サンボゼルチニブ、EGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がんに有効
EGFRエクソン20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)を対象に行われた国際共同第1/2相WU-KONG1B試験で、経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)サンボゼルチニブ(sunvozertinib)が有望な抗腫瘍効果と良好な忍容性を示した。2025年世界肺がん学会で発表され、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。
このタイプの肺がんはEGFR遺伝子変異の約12%を占めるが、従来のTKIに耐性を示すため、これまで治療が難しかった。二次治療で承認された静脈投与のアミバンタマブ以外に有効な薬がなく、経口TKIのモボセルチニブも一時的に承認されたが、第3相試験で有効性を示せず撤退していた。患者にとって経口で投与できる標的治療薬は長らく存在せず、治療薬が求められていた。
この背景のもと、新規経口TKIであるサンボゼルチニブを評価する国際共同第1/2相WU-KONG1B試験が行われた。第2相試験には13カ国89施設から患者が登録され、全員がプラチナ製剤化学療法やアミバンタマブ治療後に病勢進行を認めた。試験は、用量ランダム化群と、非ランダム化群で構成された。用量ランダム化群では、サンボゼルチニブ200mg群(85人)または300mg群(89人)の2群に割り付けられた。のちに第3群として300mgを投与された非ランダム化群も解析対象とされた。主要評価項目は独立審査による客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として全生存率(OS)や安全性も検討された。
結果は有望で、ORRは用量ランダム化両群で46〜47%と高く、非ランダム化群でも同様の値を示した。中央値約17カ月の追跡期間で、OSは200mg群62.1%、300mg群73.7%、非ランダム化群69.4%と良好であった。有害事象は下痢や貧血、クレアチンホスホキナーゼ上昇などが多かったが、200mg群では発生率が低く忍容性は概ね良好であった。モボセルチニブに比べ副作用の忍容性が高い可能性も示され、患者が長期間治療を継続できる利点が期待された。
これらの成績を受け、サンボゼルチニブは2025年7月に米国FDAの迅速承認を獲得した。主著者のPasi A. Jänne医学博士(ダナファーバーがん研究所、FASCO)は「経口薬は自宅で服用でき、通院の負担を軽減し、利便性が高いです」と述べている。今後は第3相WU-KONG28試験(320人、サンボゼルチニブ300mgと化学療法の比較)の結果次第で完全承認が判断される予定である。さらに、zipalertinibやfurmonertinibなど他のTKIも開発が進んでおり、エクソン20挿入変異を有する患者の治療選択肢拡大が期待される。Jänne博士は「耐性克服や併用療法などの可能性を含め、新しい治療の探索は続いており、サンボゼルチニブが最後の薬ではありません」と強調した。
- 監修 高濱隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)
- 記事担当者 平沢沙枝
- 原文掲載日 2025/08
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