禁煙は頭頸部癌のリスク低下をもたらす

キャンサーコンサルタンツ
2009年10月

International Head and Neck Cancer Epidemiology Consortium(国際頭頸部癌疫学コンソーシアム)の研究者らは、1~4年間の禁煙で頭頸部癌のリスクが30%低下することを発表した。ただし、禁酒については20年以上経過しなければ、その効果は認められなかった。この研究の詳細は、International Journal of Epidemiology誌[1]のオンライン早版2009年10月5日号で発表された。

頭頸部癌の全症例のうち、喫煙と飲酒をあわせて行うケースが約75%を占めると考えられている。喫煙と飲酒は同時に行われることが多いため、それぞれの影響(飲酒なしで喫煙のみ、またはその逆)を個別に評価することは難しい。国際研究では、喫煙のみ、あるいは飲酒のみでも、頭頚部癌の発症リスクが増加すると結論づけた。本研究では、これまで発表された、10,000人を超える頭頚部癌患者を含む15件の研究結果から得た情報を合わせて頭頚部癌リスクにおけるタバコとアルコールの影響をそれぞれ評価した。非飲酒者において発症する頭頚部癌のうち、喫煙する人は約24%と推定された。喫煙歴なし群のなかでも、大量のアルコール摂取群は特定の種類の頭頚部癌におけるリスク増加に関連していた。1日3回以上アルコールを摂取する人ではリスクの増加が見られた。頭頚部癌を発症した非喫煙者のうち約7%が大量のアルコールを摂取していたと推定される。

本研究は、禁酒に関する13件の研究と禁煙に関する17件の研究に登録されている患者を対象としている。著者らは、禁煙が1~4年におよぶ人は、現在喫煙している人と比較して、頭頚部癌の発症リスクが30%低下することを認めた。20年以上喫煙していない人においてはリスク低下が非喫煙者のレベルに達した。ただし、頭頚部癌の罹患率は、禁酒後20年が経過しても非飲酒者のレベルには達しなかった。

コメント: これらのデータは、禁酒より禁煙の方が頭頚部癌の罹患率には即効性があることを示唆している。ただし、禁酒と禁煙を同時に行えば、いずれはリスクが大きく低下するであろう。

参考文献:
[1] Marron M, Zaridze D, Wei Q, et al. Cessation of alcohol drinking, tobacco smoking and the reversal of head and neck cancer risk. International Journal of Epidemiology [early online publication]. October 5, 2009.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 森島 由希

監修 張 知子(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

頭頸部がんに関連する記事

FDAが上咽頭がんにトリパリマブを承認の画像

FDAが上咽頭がんにトリパリマブを承認

米国食品医薬品局(FDA)2023年10月27日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移性または再発性の局所進行上咽頭癌(NPC)の成人患者に対する一次治療として、シスプラチンおよびゲムシ...
ヨガは放射線治療中の頭頸部がんの治療関連合併症を予防の画像

ヨガは放射線治療中の頭頸部がんの治療関連合併症を予防

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解から引用「本結果により、対面またはオンラインで行うヨガ集中介入は、放射線療法中のがん患者だけでなく介護者にも効果があることが認められま...
頭頸部がんに多い治療副作用と口腔マイクロバイオームの関連を発見の画像

頭頸部がんに多い治療副作用と口腔マイクロバイオームの関連を発見

MDアンダーソンがんセンター口腔粘膜炎(口内のただれの発症)は、頭頸部がんによく見られる副作用であり、90%もの患者が罹患する。口腔粘膜炎は、経口摂取困難、体重減少、疼痛や感染症管理の...
成人のHPV関連がん増加を専門家が警告の画像

成人のHPV関連がん増加を専門家が警告

オハイオ州立大学総合がんセンターヒトパピローマウイルス(HPV)関連咽頭・口腔がん発生率の急速な上昇が懸念されている。この傾向が続けば、HPV関連咽頭・口腔がんは近いうちに45~65歳...