2012/08/07号◆対談「Dr. Walter Willett氏への食生活と癌に関するインタビュー」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/08/07号◆対談「Dr. Walter Willett氏への食生活と癌に関するインタビュー」

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2012/08/07号◆対談「Dr. Walter Willett氏への食生活と癌に関するインタビュー」

同号原文NCIキャンサーブレティン一覧

NCI Cancer Bulletin2012年8月7日号(Volume 9 / Number 16)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 対談◇◆◇

Dr. Walter Willett氏への食生活と癌に関するインタビュー

ハーバード公衆衛生大学院栄養学科の学科長であるDr. Walter Willett氏は、先日、メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所のキャンパスにおいて「食生活と癌:第4のパラダイム(支配的な考え方)」という題名の講演を行った。国立癌研究所の癌予防奨学金プログラムの協賛を受け、この講演を保存した映像がウェブ上で見られるようになっている。米国衛生研究所滞在中のWillett氏とNCIキャンサーブレティンとの対談が実現した。

過去40年間に食生活と癌に対する見方はどのように変化してきましたか?

私がこの分野に入った1960年代には、食品中の発癌物質を中心に考えられていました。これはバーベキューなど、高温にすることで作られる化学物質で、動物モデルや検査システムにおいてDNA変異の原因となることが証明されています。実際、この話題は完全に解決された訳ではないのですが、仮に食品中の発癌物質が人体にとって重大な問題であれば、おそらく手に入っているよりも多くの証拠が得られたでしょう。これが最初のパラダイムでした。

第2、第3のパラダイムとはどのようなものだったのでしょう?

第2のパラダイムは、食事中の脂肪が癌の主な原因であるという説です。この説についての強力な証拠は見つかっていませんが、頻繁に繰り返し唱えられたため、1980年代から1990年代においてドグマ(定説)と化していました。心臓疾患や糖尿病などの状態に関しては、食事中の脂肪の種類は非常に重要です。しかし、食事中の脂肪から得られるカロリーの割合が発癌リスクの重要な決定要因であるという仮説には、少なくとも中年以降の年代に関しては、データによる根拠がありません。

第3のパラダイムは、果物や野菜が劇的に発癌リスクを低減するというものです。しかし、予測的データが得られるにつれ、結果はこの説も支持できるものではありませんでした。これは、果物や野菜が全く利益をもたらさないという意味ではありませんが、有益性はおそらく非常に小さく、また特定の食品と特定の種類の癌に限られています。全体として、関連性を見るに至っていません。

そこで、第4のパラダイムということになったのですね。

癌の主要な原因は過度の肥満である、というのが第4のパラダイムです。このパラダイムは良好なエネルギーバランス(positive energy balance)とも呼ばれますが、あらゆる種類の研究において確かな証拠があり、広まっています。これらの知見はここ10~15年の研究でまとまってきたのですが、実はこの説を支持する証拠は1930年代の動物実験にまで遡ります。ある意味、いつもわれわれの目の前にあったという訳です。

肥満の影響と発癌リスクを説明していただけますか?

集団レベルでは、肥満に起因する癌の件数は、現在の喫煙による癌の件数とほぼ同じです。これは、部分的には、喫煙が減少し肥満が増加しているためです。集団での重要性という意味では、両者はほぼ同じです。しかし、個人のレベルでは、喫煙による発癌リスクは肥満のそれと比べ依然としてかなり高いといえます。

若い人たちを対象に肥満と癌に関するヒントを探していらっしゃるのですか?

はい。これは癌研究における新しい領域のひとつです。現在まで、私たちは人生におけるかなり短い期間、主に人々が癌を発症する時期に注目していました。しかし、多くの要因が人生のより早い時期や、さらには何世代にもわたり作用する可能性があるという疫学上のヒントが多数あるのです。

どのようなことがわかりつつありますか?

私たちは初めて、思春期の食生活と癌の発症に関してかなり詳しく把握しつつあります。看護師健康調査3では、調査時点で25~42歳の参加者から高校時代の食生活の詳細を思い出してもらい、収集しました。参加者は高校時代の食生活から長く離れていたわけではなかったので、かなり良く思い出されたデータを得ています。

それに加え、参加者の母親からも参加者を妊娠中の経験、乳児の頃の食事パターン、5歳になるまでの食生活と活動についてのデータを収集しました。ちょうどこれらの情報に関する追跡調査を始めたところです。このアプローチにより、生存期間における全貌を知ることができ、食生活と癌を包括的に研究する上で必要なことだと思っています。

もし経済的な制約がなかったとしたら、どのような研究を立ち上げられますか?

現在の研究において欠けている最も重大な要素は時間の側面です。時間とはすなわち、研究を始める時期と追跡調査期間の長さです。理想的な研究は、妊娠中(おそらくそれ以前)に始め、母親の食生活のデータを集め、そして、その後の被験者についてのデータを継続的に集めること、言い換えれば、同時出生集団の研究です。

そのような研究は現在行われていますか?

米国では癌を研究するのに十分な大きさの同時出生集団を集める試みがいくつかありましたが、莫大な予算の重圧からそれらの研究は実現しませんでした。一方で、北欧諸国では30万人以上の同時出生集団があります。次の世代の研究者が癌についての結果を分析することになるでしょう。私もこの研究に携わっていますが、自分自身で結果の一部を見ることができれば良いと思っています。

インタビュー:Edward R. Winstead

参考文献:”Energy Balance: Weight and Obesity, Physical Activity, Diet” and “Fact Sheets: Diet and Nutrition

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寺澤多恵 訳
朝井鈴佳 (獣医学・免疫学) 監修
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