2007/01/16号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2007/01/16号◆癌研究ハイライト

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2007/01/16号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年01月16日号(Volume 4 / Number 3)
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癌研究ハイライト

肥満と体重増加が前立腺癌の死亡率に関連

体重過多の前立腺癌に対する影響については、大々的に研究が行われてきたが、一貫した結果は得られていなかった。今回、Cancer誌の2月15日号に掲載される前向き試験によって、実際に前立腺癌を発症する確率には影響はないが、肥満男性の方が正常体重の男性よりも前立腺癌による死亡率が高いことが明示された。

NCIの癌疫学および遺伝学部門(DCEG)所属のMargaret E. Wright医師らは、自分たちの試験結果が、肥満と前立腺癌の死亡率との関連を示したこれまでの報告を裏付けるものであり、18歳以降の体重増加が前立腺癌による死亡リスクを増加させることも示したことでは、初めてのものであると述べた。

「今回の試験は、肥満および成人の体重増加と、前立腺癌による死亡の用量反応関係に信憑性があることを示しています。」とWright医師は言う。全米退職者協会(American Association of Retired Persons )(AARP)メンバーで50歳から71歳までの男性、約287,000人が、1995年に始まったNIH-AARPの食生活と健康研究への登録時に、身長および体重を自己申告した。その後5,6年の間に、9,986人が前立腺癌を発症し、173人がそれにより死亡した。

体格指数(BMI)が25kg/m2以下の男性と比べ、過体重の男性 (BMIが25~29.9)では死亡リスクが25%増加、軽度の肥満男性(BMIが30~34.9)では46%増加、重度の肥満男性 (BMIが35以上)ではリスクが倍になった。

「西洋諸国で肥満者の割合が増えていることは、憂慮すべきことであり、食事と運動によって健康的な体重を維持することに関して数ある健康上の理由の中で、前立腺癌の死亡リスクを減らすというは、その一つに過ぎません。」とWright医師は述べた。

分子スイッチが癌発症に関与する「シャペロン」を制御する

NCIの研究者らによって、タンパク質のある特定の部位での分子修飾が、腫瘍の発症に関与し、直接その活性に影響を与えることが見出された。そのタンパク質とはヒートショックタンパク90 (Hsp90)で、その他のタンパク質(クライアントと呼ばれる)が、きちんと折り畳むのを助けたり、細胞内の適切な場所に誘導するといった、基本的な機能を果たす手助けをするため「シャペロン」と呼ばれる。

Molecular Cell誌の1月12日号で発表された試験では、ある特定の部位でアセチル基をHsp90に付加すると、そのシャペロンとしての役割を果たす能力に影響を与えることが示された。このようなアセチル化が、ヒト細胞または酵母培養液中において妨害されると、Hsp90がクライアントタンパク質に結合する能力が強化され、反対にアセチル基が特定部位に加えられると、シャペロンとしての活性が弱まった。

癌細胞は、あるクライアントタンパク質の癌の原因となる変異を維持するため、特にHsp90を利用し、細胞が増殖規制を回避したり、腫瘍へと発達することを可能にする。本試験を率いたNCI癌研究センターのLen Neckers医師は、癌治療臨床試験においてHsp90阻害剤の開発および研究を行う取組みを率いてきた。

今回の試験では、Neckers医師らによって、細胞を開発中の別のクラスの抗癌剤であるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤(多くの種類のタンパク質からアセチル基を取り除く)で治療すると、Hsp90がアセチル化され、シャペロン活性が阻害されることも示された。

「これらの結果から、脱アセチル化の阻害によってHsp90のアセチル化を促進することが、なぜ癌細胞の増殖を阻害するのに良い方法であるのかを、より深く理解することができます。これからは、癌治療のために、HDAC阻害剤とHsp90化学阻害剤を併用する研究を始めることができます。」とNeckers医師は述べた。

新規ナノ粒子が腫瘍に凝血塊を形成する有望な結果

研究者から成るある学際的チームにより、腫瘍血管および結合組織に吸着することで血小板の凝血作用のように働き、その部位に更に凝血要素とナノ粒子を集めるような、ナノ粒子システムが開発された。試験結果は、1月8日にオンラインでProceedings of the National Academy of Sciences誌に発表された。

研究者チームは、腫瘍の血管および間質中の凝血した血漿タンパク質に結合する、短いペプチド(cys-arg-glu-lys-alaまたはCREKA)を用いてナノ粒子を標的とした。画像化のため、蛍光色素をCREKAペプチドの一端に付着させ、磁気共鳴映像法(MRI)の造影剤として使用されている50 nmの超常磁性でアミノ・デキストランをコーティングした酸化鉄粒子(SPIO)をペプチドに共役させた。

