HPVが引き起こすがんの推計92%はワクチンにより予防可能

米国疾病対策予防センター(CDC)プレスリリース

CDCのデータは、全米のHPVワクチン接種率を80%に底上げする米国保健社会福祉省(HHS)新規計画が急務であることを強調

2012~2016年にかけて、毎年平均してHPV(ヒトパピローマ)関連がんが43,999件が報告されたとの新たな調査結果が、CDCの罹患率・死亡率週報(Morbidity and Mortality Weekly Report:MMWR)2019年8月23日号(以下同号)に掲載された。HPVが恐らく引き起こした推計34,800件のがんのうち、92%がHPVワクチンが対象とするHPV型によるもので、HPVワクチンの推奨を継続するとこれらのがんを予防できると同号で発表されている。

HPV(ヒトパピローマウイルス)はよくあるウイルスで、男性と女性で特定の種類のがんを引き起こす可能性がある。HPVは子宮頸がん、外陰がん、腟がん、陰茎がん、肛門がん、および中咽頭(舌根と扁桃を含む喉の後部)がんを引き起こす。HPVワクチンは、こうしたがんを最も多く引き起こすHPV型に対する防御効果を示す。

「HPVによるがんのない未来が実現可能になりつつありますが、HPVワクチン接種率を上昇させるための緊急の行動が必要になります。接種率を80%に上昇させるようHHSはこれまで率先して取り組んできており、今後も継続します。また、HPVによるがんのない未来を実現するために、私たちは政府・民間部門のパートナーと協力し続けます」と行政官であるBrett P. Giroir医師(HHS保険次官補)は述べた。

CDCの研究者らはCDCの全国がん登録プログラムと米国国立がん研究所(NCI)の調査、疫学、および転帰(SEER)プログラムの2012~2016年のデータを解析し、HPV関連がんの発生率を確定し、かつ、現行のHPVワクチンで予防できるHPVの型が引き起こすがんの年間件数を推計した。本報告により初めて、こうした州単位のデータが得られるようになった。

主要結果
・2012~2016年、各年で推計平均34,800件のHPVが引き起こすがんが診断された。
・最も多いがんは子宮頸がん(9,700件)と中咽頭がん(12,600件)であった。
・ワクチンで予防できるHPV型が引き起こすがんの件数は、州単位ではワイオミング州での40件からカリフォルニア州での3,270件に及んだ。
・子宮頸がんが最も多かったテキサス州を除き、中咽頭がんは全州でワクチンで予防できるHPV型が引き起こす最も多いがんであった。
・アラスカ州、コロンビア特別区、ニューメキシコ州、およびニューヨーク州において、現行のHPVワクチンで予防できるHPV型が引き起こす中咽頭がんと子宮頸がんの推計件数は同数であった。

全ての10代がワクチン接種を受けたわけではない
全ての思春期直前児は11歳または12歳の時点で、HPVに曝露される前に、その予防用HPVワクチンを接種するようCDCは推奨する。しかし、MMWR同号で発表された追加の新規データからはさらに、13~17歳の10代におけるHPVワクチン接種率はほとんど上昇していないことが示されていた。こうしたデータは2018年の全米予防接種調査―10代(NIS-Teen)の一部として収集され、10代男児ではHPVワクチン接種率が4%ポイント上昇したが、10代女児では1%ポイント未満しか増加しなかったことが示されている。全体として、すべての10代の51%だけがHPVワクチン接種の推奨回数を全て受けており、接種率は2017年から2%ポイント上昇した。

HPVワクチン接種率は、保護者がかかりつけの小児医療従事者から勧められたと話した10代の方が高かった。データは一貫して、医療者が保護者の啓発において重要な役割を果たし、ワクチン接種の対象となる思春期直前児の保護者にとって最も信頼できる情報源であることを示している。CDCと州の保健部門は、医療従事者が保護者と対話して、保護者にがんを予防して生命を守る予防接種の有益性に関する情報を提供することを奨励し続けている。

「HPVワクチンは、男児と女児が子宮頸がんを含むHPV関連がんを発症することから防ぐ最善の方法であり続けます。この新規データから、HPVワクチンに関する医学的推奨を受けた保護者の4人中1人が自身の子供がワクチン接種を受けないことを選択していることがわかります。HPVワクチンは安全です。また、私たちは保護者に自分の思春期直前児にワクチン接種を受けさせるよう促し、こうした子供たちが以降の人生でHPV関連がんを発症しないようにするための次の対策を講じます」とCDC長Robert R. Redfield医師は述べた。

HPVワクチンは思春期以降の年齢の人々も選択肢
HPVワクチンは、それまでに接種を受けなかった26歳までの全ての人々に推奨される。HPVワクチン接種は27歳以上の人々に対して推奨されていない。しかし、HPVワクチン未接種の27〜45歳の一部の成人は、主治医にHPVの新規感染リスクとワクチン接種の潜在的利益に関して相談した後、ワクチン接種を受けることを決めてもよい。多くの人々がすでにHPVに曝露されている可能性が高いため、この年齢層におけるHPVワクチン接種の有益性は低い。

HPVワクチン接種に加えて、21〜65歳の女性に対して子宮頸がん検診が推奨される。

「米国では毎年HPVが男女にがんを引き起こします。しかし、私たちにはこれを変える力があります。子宮頸がんはかつて米国の女性において、がんによる死亡の主要原因でした。HPVワクチンと子宮頸がん検診により、子宮頸がんは最も予防しやすいがんの1つになりました。HPVワクチン接種こそががん予防です。私たちはHPVワクチンで愛する人々を守ることができます」とLisa C. Richardson医師兼公衆衛生学修士(CDCがん予防・管理部門長)は解説した。

21〜29歳の女性は3年毎に、パップテスト(子宮頸部細胞診)によるがん検診を受けることができる。パップテストに加えて、HPV検査はHPV感染の有無を検出する。30~65歳の女性に対しては、(1)3年毎のパップテスト、(2)5年毎のHPV・パップ同時検査、または(3)5年毎のHPV検査という3種類の検診法がある。21歳以上の女性でパップテストの結果が不明瞭な場合、HPV検査はさらなる情報を与えてくれる。

詳細は、https://www.cdc.gov/cancer/hpv/index.htmを参照してください。

翻訳担当者 渡邊 岳

監修 喜多川亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)

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