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ルキソリチニブが一部の移植片対宿主病患者に有用

  • 2020年6月18日
  • 発信元:米国国立がん研究所(NCI)ブログ~がん研究の動向~

造血幹細胞移植を受けて数カ月以内に移植片対宿主病(GVHD)を発症し、ステロイドに反応しなかった血液のがんを有する患者は、他の治療法よりもルキソリチニブ(ジャカビ)に反応する可能性が高いことが、大規模臨床試験の結果により明らかになった。

この知見は、GVHDの治療に関する試験で初めて良い結果が得られたランダム化比較試験のものである。本試験は、2019年に一部のGVHD患者を対象として、米国食品医薬品局(FDA)によるルキソリチニブの承認につながった小規模な試験の知見を裏付けている。

両試験とも、ステロイド抵抗性の急性GVHDと呼ばれる疾患を持つ患者を対象にルキソリチニブを検討した。これらの患者は、同種造血幹細胞移植としても知られる健康なドナーからの造血幹細胞移植の後、最初の数週間から数カ月の間にGVHDを発症し、ステロイドに反応しない。

放射線療法や化学療法によって損傷を受けた患者自身の細胞は、移植治療中にドナーの健常な造血幹細胞で置き換えられる。しかし、移植を受けた患者の一部では、移植された細胞がレシピエントの細胞を攻撃してレシピエントの組織や臓器に損傷を与え、GVHDを引き起こすことがある。この疾患の症状には、広範囲の発疹、下痢、肝障害などがある。

REACH2というこの新たな試験では、患者はステロイド抵抗性の急性GVHDに対して、ルキソリチニブの投与(ルキソリチニブ群)または一般的に使用されている9つの治療法(対照群)のいずれかを受けた。28日間の治療後、ルキソリチニブ群では対照群と比較して、完全奏効または部分奏効を示した患者が多かった(62%に対して39%)。

この奏効率の違いは56日間の治療でも持続し、副作用は両群で同様であったと、ドイツのフライブルク大学医療センターのRobert Zeiser医師らは、4月22日付のNew England Journal of Medicine (NEJM)誌で報告した。

「この試験は、ルキソリチニブがステロイド抵抗性の急性GVHD患者に対する新たな標準治療法であることを証明しています」と、NCIがん研究センターの免疫不全細胞治療プログラムのSteven Pavletic医師は述べている。同医師は本試験には関わっていなかった。

「ルキソリチニブがプラセボではなく、利用できる最善の治療法に対して比較検討されたため、この結果は非常に説得力があります」と、Pavletic医師は付け加えた。

移植片対宿主病(GVHD)で初めて成功したランダム化比較試験

同種造血幹細胞移植を受けた患者の30%から50%は急性GVHDを発症する。ステロイドがGVHDの治療に有効なのは全体の約半数の患者のみであり、ステロイドが有効でない患者や再発した患者ではGVHDは致死的になる可能性があると、Pavletic医師は言及している。

ルキソリチニブは、患者が錠剤として服用する分子標的治療薬であり、GVHDに関与していると考えられているJAK1とJAK2という2つのタンパク質を阻害する。研究者によると、これらのタンパク質を阻害することで、GVHDに関連する炎症の軽減につながる可能性がある。

ルキソリチニブは、JAK1とJAK2以外の多くの分子と相互に作用しない可能性がある「比較的特異的な薬のようである」と、デューク大学医学部のNelson Chao医師は、NEJM誌に掲載された試験に付随する論評で書いている。この特異性が、ルキソリチニブを投与された患者に認められた限定的な副作用に寄与している可能性がある。

本ランダム化比較試験は、ルキソリチニブの製造業者であるノバルティス社が資金を提供し、世界中の医療施設で実施された。

研究者らの報告によると、完全奏効(GVHDの徴候がすべて消失)を示した患者の割合は、ルキソリチニブ群で34%(53人)、対照群で19%(30人)であった。全生存期間の中央値(治療群の患者の半数が生存している期間)は、ルキソリチニブ群で11.1カ月、対照群で6.5カ月であった。

「われわれは、奏効率の改善が全生存期間の延長につながるかどうかを確認する必要があります。よって、長期の追跡調査が必要です」と、Zeiser医師は述べた。

さらに、「ルキソリチニブ群の患者150人に予期せぬ副作用がなく、忍容性が良好であると判明したことが重要でした」と付け加えた。

28日目までに認められた副作用で最も多かったのは、血小板減少(ルキソリチニブ群で33%、対照群で18%)、貧血(それぞれ30%、28%)、サイトメガロウイルス(CMV)感染症(26%、21%)であった。

サイトメガロウイルス感染による合併症は「同種造血幹細胞移植後の主な医学的問題です」とZeiser医師は述べ、この合併症を治療しなければ、患者はサイトメガロウイルス関連の肺炎や目の感染症を発症する可能性があると指摘した。

Zeiser医師はルキソリチニブ群のサイトメガロウイルス感染率が高いと予想していたが、両群の感染率は同程度であった。「ルキソリチニブにより感染性合併症が増加しなかったという結果は、薬剤の使用という点で大きなプラスとなります」と同氏は述べた。

Chao医師は論評の中で、サイトメガロウイルス感染の結果は興味深いものであると同意したが、患者の経過観察期間が短く、サイトメガロウイルス感染が引き続き増加しないかどうかを評価するためには、より長い経過観察が必要であると注意を促した。

基礎研究を新規治療法につなげる

Zeiser医師らは、ステロイド抵抗性の急性GVHDに対して一般的に使用される9つの治療法のいずれかとルキソリチニブを比較する目的で本試験をデザインしたが、その理由はルキソリチニブ開発前にはこの疾患に対する標準治療がなかったためである。

しかし現在、研究者らはJAK阻害剤と同様の効果を持つ可能性のあるGVHD治療用の多くの薬剤について検討を始めていると、Pavletic医師は述べた。「この分野の研究は非常に活発です」。

現在の研究活動の基礎となっているのは、2005年と2014年に米国国立衛生研究所(NIH)で開催された学術会議の中で、GVHD患者を対象とした臨床試験を実施するための基準を確立したことであると、Pavletic医師は説明した。

REACH2試験の結果は、「GVHDのメカニズムについて理解が進んだことが、患者のための治療法の改善に結び付いたことを示しています」と、Pavletic医師は述べた。

「しかし、これで研究が完結したわけではありません。ルキソリチニブは必ずしもすべての患者に有効ではなく、この分野ではいつ介入すべきかを知る優れたバイオマーカーがどうしても必要です」と、Pavletic医師は付け加えた。

研究者らは、造血幹細胞移植後数カ月で発症することのある慢性GVHDの患者を対象にしたルキソリチニブの検討も行っている。「われわれはこれらの結果をとても知りたいと思っています」とPavletic医師は述べた。(2017年、イブルチニブ(イムブルビカ)は慢性GVHDの治療薬としてFDAに承認された最初の薬剤となった。)

Zeiser医師は、今後の研究では、慢性GVHDの一次治療としてステロイドではなくルキソリチニブを使用する可能性が評価されることを期待している。「ルキソリチニブとの併用療法が、有効性をさらに高めるために使用可能かどうかを見ていきたいです」と、同医師は付け加えた。

翻訳坂下美保子

監修喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

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