2007/05/01号◆癌研究ハイライト「急性転化期CMLにダサチニブ」「卵巣がんとホルモン補充療法」「食事指導」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年5月1日号(Volume 4 / Number 16)
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◇◆◇癌研究ハイライト ◇◆◇

CASP8遺伝子の変異は複数の癌に関係している

Chinese Academy of Medical Sciencesの研究者らは、遺伝子カスパーゼ8(CASP8)の一般的な変異は複数の癌に対して防御するかもしれないと発表した。4月22日のNature Genetics誌オンライン版に掲載された研究結果によると、この変異は、中国人の肺癌、食道癌、胃癌、結腸直腸癌、子宮頸癌や乳癌のリスク低下に関連していた。

この変異は欠失している。つまり遺伝子のプロモータ領域から6単位のDNAが欠損しており、そしてこのことが一部の個人の遺伝子活動を低下させているかもしれない。CASP8の活動低下がどのように癌リスクに影響しているのかは明らかではないが、この遺伝子は免疫反応を調節するのに役立ち、そして、この機能の変動は癌や他の病気のリスク変動と関連があった。

Dongxin Lin医師率いるチームは、人体の免疫反応の調整に関係しているいくつかの遺伝子の解析を行った。欠失CASP8(-652 6Nと呼ばれている)と肺癌のリスク低下の関係が明らかになった後、研究者らは5,000人近い癌患者と、ほぼ同数の対照群の人々において欠失についての調査を行った。

結果は、腫瘍への生体反応を調節する遺伝子の活性を修飾することによって、遺伝子変異が癌のリスクに影響している可能性があるという仮説を裏付けるものであると、研究者らは結論づけた。

「この研究は、この遺伝子の一般的な変異が癌にとって重要であることを示しているさらなる根拠となる」と、乳癌とCASP8の研究をおこなったNCIのDivision of Cancer Epidemiology and GeneticsのMontserrat Garcia-Closas医師は語った。「関連性については、異なる人種において個別に確かめることが重要となるであろう。」欠失は、全ての民族において広く一般的なものであると考えられる。

Gracia-Closas医師らは2月にBreast Cancer Association Consortiumで、D302Hと呼ばれるCASP8の別な変異体が乳癌に対してある程度の防御作用があるかもしれないと発表した。これは乳癌と明らかに関連した最初の共通の変異体であった。

ダサチニブは急性転化期の慢性骨髄性白血病に有効

血液あるいは骨髄の細胞の30%が未熟な血液細胞である慢性骨髄性白血病の急性転化期に入った患者は、概して3~6ヶ月しか生存できない。Blood誌4月15日号に掲載された第2相臨床試験の8ヶ月の追跡調査結果によると、白血病細胞に多くのターゲットを持つ新しい低分子阻害剤であるダサチニブ[dasatinib]は、急性転化期の慢性骨髄性白血病患者の血液学的および細胞遺伝学的寛解の持続をもたらすことが可能である。

リンパ性急性転化期(LBC)の患者42人と骨髄性急性転化期(MBC)の患者72人を、2つの全く同じ内容であるが別の臨床試験に登録した。全ての患者は、慢性骨髄性白血病の第一選択治療薬である低分子阻害剤のイマチニブ[imatinib]に抵抗性もしくは耐性を示していた。患者は、ダサチニブ70mgを1日2回服用することから始め、そして4週間後に増量できるようにさせた。投与量の減量もしくは中止は副作用に応じて許された。

患者は,投与量の増量にもかかわらず病状の増悪が認められた場合、耐えられない毒性が発現した場合、あるいは試験から脱落するまで、ダサチニブの投与を受けた。MBC患者では、6ヶ月後の追跡調査で32%に主な血液学的反応が認められ、そして8ヵ月後には34%に上昇した。LBC患者では、6ヵ月後と8ヶ月後のどちらの追跡調査でも31%に主な血液学的寛解が認められた。MBC患者の27%とLBC患者の43%には、完全な細胞遺伝学的寛解がみられた。MBC患者の11%とLBC患者の2%だけが、副作用のためにこの治療を中止した。

