2012/01/10号◆特別リポート「前立腺癌検診に生存のベネフィットはないと長期観察で示される」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/01/10号◆特別リポート「前立腺癌検診に生存のベネフィットはないと長期観察で示される」

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2012/01/10号◆特別リポート「前立腺癌検診に生存のベネフィットはないと長期観察で示される」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年1月10日号(Volume 9 / Number 1)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 特別リポート ◇◆◇

前立腺癌検診に生存のベネフィットはないと長期観察で示される

Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO:前立腺癌、肺癌、大腸癌、卵巣癌)ランダム化比較試験から得られた新たなデータでは、13年間の追跡の結果、前立腺癌特異的抗原(PSA)検査および直腸診(DRE)を受けた男性では、対照群に比べて前立腺癌の発見率は12%高かったが、同疾患による死亡率に差はなかった。年齢別、疾患別、または検査前のPSA値別のいずれのサブグループにおいても死亡率改善の根拠が示されなかった。この結果は、Journal of the National Cancer Institute誌1月6日号で発表された。

PLCO試験の研究者らが2009年に最初の前立腺検診試験の結果を発表した際にも、毎年の前立腺癌検診による前立腺癌死亡率および全死亡率へのベネフィットはないことを明らかにした。しかし一方で、前立腺癌の死亡率の差を検出するには追跡期間が短すぎたという批判が起こった。

検診の有効性を決定する際、「前立腺癌の予後は経過が非常に長く、通常われわれは10〜15年の追跡期間を設定します」と、代表著者で、ワシントン大学医学部およびセントルイスにあるバーンズユダヤ人病院のサイトマンがんセンター泌尿器外科部長であるDr. Gerald Andriole氏は説明した。

この試験の介入群で前立腺癌発症率が依然として上昇している事実は、定期的な検診が過剰診断につながる可能性を示している。つまり、検診は、いかなる症状も死亡も決して引き起こすことのない腫瘍を検出してしまうのである。「たとえ、前立腺癌検診が死亡率に及ぼす利益がわずかであったとしても、人を傷つけないのであればそれほど罪はないでしょう。しかし、ほとんどの場合、小さな癌の多くは過剰治療されるため、それを早期発見することによって必ず人を傷つけるのです」と、Andriole氏は説明した。

PLCO試験は、1993年に始まり、2001年半ばまで3万8,000人以上の男性が6年間毎年検診(最初の4年間直腸診、6年間毎年PSA検査)群に、同数の男性が通常ケアに無作為に割り付けられた。

前立腺癌検診はきわめて一般的な検査であるため、対照群の参加者の半数以上が試験外で前立腺癌検診を1回以上受けていた。これにより毎年の検診による死亡率への影響を判断することがより困難になった。しかし、「介入群の検診の内容は、試験期間を通じて対照群と比べてかなり入念である」と著者は書いている。

「介入群に対して検診を行う度にわれわれは過剰診断例を増加させてしまいます」とNCI主任研究者のDr. Philip Prorok氏は述べた。「対照群の参加者が一度も検診を受けていなかったとしたら死亡率にどのような影響があったかについては誰も確定的に述べることはできません」。

もう1つの最近の大規模試験、European Randomized Study of Screening for Prostate Cancer(欧州前立腺癌検診ランダム化比較試験)では実際、前立腺癌検診の死亡率における利益があったと報告された。その試験では、対照群での非遵守率は少なかったが、検診群および対照群で治療法が異なるなど、試験結果を歪める可能性のある他の弱点が存在していた。

PLCO試験のNCI研究者でCISNETプロジェクトのコンサルタントでもあるDr. Paul Pinsky氏によると、これら2つの試験(前立腺癌検診を扱ったこれまでで最大規模)からの相反する結果を調整するための取り組みが進行中である。NCI支援のCancer Intervention and Surveillance Modeling Network (CISNET:癌介入・観察モデリング・ネットワーク)研究を通じて、試験デザインと対象集団の違いがどのように相反する試験結果へ導くかを、数理モデルを用いて解明しようという試みである。

1つの試験では統計学的有意に前立腺癌死亡率低下が認められたが、もう一方の試験では認められなかった。たとえこのように結果が矛盾した場合でも、その原因が試験のデザイン方法やプロセスにあることも考えられる。昨年開始されたCISNET研究はそれら2試験のデータを精査するものである。

もし利益があるとすれば、どの男性が前立腺癌の定期検診によって利益を受けられるのかを医師や政策決定者が究明しようとしているように、男性と医療従事者もより明確な答えが必要という点で同じである。2011年10月、米国予防医療作業部会(USPSTF)は、パブリックコメントに向けた前立腺癌検診の新ガイドライン案を発表した。 PLCO調査結果に一部基づいた新ガイドライン案では、前立腺癌の症状のない男性では定期的なPSA検査を推奨していない。

新たな勧告について、個々の男性への説明に基づく決定を十分配慮せず行き過ぎであると考える医師もいる。前立腺癌が低悪性度のものからそうでないものまでの連続体であるとするならば、過剰診断や過剰治療は主に低悪性疾患に限られるものであり、従って、リスクがあるからといって完全に検診の潜在的利益を排除するよりも、なぜ低リスク患者の管理の仕方を変えないのか?」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Robert Volk氏とバージニア大学医学部のAndrew Wolf氏は先月JAMA誌に掲載された論評の中で問うている。

診療では、進行するリスクが低いと考えられる前立腺癌男性に対しては、即時治療するのではなく積極的な経過観察に大きく重点を置くという方向に進んでいるようである。PSA値の高い男性が果たして高悪性度の癌を発症しやすいのか、または低悪性度の癌を発症しやすいのかが生検前にも予測することができれば大きな前進となるだろうとAndriole氏は説明した。

「現在、そうした研究への取り組みが前立腺癌だけでなく他の癌種においても行われている」とProrok氏は述べる。 「症状のある人を診断したり、検査で何かを見つけた場合、われわれは最終的に、実際にどの人の癌が悪性度の高い癌で積極的な治療を必要とするか、反対にどの人の癌が積極的治療もしくは一切の治療を必要としないのかを決定する方法を見つけることができるようになるのでしょうか?」

研究者らは癌の悪性度を知る手がかりとなりうる遺伝子やタンパク質などの分子マーカーを求めている。「選択的に悪性度の高い癌の男性のみが生検を受けるというように生検の条件を改めることができれば、われわれは、実質的にスクリーニングの全体的なリスク/ベネフィット比をシフトすることができるかもしれません」とAndriole氏は言った。

Sharon Reynolds

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野中 希 訳
大渕俊朗 (呼吸器外科/福岡大学医学部) 監修
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