2007/10/23号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/10/23号◆癌研究ハイライト

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2007/10/23号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年10月23号(Volume 4 / Number 28)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

試験にてHPVスクリーニング検査の重要な役割が示される

2つの大規模ランダム化試験の結果は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に対するDNA検査がPap検査よりも良好な感度を有すること、および子宮頸癌のスクリーニングにおいて重要な役割を担うことを示した過去の試験結果を裏付けた。ただし、いくらかの研究者は、本試験結果には子宮頸癌の適切なスクリーニング法に関する未解決の重要な問題点が多く残されていると指摘している。

New England Journal of Medicine(NEJM)誌の10月18日号に掲載された両試験は、試験デザインが異なっていた。1件目の試験(カナダで実施)では、30歳以上の女性10,000名以上を組み入れ、ランダム割り付けを実施した順序でHPV DNA検査およびPap検査を受けさせた。各検査は、単独のスクリーニング検査として評価した。過去の試験で示されたように、HPV DNA検査ではPap検査と比較して、Grade 2/3の子宮頸部病変に対する感度がはるかに高い(94.6%対55.4%)。また、 過去の試験とも一致するように、HPV DNA検査ではPap検査と比較すると、特異性がわずかに低い(94.1%対96.8%)。

2件目の試験(スウェーデンで実施)では、32~38歳の女性12,500名以上を組み入れてHPV DNA検査+Pap検査またはPap検査単独に割り付け、約4年間追跡した。初回のスクリーニング検査では、子宮頸癌またはGrade 2/3の子宮頸部病変の検出率が、Pap検査単独群と比較して併用検査群で51%以上高かった。一方、フォローアップ・スクリーニング検査では、子宮頸癌またはGrade 2/3の子宮頸部病変を有している確率が、Pap検査単独群と比較して併用検査群で約40%低くなった。著者らは、「この結果から、スクリーニング検査の間隔延長、子宮頸部細胞診の必要性低下、および初回スクリーニング検査費用の削減へと至る可能性がある。」と述べている。

同様の結果が得られた3件目の主要試験は、Lancet誌に今月の初め掲載された。同試験では、女性17,000名以上を対象として、5年間追跡を行った。上記3件の試験結果から、子宮頸癌スクリーニング検査に関する新たな方法への移行が加速すると予測されている。NCI癌予防部門のDr. Diane Solomon氏によると、問題は、分子的アッセイを導入するか否かではなく、その導入方法である。同氏は、「再HPV検査を含む第2の『選別』検査を用いることやスクリーニング間隔を延長することにより、分子的アッセイの感度を利用して過度の検査を避けるスクリーニングアルゴリズムを開発する必要がある。」と述べている。

前立腺癌リスクに対する遺伝子マーカーの発見

いくつかの主要試験で第8染色体のq24領域にマーカーが同定されたことに伴い、前立腺癌の発症リスクの遺伝する可能性を示すエビデンスが2007年に劇的に増加した。ウエイクフォレスト大学医学部の研究者らの新たな報告によると、前立腺癌を有する欧米人男性1,563名を対象としたケースコントロール試験にて、同染色体の同領域において遺伝子変異が高頻度に生じる部分が2箇所同定された。この試験結果は、JNCI10月17日号に掲載されている。

Dr. S. Lilly Zheng氏とDr. Jielin Sung氏が主導し、NCIが一部資金提供した同試験では、8q24領域における18個の単一塩基多型(SNP)を遺伝子解析し、患者から採取した前立腺癌組織ならびに癌に罹患していない対照被験者576名の検体の遺伝子パネルにて同SNPの存在の有無を調べた。rs6983267と呼ばれる1つ目のSNPは、NCI癌感受性遺伝子マーカー試験(Cancer Genetic Marker of Susceptibility[CGEMS]study)にて先だって同定された。rs1447295の付近で発見された2つ目のSNPセットは、より悪性度の高い疾患に対するリスクマーカーとして以前同定された。

著者によると、重要かつ新しい発見は、これらの各SNPと関連するリスクが相加的であることである。これらSNPの発現は関連していないため、各箇所におけるリスク要因としての対立遺伝子は共通であり、また、これらの遺伝子座はこれまで予測されていたよりも前立腺癌では多くを占めるであろう。患者の3分の1以上で、1箇所または両箇所にSNPが認められた。1箇所でSNPが認められた場合、リスクは70%に増加し、両箇所で認められた場合、168%に増加する。

論説において、NCI癌疫学・遺伝学研究部門(Division of Cancer Epidemiology and Genetics)のDr. Sharon A. Savage氏とDr. Mark H. Greene氏は、一般的に利用可能なCGEMS公表前データが本試験の裏づけとなり、最新データを共有するという方針の価値が上昇したと述べている。さらに、「このようなデータベースに対してより自由かつ早期にアクセスするという方針は、間もなく、世界的に許容されることとなるであろう。」と記している。