「われわれの結果は、イマチニブ抵抗性もしくはイマチニブ耐性を示す骨髄性急性転化期の慢性骨髄性白血病患者あるいはリンパ性急性転化期の慢性骨髄性白血病患者にとって、ダサチニブは非常に重要な新しい治療オプションであり、疑いなく慢性骨髄性白血病の治療概念に影響を及ぼすことを示している」と、著者は結論づけた。

イギリスでの研究による卵巣癌とホルモン補充療法の関係

ホルモン補充療法(HRT)を受けている女性では、卵巣癌を発症および、その疾患による死亡のリスクが増えるとの、大規模なイギリスの試験が報告された。長期間のHRT使用はリスクを増大させるが、HRTを中止した場合はホルモン剤を使用していない女性と同等のリスクレベルに戻る。Million Women Studyの参加者で、約500,000人の女性がHRTを受けていた。

現在HRTを受けた女性は、HRTを受けたことのない女性に比べて卵巣癌による死亡が平均20%ほど多い可能性がある。研究者らは、イギリスでは1991年以降、HRT使用がさらに1,000人の卵巣癌による死亡をもたらし、そして、同様にさらに1,300人が新たに卵巣癌と診断されていると推測している。

これらの研究結果は、HRT使用が子宮内膜癌や乳癌と関連があるとする研究とあわせて考えられるべきであると研究者らは語る。4月19日のThe Lancet誌オンラインに発表された結果によると、この試験参加者における、これら3種類の癌の罹患率は、現在HRTを受けている人は受けたことがない人より63%高かった。

「卵巣癌、子宮内膜癌と乳癌を考えあわせると、HRT使用はこれらの一般的な癌の発症率の重大な増加をもたらす」と、オックスフォードにあるCancer Research UKの疫学研究室のValerie Beral医師らは記している。

HRTの使用はここ最近では激減したが、非常に多くの女性に行われてされていた。「卵巣癌に関するこれらの新しいデータにより、HRTの使用はさらに減少すると予想される」とトロントにあるWomen’s College Research InstituteのSteven Narod医師は付随論説で述べている。

看護講義で癌患者に関する食事指導と運動について語る

バッファロー大学看護学部長代理で教授のJean K Brown医師によると、食事指導や運動は、治療中や治療後の癌に関係する体重変化や栄養不足の治療に役立つ。Brown医師は4月17日のCenter for Cancer Research(癌研究センター)の臨床カンファレンスでの特別癌看護講義で発表した。

Brown医師は、食事相談と栄養状態改善に関連する2つの最近の研究を引用した。彼女はさらに、医学的または健康的に有益性を示す’栄養補助’食品や食物栄養素は、癌に関連する栄養上の問題を減少させ、生存期間を延長することが示されたと述べた。癌患者は、脂肪酸、植物性ポリフェノールや抗酸化物質といった栄養補助食品を含む食生活について考慮すべきであるとBrown医師は述べた。

「栄養の問題に介入するためには、多様なアプローチをする必要があります。」とBrown医師は語った。「食物摂取を改善することだけではありません。」彼女は、栄養カウンセリングにプラスしてインドメタシンやエリスロポエチンを用いることにより、食物摂取、体脂肪、最大運動量を増大し、最終的に生存を延長させることを認めた臨床試験を強調した。

Brown医師は、運動も癌患者の状態を向上させると述べた。治療中や治療後の運動は、心肺機能の健康や生活の質を改善し、機能的能力の低下、倦怠感やうつといった治療関連の症状の減少に相関していた。

「看護師は栄養学的ケアの最前線にいると思っている」と、Brown医師は結論づけた。「私たちは、患者の現在の栄養状態、将来の栄養状態、何が今後の栄養を脅かすか、そして、何が今後期待出来るかを確かめる必要がある。」

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Nogawa 訳
瀬戸山 修(薬学)監修 
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