SPIOによりCREKAペプチド複合体の蛍光発光が強められ、マウス腫瘍内のin vivoでの血漿タンパク質網の鮮明な画像化が可能となった。CREKA-SPIOの除去を遅らせるようなデコイ(おとり)粒子を挿入することにより、凝血の強度と持続期間を増幅させ、それにより画像化効果を高めることができた。

「ナノ物質の中には、血栓症を誘発する能力のあるものもある。しかし今回CREKAによって誘発された血栓症は、腫瘍血管に限定されていた。」と、(論文の)著者は述べている。また、CREKA-SPIOによって誘導された凝血の機序解明には更なる試験が必要であり、同様の画像化効果やその他の目的のために、別のナノ粒子をCREKAと結合させることができるかもしれないと、述べている。このことは、CREKAナノ粒子システムが、画像化のためだけでなく、局所の血管塞栓を起こすことにより腫瘍への血液供給を枯渇させたり、腫瘍の血管を閉鎖している間にゆっくり薬剤成分を放出させるといった可能性もあることを示唆している。

バーナム研究所のErkki Ruoslahti医師が率いたこのチームは、NCIの非従来型開発プログラム(Unconventional Innovations Program)の下に、研究を開始した。研究は、NCIの癌におけるナノ技術連合(Alliance for Nanotechnology in Cancer)プログラムの支援により続けられる。

放射線療法設備の有無が使用頻度に影響を与える可能性

病院の施設内に放射線設備があるか無いかが、膵臓癌治療における放射線療法の使用に影響を与える可能性のあることが、新規の試験で分かった。施設内に放射線設備のある病院で手術を受けた膵臓癌患者は、放射線設備の無い病院で治療を受けた患者と比べて、有効性がまだ立証されてはいない術後放射線療法を受ける可能性が、ほぼ2倍(42.9% 対 26.1%)であることが明らかになった。

一方、術後放射線療法が推奨されることが多い直腸癌患者においては、病院内に放射線設備があるか無いかは、その使用率に影響を与えなかった。術後放射線療法の使用率は、施設内に放射線設備のある病院で治療を受けた直腸癌患者と無い病院で治療を受けた直腸癌患者で、ほぼ同じ(29.4% 対 29.1%)であった。本試験は、1月8日にオンラインでCancer誌に掲載された。

「今回の試験結果は、膵臓癌に対する術後放射線療法は、放射線設備のある病院で過剰に使用されているか、または設備の無い病院での使用が不十分であることを示唆している。」と、主執筆者で、ミシガン大学外科部門所属のSandra L. Wong医師らは書いている。

NCIのSEERメディケア登録システムが、1992年から1999年の間に直腸癌または膵臓癌の広範囲切除術を受けた10,198人の患者の記録を調べるために利用された。放射線施設の有無は、米国病院協会による2000年の米国病院調査より抜粋された。治療を行っている病院のうち27%においては、放射線設備の有無を断定できなかったことが記されている。そのような病院は分析からは排除された。

家庭内での石炭燃焼が癌を引き起こす

国際癌研究機関(IARC)のモノグラフ(ある特定分野の研究論文)作業委員会により、家庭での石炭燃焼物の室内放出が、ヒトに対してグループ1分類の発癌性があり、肺癌リスクの増加と主に関係があると、結論付けられた。NCIのDCEG所属のQing Lan医師が本作業委員会のメンバーであり、Lan医師が中国宣威(センイ)県で実施したこの分野での研究が、発癌性の主要な根拠となった。

本作業委員会は、家庭でのバイオマス燃料(主に木材)の燃焼および高温度での揚げ物による煙の室内放出もまた、ヒトに対しておそらく発癌性がある(グループ2A分類)と結論付けた。DCEGの科学者らが、今回の結論を導き出す研究に参加した。

環境発癌物質への暴露の程度は世界中で大きな差があるが、調理および暖房用の固形燃料使用は、世界人口の約半分を占める低資源国および中程度の資源国で最も頻繁に利用されている。「今回の結果は、石炭やその他のバイオマス燃料からでる燃焼生成物への室内暴露が危険であり、室内換気を改善するなどの暴露を減らすための方策が取られる必要があるとの警告を発しています。」とLan医師は述べ、世界中の何億人もの人において、室内の空気汚染などのために、発癌リスクが増加していることを指摘した。実際に、Lan医師が行った試験では、室内の燃焼生成物の排気を改善すると、肺癌罹患率が減少することが示された。

作業委員会は、世界保健機関(WHO)の癌研究機関であるIARCモノグラフ・プログラムによって召集された。IARCによる評価の要約は、Lancet Oncology誌の2006年12月号に発表された。

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Oonishi 訳

瀬戸山 修(薬学) 監修

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