CarfilzomibのFDA承認

商品名:Kyprolis[カイプロリス]

・ボルテゾミブおよび免疫調整剤による治療中または治療後に増悪を示す多発性骨髄腫に対して承認

本剤の臨床試験情報、安全性、投与法、薬物間相互作用および禁忌などの Full prescribing information(原文)が参照できます。

2012年7月20日、米国食品医薬品局(FDA)は、ボルテゾミブおよび免疫調整剤などを用いた前治療歴が2回以上あり、直近の治療期間中または治療後60日以内に疾患の進行を示した多発性骨髄腫の治療を適応としてカルフィルゾミブ注射剤(カイプロリスKyprolis、オニキス社Onyx Pharmaceuticals)を迅速承認しました。

この承認は、ボルテゾミブおよび免疫調整剤(サリドマイドまたはレナリドミド)などを用いた2回以上の前治療歴がある再発した多発性骨髄患者266人が参加した単群多施設臨床試験の結果に基づいています。カルフィルゾミブは2分超~10分静脈内投与を週に連続2日を3週間続けた後、12日間休止期間をとりました(28日治療サイクル)。治療は疾患の進行が認められるまで、許容程度を超える毒性が認められるまで、または最高12サイクルが完了するまで継続されました。患者は、サイクル1では1回の投与につき20mg/㎡、その後のサイクルでは27mg/㎡の投与を受けました。

カルフィルゾミブ投与が原因となる注入反応の発症数や重症度を減らすため、第1サイクル期間中および投与量を増加させる(27mg/㎡)サイクルの期間中、カルフィルゾミブ投与前にデキサメタゾン(経口投与または静脈内投与で4mg)が投与されました。それ以降のサイクルでは、注入反応が再発した場合にデキサメタゾンが前投薬として復活[MH1] されました。

有効性の主要評価項目は、国際骨髄腫ワーキンググループの基準を用いた、独立審査委員会が評価する全奏効率でした。全奏効率は22.9%(95 percent CI: 18.0, 28.5)で、完全寛解1人、非常に良い部分寛解13人、部分寛解47人でした。奏効期間中央値は7.8カ月(95 percent CI: 18.0, 28.5)でした。

単剤療法としてカルフィルゾミブを投与された難治性多発性骨髄腫患者526人の安全性データが検討されました。患者は、中央値4サイクル、中央値993.4mgの累積投与量のカルフィルゾミブを投与されました。多発性骨髄腫患者の臨床試験で認められた頻度が高かった(30%以上)副作用は倦怠感、貧血、悪心、血小板減少症、呼吸困難、下痢および発熱でした。重篤な副作用は45%の患者に見られました。[MH2] 頻度が高かった重篤な副作用は肺炎、急性腎不全、発熱および鬱血性心不全でした。患者526人のうち37人(7%)は試験期間中に死亡しました。基礎疾患を除く頻度が高かった死因は心臓[MH3] (5 人)、末端器官障害(4 人)、感染(4 人)でした。

迅速承認の条件としてオニキス社はレナリドミド+低用量デキサメタゾンとレナリドミド+低用量デキサメタゾン+カルフィルゾミブを比較した現在進行中のランダム化第3相試験の完全分析を提出することになっています。この試験には治療歴が1~3回の再発または進行性の多発性骨髄腫患者が参加しており、主要評価項目は無増悪生存率です。

カルフィルゾミブはで、2分超10分まで、週に2日連続(3週間[1日、 2日、8日、9日、15日、16日])で静脈内投与をして、12日間休止(17日~28日)します。推奨投与量はサイクル1で20mg/㎡/日で、忍容性を示せば、2サイクル目およびそれ以降は27mg/㎡/日です。

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

翻訳担当者 多和郁恵 

監修 林 正樹 (血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...
多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果の画像

多発性骨髄腫の初期治療へのダラツムマブ上乗せ効果を示す試験結果

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ新たに多発性骨髄腫と診断された患者を対象とした大規模ランダム化臨床試験で、標準治療レジメンにダラツムマブ(販売名:ダラキューロ配合皮下注)を...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少の画像

【米国血液学会(ASH)】 ルキソリチニブ+ナビトクラックス併用で骨髄線維症の脾臓容積が有意に減少

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験で脾臓縮小患者数が約2倍に希少な骨髄がんである骨髄線維症の中リスクまたは高リスクの成人患者に対して、JAK阻害剤ルキ...