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2010/01/12号◆特集記事「前立腺癌に対する監視療法の考慮を医師に要請」

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2010/01/12号◆特集記事「前立腺癌に対する監視療法の考慮を医師に要請」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年1月12日号(Volume 7 / Number 1)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

 前立腺癌に対する監視療法の考慮を医師に要請

前立腺癌の治療において監視療法(active surveillance:※日本ではASまたはPSA監視療法と呼ばれる)を普及させるためのこれまでで最も明確な要請が、先週、主要がんセンターが参加する非営利団体であるNational Comprehensive Cancer Network(NCCN:全米癌総合ネットワーク)によってなされた。改訂されたNCCNのガイドラインは、生命を脅かす病気へと進行するリスクが低い前立腺癌患者に監視療法を提供することを医師に求めている。

監視療法は、以前には「待機療法(watchful waiting, expectant management)」と呼ばれていたが、前立腺癌の診断後すぐに治療せずに、定期的な検査や診察を行って病状を綿密に観察することである。監視療法には前立腺特異抗原(PSA)検査、直腸診(DRE)、前立腺生検を含めることができる。もし、腫瘍の著明な増大、PSA値の急激な上昇、生検における悪性度の上昇など病状が進行している徴候がいずれかの時点で認められた時は、手術や放射線療法などの根治的治療(definitive treatment)が行われる。

2009年に診断された192,000例以上の前立腺癌のうち、約半数が低リスクに分類される可能性があると、米国国立癌研究所の癌治療・診断部門のDr.Bhupinder Mann氏は説明した。

改訂されたガイドライン(無料登録で利用可能)によると、監視療法は期待される余命が10年未満の低リスク前立腺癌の男性に推奨されるべきである。低リスク癌とはPSA値が比較的低く、腫瘍が小さく前立腺の片側に限局し、グリーソンスコアが低い低悪性度のものをいう(表を参照)。また、ガイドラインは臨床的に問題にならない前立腺に対して超低リスクという新しい分類を定めた。期待される余命が20年以下でこのカテゴリーに分類される男性の好ましい管理手段として監視療法の提案のみを推奨している。

「前立腺癌治療委員会は前立腺癌の過剰診断や過剰治療を危惧しています」と委員会の議長でロズウェルパーク癌研究所のDr.James L. Mohler氏は説明した。昨年発表された前立腺癌検診についての2つの大規模臨床試験の結果、発見されなければ問題とならなかったであろう癌に対して重大な過剰診断と過剰治療があったことが明らかになり、改訂を進める原動力になったと同氏は述べた。

「自分に前立腺癌があるとわかったほとんどの男性は何を望むでしょうか?彼らは癌がなくなることを望みます」とMohler氏は言う。「あまりにも多くの男性が治療の副作用に苦しんでおり、治療にかかる費用は社会が負担しています。そして、それらのうちあまりに多くの治療が不必要なのです」。

その点に関して、昨年9月に発表された研究によると、1986年以降に100万人もの男性が生命を決して脅かさない(PSA検診の結果で診断された)前立腺癌に対して根治的治療を受けたと推定された。過剰治療に対する懸念や監視療法の普及への要請があるが、それでも治療の選択は各患者が医師と相談して行わなければならない個人の意志決定事項だと、Mohler氏は強調した。

監視療法は適した患者には明確な利益があるが、この治療方法を選ぶ過程や決定は容易なことではないと、ガイドライン委員会は指摘した。頻回の診察や検査が必要であることに加えて、病気の全過程を考えると、癌が進行していないか注意して見守っていくということは、ついには癌が進行し、治癒の見込みが少なく重大な副作用のリスクがある治療をしなければならなくなる可能性があることを意味する。

そのような進行のリスクが低いことについては、Mann氏とMohler氏とで見解が一致している。Mohler氏によると、重大な癌悪性度の増加リスクは約5%であり、PSAの上昇リスクは16〜25%である。

監視療法と迅速な根治的治療を直接比較したランダム化臨床試験のデータはこれまで発表されていない。しかし、現在までのエビデンスに基づくと、「低リスク患者において、監視療法を行い、根治的治療を遅らせることは容認できる方法です」とMann氏は述べた。その主張は最近発表された2つの研究(こちらこちら)によって裏づけられる。これらの研究は監視療法を選択した男性と迅速な根治的治療を受けた男性とで長期の癌死亡率が同等であることを報告している(先週発表された効果比較試験に関するこの記事の癌研究ハイライトを参照)。

Dr.Paul Godley氏は、ノース・キャロライナ大学Lineberger Comprehensive Cancer Centerの臨床腫瘍医であるが、この推奨は遅いくらいだと述べた。しかし、監視療法には、根治的治療に切り替える適切なタイミングなど、解決すべき問題が残されていると同氏は指摘した。「それはまだ、患者と医師が共に治療の必要を感じたといった程度の、非常に主観的なものであると思われます」と同氏は述べた。

また、迅速に根治的治療を行うことが現在もまだ根強いことを考慮すると、医師が改訂されたガイドラインにどのように対処するかも問題である。例えば、2009年1月にNew England Journal of Medicine誌によって、低リスク前立腺癌の63歳男性の模擬症例を提示して行われたオンライン投票によると、米国の投票者(医師が全てではない)のうち約70%が好ましい治療選択として監視療法よりも放射線療法や手術を選んだ。

この推奨が「治療の傾向を大きく変える」かどうかは不確定であるとGodley氏は述べた。しかし、「低リスク患者に自ら監視療法を行う医師や、それを施行する病院へ患者を紹介する医師にとっては、行いやすくなるでしょう」と同氏は付け加えた。

NCCNガイドラインによる低リスクの基準
低リスク
期待される余命
・10年未満適応
・癌ステージ:T1-T2a
・癌悪性度:グリーソンスコア 2-6
・PSA値:<10 ng/mL必要な検査
・6か月に一回PSA検査
・12か月に一回直腸診超低リスク
期待される余命
・20年以下適応
・癌ステージ:T1-T2a
・癌悪性度:グリーソンスコア≦6
・PSA値<10 ng/mL
・生検陽性コア<3か所、各コアの癌細胞≦50%

必要な検査
・6か月に一回PSA検査
・12か月に一回直腸診

—Carmen Phillips

[※用語解説は(財)先端医療振興財団がん情報サイトにリンクしています]

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野長瀬 祥兼 訳
榎本 裕(泌尿器科)監修
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