BRAF阻害剤RG7204は転移性メラノーマに有望

キャンサーコンサルタンツ
2010年11月

試験中の経口剤RG7204(PLX4032)によって、BRAF V600E変異を持つ治療歴のある転移メラノーマ患者の82%で、病勢の安定や腫瘍の縮小がみられた。これらの結果は第7回メラノーマ研究学会国際会議(International Melanoma Research Congress of the Society for Melanoma Research)にて近頃発表された。

メラノーマ(黒色腫)は非メラノーマ型皮膚癌ほど一般的ではないが、はるかに侵襲性が高い傾向にある。毎年100万人以上が新たに皮膚癌と診断され、そのうちおよそ6万2千人が黒色腫である。米国では、毎年8千人以上が黒色腫で死亡する。黒色腫がこれほど危険なのは、他のタイプの皮膚癌より身体の他部位へ転移しやすいためである。

より個人に合った、より効果的な癌治療を行うために、これまで多くの研究が癌細胞の増殖や生存に関与する特異的経路の決定に重点を置いてきた。BRAF遺伝子は細胞増殖に関与することが知られており、またBRAF遺伝子の変異は数種類の癌でみられる。メラノーマでは40−60%の割合でBRAF遺伝子変異を持つことが研究により示されている。BRAF遺伝子変異の約90%がV600Eとして知られる特異的変異を伴う。

RG7204は、前臨床試験において、V600E変異を伴うBRAFに対する阻害剤としての活性を示した試験中の経口の分子標的薬である。New England Journal of Medicine誌に最近発表された小規模試験によると、RG7204を投与すると81%の転移メラノーマ患者で疾患が完全もしくは部分的に縮小した。

今回の第2相試験(BRIM2試験)では、BRAF V600E変異を持つ転移性黒色腫患者132人に対しRG7204の評価が行われた。本試験で評価を受けた132人は、本試験に参加する以前に治療歴があり、疾患の進行や再発を経験していた。一般的には治療後に疾患が進行した転移メラノーマ患者における全生存期間中央値は6〜9カ月で、2〜3カ月後には典型的な疾患の進行を経験する。

無進行生存期間は6.2カ月であった。
52%の患者で少なくとも30%の腫瘍の減少がみられた。さらに、30%の患者では病勢の安定がみられた。
現時点では、追跡調査期間が短いため全生存期間中央値を決定できない。
以前の試験と一致した副作用
・重度の副作用により、患者の14%で肝機能異常、11%で関節痛、10%で胃腸の副作用がみられた。
・発疹、光線過敏、脱毛および関節痛は、報告された中で最も一般的な副作用であった。
・26%の患者がグレード3の皮膚扁平上皮癌(皮膚癌の一種)を発症したが、切除された。

これらのデータは、治療歴のあるBRAF V600E変異を持つ進行メラノーマにおいて、RG7204の安全性と効果を示した初期段階の臨床試験データを裏づけ支持するものである。第3相試験は、この有望な療法がさらに奏効する可能性のある治療歴のない進行メラノーマ患者を対象に現在行われている。

参考文献:
[1] Sosman J, et al. An open-label, multicenter phase 2 study of continuous oral dosing of RG7204 (PLX4032) in previously treated patients with BRAF V600E mutation-positive metastatic melanoma. Presented at the 7th Annual International Melanoma Research Congress of the Society for Melanoma Research in Sydney, Australia. November 4-7, 2010. [Abstract ].
[2] Flaherty KT, Puzanov I, Kim KB, et al. Inhibition of Mutated, Activated BRAF in Metastatic Melanoma. The New England Journal of Medicine. 2010;363:809-819.


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翻訳担当者 北丸綾子

監修 北村裕太(農学/医学)

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