アバスチンは卵巣癌の進行を遅延するが全生存期間を改善しない可能性がある

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2件の第3相臨床試験の結果は、アバスチン(ベバシズマブ)による標的療法を化学療法に追加することは進行性卵巣癌の進行を遅延させるが、全生存率を改善する可能性がないことを示唆する。この結果は、New England Journal of Medicine誌で発表された。

米国では、毎年、およそ22,000人の女性が卵巣癌と診断され、15,000人以上がこの疾患で死亡する。卵巣癌の治療には一般的に手術や化学療法が行われる。しかし、重症と診断された女性患者の治療結果は依然として充分なものではない。そのため、研究者らは治療のための新しいアプローチを検討し続けている。

アバスチンは、VEGFとして知られているタンパク質を阻害する標的療法である。VEGFは、血管が新たに発生する際に重要な役割を果たす。VEGFを阻害することによって、アバスチンは癌から栄養分と酸素を絶ち、その腫瘍の成長を阻害する。現在では、アバスチンは、肺癌、結腸直腸癌、腎癌または膠芽腫で選択された患者の治療のために使われている。

卵巣癌におけるアバスチンの役割が、最近New England Journal of Medicine誌で発表された2件の第3相臨床試験で検討された。第1の試験では、新たにステージ3またはステージ4の卵巣癌と診断された1873人の女性を登録した。[1]術後、女性らを3つの治療群のうちの1つに割り付けた。1)化学療法単独、2)化学療法およびアバスチン、3)化学療法およびアバスチンの後、アバスチン単独投与を最高10カ月まで追加。

  • アバスチンは、癌の進行を遅延させた。癌の進行がない生存期間は化学療法単独で治療した女性では10.3カ月、化学療法およびアバスチンで治療した女性では11.2カ月、化学療法およびアバスチンにアバスチン単独投与を追加して治療した女性では14.1カ月であった。
  • 3つの治療群の全生存率は同様であった。
  • アバスチン群により多くみとめられた副作用には、治療を必要とする高血圧と胃腸穿孔があった。

第2の試験では、高リスクか進行性上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌、またはファロピウス管癌である1,528人の女性患者を研究者らは検討した。[2]試験参加者には、アバスチンおよび化学療法、または、アバスチンのない化学療法で治療した。アバスチンおよび化学療法群の女性は、化学療法終了後、アバスチン治療を続けた。

  • アバスチンの追加は、癌進行を遅延させた。癌の進行がない生存期間は、化学療法単独で治療した女性の20.3カ月と比較して、アバスチンおよび化学療法で治療した女性では21.8カ月であった。
  • アバスチンは、進行のリスクが高い女性の一部でより有利なようであった。
  • 全生存率に関する最終的な情報は、まだ入手できていない。

まとめると、以上の2つの試験から、化学療法中および化学療法の数カ月後に投与するアバスチンが化学療法単独と比較して卵巣癌の進行を遅延させることが示唆される。しかし、アバスチンは副作用を増加させ、全生存率を改善しない可能性がある。追加の試験で、卵巣癌患者の特定のサブグループが他の人よりもアバスチンから利益を得るかどうかが明らかになるであろう。

参考文献:
[1] Burger RA, Brady MF, Bookman MA et al. Incorporation of bevacizumab in the primary treatment of ovarian cancer. New England Journal of Medicine. 2011;365:2473-83.
[2] Perren TJ, Swart AM, Pfisterer J et al. A phase 3 trial of bevacizumab in ovarian cancer. New England Journal of Medicine. 2011;365:2484-96.


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翻訳担当者 有田香名美

監修 関屋 昇(薬学)

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