サリドマイドのFDA承認

原文 2006/05/26掲載 2013/07/03更新

商標名:Thalomid®

・多発性骨髄腫(2006/05/26)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

2006年5月26日、米国食品医薬品局(FDA)は、新たに多発性骨髄腫(MM)と診断された患者の治療におけるデキサメタゾンとサリドマイド(THALOMID®、Celgene社製造)の併用治療に対し、迅速承認を行うことを容認した。

サリドマイドの催奇形性はよく知られているためFDAは、「サリドマイドの安全な処方と教育に関するシステム(S.T.E.P.S®)」のプログラムを通じて米国におけるサリドマイドの販売を規制している。この登録は義務であり、患者に対する服用許可、処方者および薬局の承認そしてサリドマイドの安全性に関する十分な患者教育が含まれている。また、妊娠中の胎児に対するサリドマイド暴露を防止するようにデザインされている。

非盲検多施設共同臨床試験において新たにMMと診断された患者207人に対してサリドマイドの評価を行った。患者はサリドマイド1日200mgおよびデキサメタゾンによる治療(Thal/Dex)を4サイクル、またはデキサメタゾン単独療法(Dex)のいずれかに無作為化割付された。血清あるいは尿中のパラプロテイン量の測定に基づいた奏効率はDex単独療法より併用療法の方が有意に高かった(51.5%対35.6%、p値=0.025)。患者は投与終了後幹細胞移植を受ける事を奨励された。

グレード3または4の有害事象発生率はThal/Dex投与群で84.3%、Dex単独投与群では73.5%であった。サリドマイドに関連する最も一般的な毒性は、傾眠、便秘、神経障害、静脈血栓塞栓症(VTE)、発疹であった。

VTEの発生率はDex単独療法よりThal/Dex投与群の方が有意に高かった(22.5%対4.9%、p値=0.002)。サリドマイド投与に加え予防的な抗血栓療法を行った場合VTEを予防できるかもしれないが、抗血栓療法を行うか否かの判断は患者の潜在する危険因子を注意深く評価した上で下すべきである。

今回の承認は客観的な奏効率に基づくもので迅速承認の規定(Subpart H [サブパートH])に則り下されたものであり、多発性骨髄腫患者におけるサリドマイドの臨床的利点を証明するためさらに臨床試験を行う必要がある。

-----------------
エリザベス 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 )
-----------------

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...
多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果の画像

多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象とした大規模ランダム化臨床試験で、標準治療レジメンにダラツムマブ(販売名:ダラキューロ配合皮下注)を...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少の画像

【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験で脾臓縮小患者数が約2倍に希少な骨髄がんである骨髄線維症の中リスクまたは高リスクの成人患者に対して、JAK阻害剤ルキ...