併用療法によりメラノーマの脳転移が縮小

MDアンダーソン OncoLog 2017年11-12月号(Volume 62 / Issue 11-12)

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テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの責任医師らが実施中の多施設共同臨床試験の初期の結果によると、脳転移を有するメラノーマ(悪性黒色腫)患者は、脳転移のない転移性メラノーマ患者の治療に用いられる2種類の併用レジメンが有益である可能性がある。

CheckMate-204試験およびCOMBI-MB試験では、従来臨床試験から除外された患者群である脳転移を有するメラノーマ患者を対象に、それぞれ免疫療法の併用および分子標的療法の併用が検討されている。これまでのところ、各試験の患者の50%超で、有意な腫瘍縮小が認められている。

「これらの有望な結果により、メラノーマの主な死因である脳への転移を有する患者のための、新たな治療選択肢の可能性、そして新たな希望が示されています」と、メラノーマ腫瘍内科准教授でCheckMate-204試験のMDアンダーソンの試験責任医師である、Hussein Tawbi医学博士は述べた。

第2相CheckMate -204試験(No. 2015-0696)の患者には、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質 4)を阻害するイピリムマブ、およびPD-1(プログラム細胞死タンパク質1)を阻害するニボルマブの両免疫チェックポイント阻害剤が投与されている。これまでに評価された患者75人のうち、完全奏効が認められた16人を含む41人(54%)で脳転移が有意に縮小した。9カ月間の追跡調査後に疾患進行が認められたのは、奏効者41人のうちわずか1人であった。本試験では、症状がある、またはステロイドが必要な患者を現在も登録している。

第2相COMBI-MB試験(No. 2013-1020)では、すべての患者がBRAF V600変異を有する転移性メラノーマ患者で、変異BRAF V600キナーゼを標的とするダブラフェニブと、MEK1およびMEK2を阻害するトラメチニブが投与されている。解析のため、特定のBRAF変異、ECOGパフォーマンスステータス、脳転移の治療歴の有無、および脳転移症状がコントロールされているかどうかによって、患者をグループ分けした。これらのうち最大の群(BRAF V600E変異を有し、パフォーマンスステータスが1または2、治療歴はなく、症状が管理された患者76人)では、44人の患者(58%)で有意な腫瘍縮小が認められ、そのうち4人で完全奏効が認められた。その他の3つの群でも同等の結果が認められた。本試験は実施中であるが、患者の募集はしていない。

「これらの併用療法が安全かつ有効であることが示されていることに加えて、これらの結果により、脳転移を有するメラノーマ患者を対象とした臨床試験が実施可能であることが示されています。最終的には、このような患者がより多くの治療法を利用できるようになるでしょう」と、メラノーマ腫瘍内科准教授でCOMBI-MB試験のMDアンダーソンの試験責任医師である、Michael Davies医学博士は述べた。

両試験の予備的結果は、6月の2017年米国臨床腫瘍学会年次総会で発表された。COMBI-MB試験の予備的結果は、7月にLancet Oncology誌でも発表された。

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翻訳担当者 生田 亜以子

監修 西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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