較した。前立腺患者群および対照群の年齢中央値はそれぞれ65歳および64.8歳であった。

治療後の分析でLee氏らは、陽子線治療を行った前立腺癌患者における排尿および排便の総合スコアはそれぞれ100点満点中89.8点および92.7点と良好で、健康男性の89.5点および92.4点と変わらないという知見を得た。

性機能について両群を比較した場合、陽子線治療を受けた患者と健康男性では統計学的有意差があることがわかった。

「ただし、このスコアを深く分析すると、陽子線治療を受けた患者における性機能の低下は、ホルモン療法も受けている、グリソンスコアが高い、治療時点で高齢、治療後の年数がたっているなどの事実と関連していることが多いという点に注目することが重要です」と、Lee氏は述べている。

「一般的に、われわれの患者は他の放射線治療と比較してどういう状態となるのか興味を持っていますが、それより重要なのは、患者自身の通常の健康状態からどういう状態になるのかを知りたがっているということです。今回の研究はデータ量が多いので、陽子線治療を検討している患者と話し合う指針となってくれます」。

二つ目の研究はMDアンダーソンで前立腺癌の陽子線治療を行った患者のみに注目したものだ。結果は多施設共同研究と同様であった。患者は全員局所前立腺癌の治療として陽子線治療+ホルモン療法または陽子線治療単独を2006年から2009年までに受けた。

この前向き研究で、Lee氏は2種の陽子線量における患者QOLスコアを評価した。一方の集団(100人)は75.6グレイイクイバレント(GyE)を分割線量1.8GyEで受け、もう一方の集団(199人)は76GyEを分割線量2GyEで受けた。年齢中央値は両群ともに65歳であった。研究の参加者は陽子線治療を受ける前にEPIC検査を受け、治療終了後も定期に受検した。

Lee氏とMDアンダーソンの共同研究者は両群の排尿および排便機能が治療後3年でベースラインのスコアとわずかに統計学的な有意差があることを見いだした。ただし、臨床上重要な変化ではなかった。性負担感(sexual bother)を除いては各線量群にQOLの有意差はなかった。

研究者は患者に発現した毒性についても評価した。3年後におけるグレード2の尿機能副作用(Lee氏が交感神経α受容体遮断薬など何らかの医療的介入を要すると判断した事例)の累積発生率は、75.6GyE群で24.1%、76GyE群で17.6%であった。3年後におけるグレード2の直腸の副作用は各群それぞれ10%および13%であった。グレード3(追加の投薬、処置など介入を要する)副作用の発生は2人だけだった。

治療後3年の時点で陽子線治療に満足している患者の割合は両群ともに高く、91%および93.5%だった。

Lee氏らは多施設共同試験で得られた知見を他の放射線治療を受けた患者と比較したいと考えている。また、MDアンダーソンで陽子線治療を受けた患者の大規模集団に対してより長期間の追跡調査を計画している。

MDアンダーソン単独研究のLee氏以外の著者は次のとおり。
Seungtaek Choi医師、Quynh Nguyen医師、TJ Pugh医師、Benson Mathai氏、Steven Frank医師、Karen Hoffman医師、Deborah Kuban医師、Sean McGuire医師/医学博士、Mark Munsell氏。

多施設共同研究の他の著者は次のとおり。
Lawrence Levy氏、Seungtaek Choi医師、Quynh Nguyen医師(以上MDアンダーソン)、Carl Rossi医師(Scripps Proton Center)、David Bush医師、Jerry Slater医師(以上Loma Linda University Medical Center)、Nancy Mendenhall医師(フロリダ大学陽子線治療研究所)、Sameer Keole医師(Radiation Medicine Associates)、Anthony Zietman医師(マサチューセッツ総合病院)。

多施設共同試験においては、前立腺癌のアドボカシー団体であるProtonBOBからEPIC調査ツールの供与を受けた。会計申告を行った著者はいない。

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橋本 仁 訳
中村光宏(医学放射線/京都大学大学院医学研究科)監修
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原文


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