LarotrectinibがTRK融合遺伝子陽性がん17種に持続的抗腫瘍能

がん変異試験で、75%の全奏効率および最小限の副作用が報告された。

MDアンダーソンニュースリリース(2018年2月21日)

Larotrectinibの安全性・有効性同時試験3試験で、17種のがんの診断をうけた4カ月から76歳までの患者で75%の全奏効率が報告された。

全患者が、トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)融合遺伝子陽性の腫瘍を有していた。TRK融合遺伝子は、がんを増殖させるTRK遺伝子を働かせる遺伝子変異である。本試験は、larotrectinibがこれらのがん種を有する患者約5,000人に対する潜在的に強力な新しい治療法であることを示している。

多施設共同研究の知見は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌電子版で2月21日に発表された。共同臨床試験責任医師は、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター実験的がん治療部門教授のDavid Hong医師、およびスローンケタリング記念がんセンター早期創薬部門長のDavid Hyman医師である。

「この一連の試験で、larotrectinibにはTRK融合遺伝子のある固形腫瘍を有する小児および成人患者に対し、患者の年齢、腫瘍組織、融合状態にかかわらず、迅速で強力かつ持続的な抗腫瘍能がありました」とHong医師は述べた。「データはTRK融合遺伝子が治療標的となることを実証したのみならず、TRK融合遺伝子陽性がんに対する治療薬としてのlarotrectinibの可能性を示しました」。

3試験の試験実施計画書には、成人対象の第1相臨床試験、小児対象の第1・2相臨床試験および青少年・成人対象の第2相臨床試験が含まれていた。試験責任医師は副作用が最小限であった患者55人を追跡調査した。

適格患者は、過去に局所進行または転移固形がんと診断され、標準治療を受けており、主要組織が機能している患者である。本試験では、乳児線維肉腫(7人)、唾液腺乳腺相似分泌がん(12人)、甲状腺がん、大腸がん、肺がんならびに消化管間質腫瘍(20人)および他のがん(16人)を含む特定の17種のがん診断を対象とした。

「TRK融合遺伝子は、larotrectinibが非常に有効であった小児および成人の進行固形がん患者での特定の分子サブグループを明確にしました」とHong医師は述べた。「試験の結果は、larotrectinibの長期投与がTRK融合遺伝子陽性がん患者に適用可能であることを示唆しています。ただし、TRK融合を検出できる検査などを含むスクリーニング戦略を展開して、この治療が有益な可能性のある患者の特定を向上させる必要があります」。

Hong医師は、臨床的に意味のある奏効持続性が試験参加患者で認められたが、追跡調査の継続により、本薬剤の有益性の裏付けがさらに進むであろうとも述べた。

NEJM誌の他の共同統括著者は、ニューヨークにあるスローンケタリング記念がんセンターの Alexander Drilon医師、ダラスにあるテキサス州立大学サウスウェスタン・メディカル・センターのTheodore Laetsch医師である。MDアンダーソンがんセンター実験的がん治療部門長のFunda Meric-Bernstam医師も本試験に参加した。

その他の試験チーム医療機関は、以下のとおりである。Stanford Cancer Center, Palo Alto, Calif.; Children’s Hospital of Los Angeles, Keck School of Medicine; and the University of California Los Angeles David Geffen School of Medicine, Los Angeles; Loxo Oncology, South San Francisco, Calif.; Dana-Farber Cancer Institute, and Massachusetts General Hospital, Boston; the Finsen Center, Righospitalet, Copenhagen; the University of Colorado, Aurora; St. Jude Children’s Hospital, Memphis, and Vanderbilt University, Nashville, Tenn.; Cincinnati Children’s Hospital Medical Center; University Hospitals of Cleveland; Cleveland Clinic’s Taussig Cancer Institute; Perelman School of Medicine, Abramson Cancer Center and Fox Chase Cancer Center, Philadelphia; University of Washington-Seattle Cancer Care Alliance; Seattle Children’s Hospital’ Inova Schar Cancer Institute, Falls Church, Va.; START Madrid, Centro Integral Oncológico Clara Campal, Madrid; Memorial Cancer Institute-Florida International University, Miami; Oregon Health and Science University, Portland; and the West Virginia Cancer Institute, Morgantown, W.Va.

本試験は、larotrectinib を開発したLoxo Oncology 社、米国国立衛生研究所(P30 CA008748、P30 CA006927、P30 CA016672、P20 CA046934およびP50 CA058187)、Cancer Prevention and Research Institute of Texas(RP110000584)、Alex’s Lemonade Stand Foundation Centers of Excellence Awardおよび米国国立先進トランスレーショナル科学センター(TR000371およびUL1 TR001881)から助成を受けた。Hong医師は、過去にLoxo Oncology社でアドバイザーを務めていた。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 稲尾 崇 ( 呼吸器内科/天理よろづ相談所病院 )

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