進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬tibremciclibの可能性

進行乳がんに対するCDK4/6阻害薬tibremciclibの可能性

新たなCDK4/6阻害薬tibremciclib(Betta Pharmaceuticals社)とフルベストラントの併用は、ホルモン受容体陽性/HER2陰性の進行乳がん患者において、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが第3相TIFFANY試験で示された。フルベストラント単独と比較して中央値で約11カ月長く、進行リスクを63%低下させた(HR=0.37、p<.001)。一方で、下痢や血液学的毒性、低カリウム血症などの副作用が高頻度で発生し、特にグレード3以上の有害事象はtibremciclib群で50.5%と高かった。しかし研究者らは「対処可能であり、多くの患者が治療を継続できた」と述べ、副作用による中止はtibremciclib群で4人にとどまった。

TIFFANY試験には中国の69施設から274人が登録され、tibremciclib(400mg/日)+フルベストラント群またはプラセボ+フルベストラント群に2対1で割り付けた。追跡期間中央値は13カ月で、tibremciclib群のPFSは16.5カ月、対照群は5.6カ月であった。下痢(79.3% vs 13.3%)、好中球減少(75.5% vs 15.6%)、白血球減少(73.9% vs 16.7%)、貧血(69% vs 21.1%)が多くみられたが、ほとんどはグレード1~2であった。グレード3以上の有害事象で最も多かったのは好中球減少(15.2% vs 5.6%)、貧血(12.0% vs 4.4%)、低カリウム血症(12% vs 0%)であった。低カリウム血症は下痢に伴って生じ、補正で管理可能とされた。さらに3分の1の患者で高中性脂肪血症が発生したが、アトルバスタチンなどで対応された。用量中断(54% vs 23%)や減量(18.5% vs 4.4%)は多かったが、治療継続は可能であった。

研究著者であるXichun Hu医師(復旦大学上海がんセンター)は「tibremciclibは他のCDK4/6阻害薬と比べ、用量調整や中止の頻度で有利に見える」と述べたが、臨床試験間比較である点に注意を促した。Kathy Miller医師(インディアナ大学)も「毒性はリボシクリブやパルボシクリブに類似し、主に骨髄抑制が中心です」と指摘した。

TIFFANY試験の結果、tibremciclibとフルベストラントの併用は中国で承認されたが、米国ではまだ承認されていない。他の薬剤との比較では、PALOMA-3(パルボシクリブ)で中央値9.5カ月、MONARCH(アベマシクリブ)で11.5カ月、DAWNA-1(ダルピシクリブ)で16.6カ月のPFS延長が報告されている。TIFFANYの延長幅はこれらと同等かそれ以上であったが、対象は中国人かつCDK4/6阻害薬未使用例に限られており、北米や欧州での一般化には課題がある。Miller氏も「標準治療と直接比較していないため、臨床での最適な位置づけはまだ明らかではありません」と述べた。

本試験はBetta Pharmaceuticals、中国国家自然科学基金、上海市優秀学術リーダープログラム、上海抗がん協会SOARプロジェクトの資金提供を受けて実施された。Hu氏はアストラゼネカ、ロシュ、恒瑞医薬からのアドバイザリー料を受領し、Miller氏はMerck、Roche、CelcuityのIDMCに関わった経歴を持つ。

  • 監修 下村昭彦(腫瘍内科/国立国際医療センター乳腺・腫瘍内科)
  • 記事担当者 平沢沙枝
  • 原文掲載日 2025/08

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