パクリタキセルの効果はHER2の状態によって異なる

Cancer and Leukemia Group B(CALGB)の試験(CALBG 9344)のデータは1998年に初めて報告された。同データでは、リンパ節転移陽性乳癌を伴う女性に対してドキソルビシン+シクロホスファミドの化学療法にパクリタキセルを併用したところ、無病生存期間および全生存期間が有意に延長したことが示された。しかし、NEJMに10月11日付けで公表された同データに関する新レトロスペクティブ解析では、HER2陽性の女性のみがパクリタキセル併用に実際に効果を示すと明らかにされた。

CALGBの研究者らはすでに本試験に参加していた女性3,121名のうち1,500名をランダムに選択し、そのうち1,322名の組織検体を調べた。さらに、HER2およびエストロゲン受容体(ER)の状態について検体を検査し、癌がHER2陽性/ER陰性、HER2陽性/ER陽性、およびHER2陰性/ER陽性である女性の間において、それぞれの無病生存期間を比較した。

パクリタキセルを併用することで、 HER2陽性癌を有する女性(ER陽性/陰性は問わない)にて 無病生存期間が延長した。著者らは「パクリタキセルは、HER2陰性/ER陽性癌を有する患者で効果を示さなかった。」と述べている。HER2陰性/ER陽性癌を有する女性集団は、CALGB 9344の全被験者のうち半数以上を占めていた。

著者らは「今回の試験から、HER2陰性/ER陽性癌を有する患者において、ドキソルビシン+シクロホスファミド治療後の補助的なパクリタキセル投与に伴う毒性作用を回避することができる。」と結論づけている。しかし、これらの結果は、本来の試験デザインに予定されていなかったレトロスペクティブ解析に基づいているため、臨床に応用する前に検証を行う必要がある。

付随論説にて、ワイル・コーネル医科大学(Weill Cornell Medical College)のDr. Anne Moore氏は、「本結果は、これらの患者集団に対してタキサン系薬剤投与を中止する必要性を意味しているわけではない。」と述べている。さらに同氏によると、その他のタキサン系薬剤や治療スケジュールが、HER2陰性/ER陽性癌を有する患者で効果を示すと考えられている。また、HER2やERの状態に関するその他の試験結果を解析することが重要であろう。

Batracylinは癌細胞のDNA複製を阻害する

NCIのDevelopmental Therapeutics Programが開発したbatracylin〔バトラシリン〕(試験段階の抗癌剤)は、2種類の酵素を阻害すると示されてきた。これらの酵素とはⅠ型およびⅡ型のトポイソメラーゼであり、DNA複製過程で役割を担っている。NCI癌研究センター(Center for Cancer Research)の研究者らは、本薬がDNA複製を標的とすることおよび癌の制御不能な増殖を抑制する上で役立つことを報告している。この所見はCancer Research誌の10月15日号に掲載されている。

エトポシドやカンプトテシンなどのその他の化学療法剤は、Ⅰ型トポイソメラーゼまたはⅡ型トポイソメラーゼのいずれかを阻害するが、両者を阻害できない。癌細胞はいずれかの酵素を利用してDNAを複製、転写、または修復するため、一方のトポイソメラーゼのみを標的とした薬剤に対して耐性が生じる。

初期の実験ではⅡ型トポイソメラーゼに対するbatracylinの活性が明らかにされたが、これは、同薬による処理済みの細胞内でDNA二重鎖の切断が増加したことで示された。また、結腸直腸癌細胞を用いた新しいin vitro実験ではⅠ型トポイソメラーゼに対するbatracylinの活性が明らかにされたが、これは、DNA単鎖の切断が増加したことで示された。DNA複製に対するbatracylinの阻害は、エトポシドやカンプトテシンと比較して、細胞培養中に有意に長く持続した。その後行われたin vivo試験では、batracylinを用いた短期投与スケジュールが可能であるか否かを検討した。

CCR分子薬理学研究所(Laboratory of Molecular Pharmacology)主任のDr. Yves Pommier氏を筆頭とする著者らは、「両トポイソメラーゼ阻害物質はほんのわずかしか特定されておらず、抗癌治療としては開発段階にすぎない。」と述べている。

同研究所の研究者であるDr. William Bonner氏は、Pommier研究チームがbatracylinに因るDNA損傷の評価に利用したバイオマーカーについて特許権を得ている。同バイオマーカーはγ-H2AXと呼ばれるタンパク質であり、塩基伸張を伴う集合体を形成する。この塩基伸張部分はDNA鎖切断領域の側面に位置する。細胞をごく少量のbatracylinで処理すると、γ-H2AX/DNAの集合体が最初の1時間後に検出され、さらに、処置後最長15時間まで増加する。

batracylinと分子的検査は現在、NIH臨床センターにおけるNCI臨床試験にて、固形癌またはリンパ腫患者を対象として評価されている。

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斉藤 芳子 訳
小宮 武文(NCI研究員) 監修
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